最近は新しいミュージカルが沢山生まれていますが、新作ミュージカルの誕生に深く関わる「トライアウト公演」をご存知ですか?ミュージカル作品の発表においてよく耳にする「トライアウト公演」。一体どんな公演なのでしょう?海外ではよく上演されているようですが、実は日本でも今年の夏に注目作のトライアウト公演が始まります。
トライアウト公演とは、どんな公演のこと?
「トライアウト公演(tryout)」とは実技試験や試験興行を意味する言葉。演劇・ミュージカル作品においては、新作を上演する前に観客の反応を見て作品の手直しをおこなうための試験公演のことです。試験公演といっても、本番さながらの規模で上演し、観客もチケットを買わなくては鑑賞できない立派な公演です。
しかしあくまで作品の制作途中に行われる公演なので、後の本公演では演習や振り付けが大幅に変更されることもよくあります。トライアウト公演での観客の反応をふまえて作品をブラッシュアップしていく過程は、制作スタッフ、俳優、そして観客が一眼となって新たな作品を作るのだと言っても過言ではありません。
海外におけるトライアウト公演の立ち位置
日本の主要な劇団が上演するミュージカルは、アメリカのブロードウェイかイギリスのウエストエンドから輸入されることがほとんどです。海外の演劇作品制作では地方でトライアウト公演をするのが一般的で、名作ミュージカルを世界中に発信するブロードウェイでも重要な工程のひとつ。
ブロードウェイ作品の制作費は製作者が支払うのではなく、作品への出資者から事前に費用を集め、成功した公演の利益で出資者に還元していく流れになっています。ブロードウェイの劇場での公演には莫大な費用がかかり、真新しい作品をいきなりやるにはリスクが高い。そこで、本公演を迎える前にトライアウト公演を実施して作品を十分に仕上げてからブロードウェイに持ちこむのです。
アメリカではブロードウェイの新作ミュージカル『プラダを着た悪魔』が、2022年7月19日から8月21日までトライアウト公演を実施。大人気映画のミュージカル化であり、音楽は『ライオン・キング』、『アイーダ』のエルトン・ジョンが担当することもあって、トライアウト公演の段階から多くの注目を集めているようです。
『シュレック・ザ・ミュージカル』が日本でトライアウト公演を開催!
最近は日本でもトライアウト公演を行う劇団や作品が増えてきていますが、2022年8月には映画『シュレック』を題材にした『シュレック・ザ・ミュージカル』がトライアウト公演を開催します!
日本初上陸の新作ミュージカルであり、全キャストがオーディションで選ばれた本作は、トライアウト公演とはいえ早くも話題になっている模様。この公演の反響次第では、本公演として大きな劇場での本格的なロングランも行われるかもしれませんね!
『シュレック・ザ・ミュージカル』のトライアウト公演は、2022年8月15日から28日まで東京・池袋の東京建物Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)で開催予定です。
新作ミュージカルの本公演の前に行うトライアウト公演は、新しい作品が生まれる過程において重要なプロセスの一つ。本番さながらの公演を行い、観客を動員することで、作品の可能性や修正点を現実的に分析できるのです。演劇・ミュージカルファンの立場からすれば、完成前のミュージカルを観られて制作陣と一緒に作品を作るありがたい機会とも言えますね。