涙なくして観られないという評判の感動作『コーダ あいのうた』。感動だけでなく、笑いを誘うユーモラスも魅力のひとつです。アカデミー賞作品賞をはじめ、サンダンス映画祭では史上最高評価を獲得し、数々の映画賞を受賞しました。そこで今回は、愛され映画『コーダ あいのうた』(2021)の魅力を紐解いていきます。
“耳が聞こえる”少女の葛藤
自然豊かな海のまちに住む、主人公の少女ルビー。耳の聞こえない両親と兄と一緒に暮らしています。耳が聞こえるルビーは幼いときから、家業である漁業の手伝いや家族の通訳をしていました。そんなある日、密かに想いを抱いていたクラスメイトのマイルズが合唱クラブに入ったことがきっかけで、ルビーも入団することに。
合唱クラブで、ルビーは美しい歌声を披露し才能を発揮します。顧問の先生は、ルビーの才能を信じ、名門音楽大学への進学をすすめました。しかし、家族はルビーの歌声を聴けないこともあり反対。さらに金銭的にも、窮地にたたされてしまいます。
幼いときから自分を犠牲にして家族の「耳」役をしてきたルビー。諦めたくない夢と、大切な家族の間で、揺れ動き葛藤します。夢と家族の愛、聞こえる少女と聞こえない家族、ルビーの歌声がすべてを包む感動作です。
とにかく泣けて、とにかく笑える
アカデミー賞受賞作ということもあり、観たことがあるという方も多いのではないでしょうか。映画を進んで観るというタイプではない人からも『コーダ あいのうた』をおすすめされたほどです。
そんな私はというと、感動作と謳われる映画作品には、興味を持てないタイプでした。あらすじを読んでみると、この設定は確かに泣けるよねと「泣ける映画」として片付けてしまったところがあります。しかし映画好きとして、アカデミー賞のしかも作品賞を受賞した作品は観ないわけにはいきません。とうとう観る日がやってきました…。
すると泣けます。とにかく泣けます。そして、驚いたのが、泣けるだけではなく、とにかく笑える。レビューもプロモーションとしても泣けるという印象が強かったので、そのユーモラスにはびっくり。(下ネタが含まれるので家族で鑑賞する場合は要注意)
個人的には、そのユーモラスが本作でのいちばんの見どころになりました。
コーダの意味
ユーモラスな一面を推した筆者ですが、もちろん全体的なストーリーは、愛に包まれた感動作です。
タイトルにある「コーダ(CODA)」とは、Children of Deaf Adultsを略した言葉で、聴覚障がいがある親を持つ聴こえる子どもという意味。両親役と兄役は、実際に耳の聞こえない俳優が演じています。
偽りのないピュアな演技も、本作が愛され映画となった、魅力のひとつなのではないかと思いました。
コーダに含まれたもうひとつの意味
「コーダ(CODA)」には、もうひとつの意味があります。それは、曲の終わりを指す意味として使われる音楽用語です。
2つの意味あいがまじわったタイトルも、大きなポイント。音楽が主軸にある本作では、主人公の美しい歌声とともにさまざまな曲も楽しむことができるでしょう。
素晴らしい曲が多く、公式にYouTubeに上がっているものもありますが、その感動はまず映画を観るなかで味わってほしいので、ここでは紹介を控えておきます。
素敵な感動ストーリーはもちろんのこと、たくさん泣いてたくさん笑える、心も浄化できるおすすめの作品です。まだ、観たことがないという方、ぜひチェックしてみてください。
本作を鑑賞後、愛され映画と言われる意味が、分かりました。私みたいに涙を誘うことを謳っている映画が苦手だという人にも、本当におすすめできる作品です。観終わったあと、晴れ晴れとした気持ちになります。 本作は、2014年の『エール!』というフランス映画のリメイク作。『コーダ あいのうた』をすでに観たという方は、そちらもチェックしてみてはいかがでしょうか。