数あるシェイクスピア作品の中でも、多くの舞台で上演されている「ロミオとジュリエット」。時には、場面設定を変えて潤色されたり、その後の物語として二次創作的な脚本が書かれたりするなど、さまざまな切り口で若き恋人たちが描かれてきました。そんな名作を新時代の切り口で魅せる『ロミオ&ジュリエット』が、1月28日(土)より、東京・渋谷のBunkamura シアターコクーンにて上演されます。

北乃きい×長谷川慎(THE RAMPAGE)が挑む名作を、新進気鋭の演出家アレクサンドラ・ラターが演出

名作、と呼ばれる作品の上演は、筋書きは同じでも、演出家や俳優の組み合わせによって色合いが変わるのが何より楽しみなポイントです。この『ロミオ&ジュリエット』上演に集まったキャスト・スタッフは、はたして、どのようなケミストリーを生み出してくれるのでしょうか。

今回、ロミオ役に挑むのは、ダンス&ボーカルグループ THE RAMPAGEのパフォーマーとして活躍中の長谷川慎さん。グループ活動では高い身体能力に裏打ちされた魅力的なダンスパフォーマンスを披露しており、近年は俳優としても活躍の場を広げています。

ジュリエット役は、これまでもドラマや舞台でさまざまな役を演じてきた北乃きいさん。清らかな少女から、鬱屈とした女性まで、演技の幅広さが印象的です。近年の出演作には、2019年から2020年にかけてIHIステージアラウンド東京で上演され、「ロミオとジュリエット」を潤色した有名ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』があり、原作のジュリエット役にあたるマリアを演じていました。

演出は、アレクサンドラ・ラターさん。シェイクスピアの生まれた国、英国出身で、舞台上演を通した日英交流に尽力しています。宮崎駿さんの作品を初めて舞台化した『もののけ姫』(2013年)では構成・演出を務め、ロンドンと東京の観客から高い評価を得ました。

今作の演出では、芝居とダンスを融合させ、現代らしい芸術性の豊かさやムーブメントを取り入れているそう。純真で向こう見ずな恋人たちの悲劇、衝動的に感情をあらわす若者の生命力など、これまでも多くの演出家が打ち出してきた作品の魅力を、現代的、幻想的に繰り広げる新時代の「ロミオとジュリエット」の誕生です。

あらすじやキャストから読み取れる『ロミオ&ジュリエット』の見どころ

今作の独自性はそのあらすじにも垣間見ることができます。季節は、夏。舞台は「今」と「昔」が入り乱れる暗黒の街・ヴェローナ。ロミオは魅惑的な肉体と繊細な心を持ち、 ジュリエットは才能豊かでシンガーソングライターを目指している、というキャラクター設定は現代的な人物造形が感じられます。

ロミオは一代で財を成したモンタギュー家の息子。ジュリエットは伝統を重んじる上流階級、キャピュレット家の一人娘。二人はキャピュレット家が所有する『CLUB VERONA』で運命的に出会い、 恋に落ちます。しかし、両家は街の権力をめぐって激しい対立を続けていて、その根深い確執がロミオとジュリエットの甘い恋を悲劇へ導いていくことになります。

原作ではどちらも由緒ある家系ですが、今作では新興のお金持ちと伝統的な上流階級という描き方に。そして、出会いの場は原作の仮面舞踏会からクラブへと移り、「今」と「昔」が入り乱れるヴェローナの街、という不思議な空間設定にうまく紐づいています。

こうした独自の物語設定に加えて、今作では様々なバックボーンを持つ出演者たちが放つエネルギーの強さや斬新さも見どころのひとつではないでしょうか。ロミオとジュリエットを取り巻く登場人物を演じるキャスト陣は、幅広いフィールドで活躍する俳優が揃い、特に若者たちの役には、ストレートプレイから 2.5 次元、映像などの分野で気鋭の若手として注目を集めるキャストたちが名を連ねています。

ジュリエットのいとこ・ティボルト役にはD-BOYSの中尾暢樹さん、ジュリエットに婚約するパリス役に小松準弥さん。ロミオの友人たちは、ベンヴォーリオ役を石川凌雅さん、 マキューシオ役を京典和玖さんが演じます。公開されたビジュアルでも、彼らの物憂げな表情やシャープな目線が、舞台姿への期待を高めます。

『ロミオ&ジュリエット』は2023年1月28日(土)から2月12日(日)まで、東京・渋谷のBunkamuraシアターコクーンにて上演されます。チケットのご購入や作品情報はこちらをご確認ください。

Sasha

シェイクスピア作品の上演では翻訳もひとつの注目ポイント。今回はさいたま芸術劇場・彩の国シェイクスピア・シリーズの上演台本の翻訳を担当されてきた松岡和子さん版の翻訳です。演出家・蜷川幸雄さんの意思に沿い、全てのシェイクスピア作品を上演するべく翻訳に取り組んだ松岡さん。「ロミオとジュリエット」はその第1弾の作品でもありました。若者のあやうさとみずみずしさが大人の勢力抗争によって悲劇をたどる名作の新たな一面が見られることを楽しみにしています。