今年開場50周年を迎える東京・渋谷のPARCO劇場。変わり続ける文化発信の中心地で、さまざまな演劇作品を上演してきました。開場50周年記念シリーズの一環として、この2月に上演されるのは、三谷幸喜さん作の『笑の大学』。伝説の傑作喜劇が日本で25年ぶりに上演されます。
海外でも大絶賛!三谷幸喜の傑作喜劇が25年ぶりに再演!
『笑の大学』の初演は1996年、今回と同じパルコのプロデュースで青山円形劇場にて上演された作品です。脚本は三谷幸喜さん、演出は山田和也さんが手掛け、第4回読売演劇大賞で「最優秀作品賞」を受賞するなど、高い評価を得ました。
舞台は昭和15年、言論統制真っ只中の日本で、喜劇作家が上演許可を得るために取調室に持ち込んだひとつの台本。そこに書かれた台詞のひとつひとつをめぐって、笑いに理解のない警視庁検閲係・向坂睦男(さきさかむつお)と、劇団「笑の大学」座付作家・椿一(つばきはじめ)とが7日間の攻防戦を繰り広げます。
初めは衝突するものの、次第に立場を越えて良い台本に仕上げようと協力し、不思議な信頼関係を築いていく検閲係と劇作家。「戦争」の世の中で演劇という「娯楽」がもたらした友情。三谷幸喜さんらしいウィットとシニカルさが光る作品です。
シンプルでいて技巧的な脚本はこれまでにロシア語、韓国語、中国語、フランス語等に翻訳され、海外でも傑作喜劇として上演されてきました。三谷作品の中でも特に人気が高いにも関わらず、 日本での最後の公演は1998年。今回と同じ、PARCO劇場での公演でした。四半世紀を経て、ついに伝説の作品が戻ってきます。
『笑の大学』が三谷演出×内野聖陽×瀬戸康史でよみがえる!
最近では、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の脚本で武家社会の無情な人間模様を炙り出し、日曜夜のお茶の間を賑わせた三谷幸喜さん。作・演出を務めたシス・カンパニーの舞台『ショウ・マスト・ゴー・オン』では、休演者の代役としても大活躍でした。
衰えぬ勢いで活躍を続ける三谷さんにとって『笑の大学』は愛着のある特別な作品とのこと。検閲係・向坂から繰り広げられる無理難題に応えながら、粘り強く笑いにこだわり続ける劇作家・椿の姿勢に、仕事人として深い思い入れがあるのだそうです。
作者自身の思い入れの強いこの作品の再演キャストに選ばれたのは、内野聖陽さんと瀬戸康史さん。舞台・映像の両方で三谷作品の出演経験があるおふたりです。
内野聖陽さんは『おのれナポレオン』(2013年)や『真田丸』(2016年)の徳川家康役で三谷作品に出演。三谷さんに「内野さんの『向坂』が見たいと思った時から、今回のプロジェクトは始まった」と言わしめた存在感で検閲係・向坂睦男を演じます。
瀬戸康史さんはシス・カンパニー公演 『23階の笑い』(2020年)や記憶に新しい『鎌倉殿の13人』(2022年)の「トキューサ」こと北条時房役で三谷作品に出演。心を抉るような大河ドラマで愛嬌のある人物を演じた瀬戸さんは、三谷さんが今最も頼りにしている俳優の一人です。
作品ホームページで公開されたコメント動画の中で、三谷さんは「この人たちだったら『笑の大学』をやってみたいと思うふたりにようやく出会えた」と話し、俳優陣への期待を印象づけました。作家お墨付きのふたりが起こす化学反応で、名作がよみがえります。
【公演スケジュール】全国8都市で上演!
25年ぶりとなる日本での上演に期待が高まる『笑の大学』は、東京・渋谷のPARCO劇場にて、2月8日(水)に初日を迎えます。
その後は全国を巡演。各地の公演スケジュールは以下のとおりです。
東京公演 2月8日(水)から3月5 日(日)まで @PARCO劇場
新潟公演 3月11 日(土)から3月12日(日)まで @りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館劇場
長野公演 3月18日(土)から3月19日(日) @まつもと市民芸術館 主ホール
大阪公演 3月23日(木)から3月26日(日) @サンケイホールブリーゼ
福岡公演 3月30日(木)から4月2日(日) @キャナルシティ劇場
宮城公演 4月6日(木)から4月9日(日) @仙台電力ホール
兵庫公演 4月13日(木)から4月16日(日) @兵庫県立芸術文化センター阪急 中ホール
沖縄公演 4月20日(木)4月21日(金) @那覇文化芸術劇場なはーと 大劇場
名作にしてなかなか再演の機会がない本作ですので、お近くでの公演をどうぞお見逃しなく!公演スケジュールやチケット情報について、詳しくは公式ホームページをご覧ください。
筆者が『笑の大学』と出会ったのは大学の演劇学の授業でした。殺風景な部屋で、検閲官と劇作家が「台本」を通してあーだこーだと議論を交わす様子に、ストレートプレイの面白さを感じたことを今でも覚えています。