3 月 22 日(水)から 5 月 6 日(土)まで東急シアターオーブで上演されるミュージカル『マチルダ』。英国ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー製作により2010年に上演が始まると、瞬く間に大ヒット。今までに全世界で 1,100 万人以上を動員し、100もの国際的な演劇賞に輝いた人気作品が、ついに日本初上陸を果たします。本作でミス・トランチブル校長役を務める小野田龍之介さんと、ミス・ハニー役を務める昆夏美さんに、本作の魅力を伺いました。作品についての記事はこちら。
『マチルダ』は、カーテンコールまでエンタメ性の高い作品!
−お二人は韓国版『マチルダ』を観劇しに行かれていましたが、実際に見ていかがでしたか?
昆「お話の内容は翻訳台本を読んで知った上で観劇したのですが、見終わった後にこれをやれるんだと嬉しくなりました。ブランコがブワーっと客席に来たり、カーテンコールまで凝っていたり、全てのシーンが本当に楽しんです。エンターテイメント性が強い作品だなと。日本でこの作品に携われることが非常に楽しみになりました」
小野田「以前ロンドンでも観劇したことがあった作品なのですが、言葉遣いが難しくて、あまりキャッチしきれない情報もあったんです。でも日本の台本を読んで改めて観てみると、色々なピースがハマって楽しくて、日本のお客様にも凄く楽しんでいただけるだろうと感じました。
あと韓国では客席に子供が多くて、もう大騒ぎ。本当に一緒に作品の中にいるような感覚で、客席にいる子供もいち生徒のようだったんです。大人もそれに乗っかって楽しんでいるような、面白い世界観でしたね。また感情の起伏やキャラクターの強さ、音楽の強さが凄く韓国にマッチしている作品だなとも感じました。日本ではまた違う部分のマッチがあるでしょうし、言語の雰囲気も異なるので、難しいトライではあるけれども違う楽しみ方を作っていけるんじゃないかなと思います」
−日本初演を創り上げている最中だと思いますが、稽古はいかがですか?
小野田「僕はいちミュージカルファンとしてずっと日本で『マチルダ』やらないのかなと思っていたんです。その当時は自分が出るなんて想像もしていないですよ。だって、出られそうな役なかったし(笑)。あまりにも登場人物たちがスペクタクルすぎて、この作品に出るということはピンとこなかったので。出演が決まった時も、全く想像がつかなかったんです。景色だけは凄く覚えているけれど、自分が演じている想像がつかなかった。
だからこそ、変に身構えずに、日本語版としてはある種自由に作っていけるのは楽しいですね。しかも(大貫勇輔さん・木村達成さんとの)トリプルキャストなので、僕だけのアイデアだけじゃなく、みんなで話し合いながら作っていける。色々なアイデアを話し合えるメンバーなので、心強く初演の稽古を過ごせています。昆さんもいますし」
昆「ありがとうございます、入れていただいて」
小野田「今回は(昨年共演した『ミス・サイゴン』と違って)好きにならないように気をつけないと。あ、役でですよ!普段ではずっと好きですけど」
昆「はーい、ありがとうございまーす」
小野田「はーい、お返ししまーす(笑)」
昆「もう何の話か忘れちゃった」
小野田「初演で稽古どうですか?小野田さんは素敵ですかって」
昆「はい、素敵です(笑)。私は韓国版を観るまで作品を観たことがなかったのですが、ロンドンで観劇した友達たちが一番面白かったと絶賛していた印象が凄くあったんです。それで作品について調べてみたり、YouTubeの映像を見て見たりして、私も自分が出られる役ないなと思っていたんですよね。自分が将来携わらせていただく未来は想像がつかなくて」
小野田「そうなんだ。私はマチルダだと思わなかったの?」
昆「周りは言ったけど(笑)。私がマチルダをやることはあり得ないから、ミス・ハニー役のお話を頂いてびっくりしました。オーディション曲を聴いてなんて素晴らしい楽曲なんだと感動して、『マチルダ』のCDを買って全曲聴いたら色々な種類に富んだ楽曲たちで、まず楽曲に惚れてしまって。絶対やらせていただけるように頑張りたいなと思ってオーディションに臨みました。
いざ、こうやって日本初演に携わらせていただいて、ダブルキャストの咲妃みゆさんと2人で作っている感じがしています。自分ができないと感じている部分を曝け出しあえるゆうみ(咲妃さんの愛称)と1つの役を作っていける稽古に非常に有意義と充実感を感じています」
演じていてもトラウマになる、ミス・トランチブル校長
−お二人が演じる役柄についても聞いていきたいのですが、まずミス・トランチブル校長はどんな人物でしょうか?
小野田「怖いですよ」
昆「自分でやっていても?」
小野田「子供の時にあんな人に会ったら、トラウマになる人ですよね。ずっとモスキート音が聞こえているような嫌な感じ。それがきっと彼女の狙いなんでしょうけど」
昆「1番子供な大人、幼稚なイメージだよね。あとはなぜそうなってしまったのか、彼女を理不尽な性格にさせてしまった背景は何なんだろうというのも興味深くて。理不尽すぎて逆に興味湧くというか」
小野田「理不尽すぎて興味湧くって凄いね。変な男に引っかからないでね(笑)」
昆「でも興味ある。なんでこの人はこんな風なんだろうっていう存在であり、そういう描かれ方を各シーンでされているので、異質感がある役ですよね」
「大人になればなるほど、行動するって難しい」
−ミス・ハニーはどうでしょうか?
小野田「演出補のジョーにも最初に言われたのですが、この作品はマチルダから見た大人の姿が描かれているんです。原作の挿絵も凄く誇張されて描かれていて、その劇画的なものを表現してほしいと言われているので、だからこそトランチブルや両親(ミセス・ワームウッド、ミスター・ワームウッド)は極端なキャラクターになっている。
その中でハニーは“普通の人”で、マチルダも“この人は何を考えているんだろう?”と思う存在。特に出会った時は生命力がないような時だと思うので、拠り所となるマチルダに出会えてよかったなと思いますね。ただトランチブルは彼女の全てを奪った人なので、ハニーの存在を拾いすぎてしまわないように、気をつけています」
昆「ハニーはまさにトランチブルがトラウマで、自分というスペースから出られていない大人ですね。自分で自分の可能性を止めちゃっていることすら気づいていないというか。
よくジョーに言われるのが、自己憐憫な女性じゃない、自分のことを可哀想だと思っていなくて、昔より今の方が幸せで満足なんだということ。トランチブルに全てを奪われた過去より、家もあって、教師という仕事もある今に充実感を覚えているんだけど、マチルダから見たら、“なんでそんなに自分の殻から出られないの?思っていることがあるのに”と一瞬で見抜かれてしまう。ハニーはマチルダの才能を開花させてあげたくて奮闘するけれど、マチルダはもっと上の次元にいて、マチルダに成長させてもらえる大人ですね。とても共感するキャラクターです」
−「人生が不公平なら我慢より行動しなきゃ」というマチルダの姿勢は、どうにもならない現実に諦めがちな大人にも刺さりますよね。
昆「大人になればなるほど、行動するって難しい」
小野田「難しいよね。人生が不公平ならもうそれなりにどうぞってなっちゃう」
昆「なっちゃうなっちゃう。この作品ではマチルダという引っ張ってくれる存在がいますけど、自分たちの人生でもフックになる存在、これがあるから今の自分から抜け出せそうと思えるものを見つけられたら良いし、お客様も自分の人生では何だろうと考えるきっかけになったら良いなと思います」
小野田「『マチルダ』は言葉1つ1つで寄り添ってきてくれる作品。ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーらしい、言葉の遊び方、寄り添い方がとても魅力的な作品です。そこにティム・ミンチンのロックな音楽が織り混ざっているからこそ、興奮も味わえる。その高低差で胸を掴まれる作品なんじゃないかなと。日本でもずっと上演し続けて、歳を取ってから初演メンバーであることを誇りに思える作品にしていきたいですね。30年後くらいにフェルプス役で戻ってきます(笑)」
小野田龍之介さん、昆夏美さんが出演するミュージカル『マチルダ』は3 月 22 日(水)から 5 月 6 日(土)まで東急シアターオーブで上演予定。5月28日(日)から6月4日(日)までは大阪・梅田芸術劇場メインホールにて上演されます。チケットの詳細は公式HPでご確認ください。
映像版『マチルダ・ザ・ミュージカル』では圧巻のダンスやマチルダとハニーの交流に惹きつけられましたが、舞台ではさらに迫力の演出が多数あるようです。待望の日本初演を、お見逃しなく。