芸術団体一茶企画による第5回公演『LISTEN TO MY LIFE』が、今月中野ザ・ポケットにて上演されます。ミュージカルなのに、言葉がない。この斬新なコンセプトも含めて、作品を紹介していきたいと思います。
ノンバーバルな表現による、オリジナルミュージカル。
元劇団四季の高橋伊玖磨さんと近藤真行さんがスタートした一茶企画は、「日本に芸術街を!」をモットーに2020年11月から活動しています。去年は、『えんとつ町のプペル』の演出などを担当したことでも話題になりました。
そんな一茶企画による今作のキーワードは、”non-verbal(非言語的な、言葉によらない)”です。
一般的なミュージカルは、音楽や台詞およびダンスなどを結合させた演劇形式。皆さんの知っているミュージカルも、言葉ありきのものが多いと思います。そこにノンバーバルをかけ合わせる、つまり言葉という要素をなくすのです。そうすることによって、ミュージカルの持つエンターテインメントの幅を大きく広げようとするのが、今回の醍醐味となっています。
恋愛をテーマにした、4つの短編。
今回は、一茶企画内外で選ばれたクリエイターたちによるオリジナルミュージカル。恋愛を軸に描かれた4つの短編から構成されています。
1つ目の『ボレロはジャズで』に登場するのは、物書きの男と、部屋で黄昏れる女。愛も冷め切った二人の間に、”言葉”はありません。何が彼らをそうさせたのか。繰り返されるボレロの音楽に乗せ、共に過ごした10代、20代の思い出が回想されます。そして”言葉”のない彼らの人生は、その愛の軌跡を語るのです。
2つ目は『ロミオとジュールズ』。歌うことを愛し、仲間たちと四六時中歌っている若者ロミオ。一方で、仲間たちと踊りで心を伝え合っている青年ジュールズは、ロミオの歌声に魅了されます。互いのチームは敵対していましたが、決して出会わなかったはずの二人が、奇跡のハーモニーを響かせます。
3つ目は『恋する死人に口なし』。遠方での就職が決まった彼に対して、思っているのに「行かないで」と言えない彼女の物語です。帰り道、彼女は交通事故で命を落としてしまい、あの世の入り口へ辿り着きます。思ったことを口に出さないというルールのあの世で、想いを口にしたい彼女は…。
4つ目『Her Driver』の舞台は、近未来です。雨が降る街角で、一組の男女が拾ったタクシーの運転手はAIロボットでした。見た目はほとんど人間だけれど、唯一違うのは言葉を発さないこと。男はAI運転手を拒絶し降車し、残された女とAI運転手だけのめくるめくドライブがはじまるのです。
A組とB組によるキャストの違いも味わって。
本作品は、A組キャストとB組キャストに分かれています。短編の 1〜3つ目は、ABともに同じ俳優が演じる役もあるため、俳優同士の化学反応の違いが出ると思われます。また4つ目は、Aと Bで全ての俳優が入れ替わるので、作品として受ける印象ががらりと変わるかもしれません。
この作品は、東京の中野ザ・ポケットにて上演。2023年3月15日(水)にトライアウト公演、2023年3月24日(金)~26日(日)に本公演が行われる予定です。15日のトライアウトは2回あり、いずれも配信チケットを販売しています。詳しくは公式サイトをご覧下さい。
言葉のないミュージカルというものを初めて耳にして、とても興味を惹かれています。言葉以外で表現するとしたら、やっぱりダンス?音楽といっても歌詞がないだろうし…演出はどうなるんだろう?想像は止まりませんが、その真相はぜひ皆様の目で確かめてみて下さい。