2023年3月26日の夜。東宝演劇部のTwitterから、気になるふたつのビジュアルとともに翌朝の情報解禁告知のツイートが発信されました。ひとつ目はデコラティブなネイルをした、白っぽくてきれいな手。ふたつ目はどろりと溶けたチョコレートが覆うシルクハットを目深にかぶった人物。タイムライン上に飛び交った予想通り、翌朝、ミュージカル『チャーリーとチョコレート工場』の上演決定と堂本光一さんが主演を務めることが発表されたのでした。
目を惹く情報公開と強烈なビジュアルで、早くも話題沸騰中の公演の情報をお届けします。
小説や映画で愛される児童文学のミュージカル版が日本初の上演へ!
児童文学作家、ロアルド・ダールが1964年に発表した『チャーリーとチョコレート工場』は、世界中で大人気の「ウィリー・ウォンカ社のチョコレート」の工場見学に5人の子どもたちとその保護者が招待される、という物語です。
ウォンカ社のチョコレート商品にランダムに入れられた5枚の金のチケットが当たった子どもたちを工場に招待するというキャンペーンに、西から東まで各国の子どもが集まります。
幸運の金のチケットを手にした子どもたちは、さまざまな思いを抱えてチョコレート工場へ。完全非公開の工場に足を踏み入れると、ウォンカ氏は直々に工場にまつわる謎と、おいしさの秘密を明かしてくれます。でも、進むにつれて次第に子供の数が減っていって…
まるでたくさんのお菓子の包み紙をあけていくように、読み進めるほどロアルド・ダールのユーモアとイマジネーションが心をくすぐり、子どもから大人までもが楽しめる作品です。
これまでに2回、映画が制作され、奇才ティム・バートン監督が手掛けた映画版(2005年)をご存知の方も多いのでは。ウィリー・ウォンカ役をジョニー・デップが務め、痛烈でシニカルなウォンカというキャラクターや、ウンパルンパ人のミュージカルシーン、監督のこだわりが光る色彩豊かな映像が印象に残りました。
ミュージカル版は2013年にロンドンのウェストエンドで開幕。国民的作家の親しみやすい児童小説のミュージカル版ということで、子ども連れを中心に人気を博しました。約4年のロングランを達成して閉幕すると、2017年にはニューヨークのブロードウェイに進出。演出家が変わり、さまざまな改変が加えられて上演されました。
演出は変わりながらも、観る者の心をつかむワクワク感は変わらない。楽しくてちょっぴりスパイスの効いたミュージカル『チャーリーとチョコレート工場』が日本で上演されることになりました。
作品世界を操るおかしなカリスマ、ウィリー・ウォンカ役に堂本光一が決定
映画同様に、この作品の不思議な世界観を決定づける登場人物こそ、チョコレート工場のオーナー、ウィリー・ウォンカ。日本での初上演にあたり、その大役を『Endless SHOCK』『ナイツ・テイル』の堂本光一さんが演じることが決定しました。
カリスマ的手腕で消費者の心をつかみ、みんなが熱狂的に買い求める商品を販売するお菓子メーカーを独自の信念で経営するウィリー・ウォンカ。ウンパルンパ人という種族の協力のもと、不思議な仕掛けがいっぱいの工場で、門外不出のレシピでお菓子作りに日夜情熱をささげる・・・と書くだけでも、彼が骨の髄までエキセントリックな人物であることが伝わりそうですね。
ストーリー上の主役は、タイトルのとおり少年チャーリーなのですが、作品世界の住人たちの注目の的はいつもウィリー・ウォンカ。そんなスター性のある人物を演じるには、「帝劇のスター」である堂本光一さんはピッタリのキャスティングです。派手なセットや衣装に負けないビジュアルとオーラで、舞台上で新たな輝きを放つことでしょう。
日本版翻訳・演出はウォーリー木下さん、訳詞は森雪之丞さんが担当。振付、アートディレクションも日本オリジナルでの制作となります。
公演は2023年10月に東京・帝国劇場で開幕。2024年1月は福岡・博多座、その後2月にかけて大阪・フェスティバルホールでの上演が発表されました。追加のキャスト情報など、続報が待ちきれません。作品公式ホームページはこちら
作品の要になる楽曲にキャスティングも。変化しながら愛されてきたミュージカルの見どころとは。
本作の魅力のひとつはやはりその楽曲です。ミュージカル『ヘアスプレー』を手掛けたコンビ、スコット・ウィットマンとマーク・シェイマンによるミュージカルソングは、ウィリー・ウォンカはもちろんのこと、5人の子供たちの個性や家庭環境までもが伝わる彩り豊かな音楽で、観客を飽きさせません。演出が変わったブロードウェイ版からは、1971年に公開された同作の映画から「キャンディ・マン」と「ピュア・イマジネーション」が盛り込まれ、より魅力的な構成になりました。
また、一見ド派手な舞台装置や衣装に目を奪われるのですが、本作で色鮮やかな舞台装置に引けを取らない活躍を見せるのは、アンサンブルキャストたち。冒頭では、金のチケットの当選者を騒ぎ立てるメディアとして。工場に入った後のシーンでは、陽気な工場従業員のウンパルンパたちとして。想像力豊かなロアルド・ダールの世界観の作り手として大活躍します。もちろん、名前のついた役もデフォルメされたキャラクターたちなので、きっとお気に入りが見つかるはずですよ。
筆者が個人的に日本公演の決定で関心を寄せているのは、子役の人数です。
10年前にロンドンでこの作品を観た時、5人の子どもたちはすべて子役が演じていました。食べることが何よりも好きなオーガスタス、お金持ちのヴェルーカ、負けん気の強いヴァイオレット、ゲーマーのマイク・ティービー、そして、心やさしい質素な少年チャーリー。強烈なキャラクターを見事に演じきる子役さんたちに感嘆したことを今でも覚えています。
しかし、ブロードウェイ版の演出変更以降、子役はチャーリー役のみになり、他の4人の子どもたちは大人の俳優が演じるようになりました。子どもを大人の俳優が演じることでチャーリーとの対比が生まれ、作品のシニカルな側面がより一層見えるのでは、と想像しています。現在、行われているイギリス・アイルランドツアー公演でも、やはり大人の俳優が演じている様子です。
おそらく日本版も子役はチャーリー役だけになるのではないかと予想していますが、そうなると、子どもの役はどなたが演じるのだろうか?とますますキャスト情報の更新が待ち遠しくなります。作品の最新情報が出た時には、ぜひ「#チャリチョコ」のハッシュタグで盛り上がりましょう!
華やかで年齢を問わず楽しめる作品です。堂本さん主演で人気は高くなること間違いないですが、筆者もチケットを狙って楽しく観劇できれば良いなと思っています!