玉梨ネコさんの人気作品『リタイヤした人形師のMMO機巧叙事詩』(TOブックス刊)を原作に、今回初の舞台化となった『DOLL』。演出には数々の話題作を手掛ける注目の演出家・元吉庸泰さん、主演に林翔太さん、ライバル役に松本幸大さんを迎えます。
玉梨ネコの人気作品を初の舞台化!演出・元吉庸泰×脚本・小林雄次の最強タッグが実現
玉梨ネコさんの『リタイヤした人形師のMMO機巧叙事詩』(TOブックス刊)が原作となっている舞台『DOLL』。原作は現在までに小説版全2巻、コミカライズ(漫画/いづみやおとは、キャラクター原案/高瀬コウ、ストーリー協力/伊藤高史、構成/梶田まさよし) にてコミックス既刊3巻、4月には最終巻である第4巻が発売されます。さらにニコニコ漫画では現在100万回再生に達する大人気コンテンツとなっています。
人気作の初の舞台化にあたり演出を務めるのは、元吉庸泰さん。劇団「エムキチビート」主宰であり、『僕のヒーローアカデミア』など話題の2.5次元舞台やストレートプレイ、さらに『ソーホー・シンダーズ』や『EDGES』といったミュージカル作品まで手がける演出家です。先日、23年2月に帝国劇場で上演されるミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』の脚本を務めることも発表されました。
脚本を手掛けるのは、プリキュアシリーズや、ウルトラマンシリーズを初め、アニメやドラマ、映画などの映像作品から舞台、ノベライズなど多彩に活動している小林雄次さんです。
舞台『DOLL』は、現実世界で人形を作れなくなった「人形師」の少年が、VRゲームの中で、再び人形制作に取り組み、 仲間との冒険やライバルとのバトルを通じて人形と向き合い、自分の人生の意味を問い直していく物語。
『DOLL』の主人公・佐倉いろはは、人形師の家系として将来を期待されています。
最高傑作の人形をついに完成させ、人形師の日本一を競う品評会で優勝、高く評価されました。
しかし、いろはのアトリエが何者かによって放火され全焼。いろはは一命を取り留めますが、腕に大火傷を負い、二度と人形が作れなくなってしまいます。
いろはが入院中のある日、謎の差出人からVRマシンが送られてきます。それは「DOLL’S ORDER」という仮想世界で人形を戦わせ、最強の「DOLL」を目指すというゲーム。
ゲーム世界では、執拗にいろはを狙うズィークという男が現れます。ゲーム世界と現実世界、リンクする2つの世界でズィークの目論見が明らかになった時、いろは自身も気づいていなかったズィークとの因縁の戦いが始まるのでした…。
佐倉いろは役を演じるのは林翔太さん。1月に上演された『悪魔の毒毒モンスター REBORN』では12役を演じきりました。
快斗役とVR世界でいろはと対決するズィーク役を演じるのは、舞台『喜劇 老後の資金がありません』や『ナミヤ雑貨店の奇蹟』などに出演の松本幸大さん。
いろはがVR世界で初めて作ったドール・ミコトと、いろはの妹・美琴を演じるのは、『魔進戦隊キラメイジャー』への出演で注目を集めた西葉瑞希さん。
ズィークのドール・9号と快斗の妹・九美を演じるのは、『ウルトラマンブレーザー』への出演で話題となった搗宮姫奈さん。
ドール工房の主人・レトロといろはの祖父の2役を演じるのは、俳優としてだけでなく、自身で企画演出としても活動している陰山泰さん。
VR世界の最強のプレイヤー・ディアベル役と現実世界では刑事役の2役を演じるのは、2.5次元舞台やミュージカルで活躍している藤田玲さんです。
VR世界でのドールたちの戦いのシーン。数々のアクションを繰り広げる西葉さんと搗宮さんの身体能力の高さに驚きます。また、技を繰り広げたり、攻撃を受けても、人間のように体がぶれたりせずに“人形”であることが見てとれる動きに思わず感嘆しました。
「見終わった後に自分の選んだものに自信が持てるような作品になっていたら」
取材会には、林翔太さん、松本幸大さん、陰山泰さん、藤田玲さん、演出の元吉庸泰さんが登壇されました。
本作で印象的なのが“枠”を使った演出。アンサンブルの方々が演じる“ドール”たちが自在に操り、時に現実世界とゲーム世界の扉になったり、時に病室の扉になったりと、同じ枠でもシーンによって意味合いが様々に変化していきます。
プロジェクションマッピングなどの映像技術は用いずに、ゲーム内のバトルはアクションとして、人形を作るシーンはダンスでなど、敢えて身体表現を駆使した演出がされています。
元吉さんは、「ディアベルのセリフで「人の心は本物だ」というセリフがあります。ネットのことで何かがあったら、現実世界で傷ついてしまうように、人の心はネットでも現実でも変わらない。
だからこそ境界線っていうものが簡単に飛び越えられそうで簡単には飛び越えられないもの、抜けられるんだけど抜けられないということを表現しようと思いました。
その時に、アンサンブルが演じているドールズたちの人形劇にしようというコンセプトが見つかった。そこから、境界線や扉やウィンドウを枠で表現していくということで、ある人には簡単に越えられるけど、ある人には全く越えられなかったり、時には断崖絶壁だったりというものをつくるのに枠が良いなと思ってあの形になりました」と制作秘話を語ってくれました。
林さんは、「台本を最初に読んだ時と、今の印象が全然違う」と言います。「こんなにも生々しい演劇になるとは思っていなくて、さすが元吉さんパワーだなと感じます」と話す要因の一つは、ドールを演じるアンサンブルキャストにあります。
ダンスやアクションなど激しい動きが多く、さらに枠を動かすことで物語を進めていく役割も持っており、アンサンブルワークの成功が本作の成功と言っても過言ではありません。ぜひ観劇の際は注目してご覧ください!
みなさんが好きなシーンとして挙げたのは、いろはの病室に祖父が見舞いに来るシーン。
演じている林さんは、「いろはが久しぶりにじいちゃんに会えて、凄くホッとするシーン。稽古の時からこのシーンが1番好きで、本当のおじいちゃんみたいな安心感がある」と言います。
林さんと陰山さんは「ゲネプロでは危うく泣きそうになった」と振り返り、笑いあう場面も。
藤田さんはゲーマーとして「いろはとズィークのデュエルの時に、二人の間に枠が出てきて申請しあうところがすごく胸熱で、かっこいいシーン」と話しました。
松本さんは、ゲネプロで特に感情が昂ったシーンがあったと話します。「ズィークって“悪”にしか見えないかもしれないですけど、妹との別れなど様々な葛藤があって、自分の正義もある。自分の敵だと思い込んでいるいろはに対して、現実世界でいろはの首を絞めるシーンで感情が昂って、ゲネプロでは泣いてしまった。より一層好きなシーンになりました」と語りました。
林さんと松本さんはジャニーズ以外の外部の舞台では、初共演とのこと。林さんは、今回稽古場で松本さんの芝居に対する姿勢を見ていて凄く刺激になったのだそう。
「場当たりの時に、アクシデントで9号のベールが取れてしまった時に、芝居に使えるんじゃないかと演出の元吉さんに相談しに行ったりしていて、芝居に対して最後まで突き詰めていく姿勢が見ていて勉強にもなるし刺激にもなりました」と話しました。
松本さんは、林さんと共演するにあたって「お互いが色んな作品を経験して、絶対的に成長はしていると思うので、不安は一切ありませんでした」と言い、長年同じ環境で切磋琢磨してきたからこそ、お互いに信頼しあっている関係性が感じられました。
「林は林のアプローチでくるから僕は僕のアプローチで行くし、上手く絡むように元吉さんにバランスを見て頂くという作業だなと思っていたので、稽古していて楽しかったです。このタイミングで林と共演するチャンスをいただけたことに感謝です」と続けました。
元吉さんは本作を「選択の話」と表します。
「何を選んでも間違いではなく、何を選んでも正解である。進んできた道を最終的に振り返るのではなく、何を選んでいくかという話にしたいと稽古の初めからこだわって作ってきました。 見終わった後に自分の選んだものに自信が持てるような作品になっていたらいいなと思います」と話しました。
選択肢で溢れかえっている現代。AIやChatGPTなどの人工知能も身近になってきています。そんな今を生きる多くの人々に観劇してほしい作品となっています。
舞台『DOLL』は、6月1日(木) ~ 6月5日 (月)に渋谷区文化総合センター大和田・さくらホールにて上演。その後6月16日 (金) ~ 6月18日 (日) に京都劇場にて上演です。公式HPはこちら。
幕開きからアンサンブルの方々が演じる“ドール”たちが大活躍。出演者全員で作り上げているという、人間の想像力・創作力が強く実感できる舞台でした。アクションシーンで綺麗に広がるマントの裾やドレスなど、衣装のディティールの細かさにも注目です!