脚本・作詞・作曲をウィリー・ラッセルが手掛け、ローレンス・オリヴィエ賞最優秀新作ミュージカル賞を受賞したミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』。階級社会を背景に、親と子、兄弟の絆、人間の運命を描いた名作が、2026年3月4月にシアタークリエで上演されます。双子のミッキーとエディを演じる小林亮太さん、山田健登さんに本作の魅力を伺いました。
人間の本質を描いた、生々しいリアルな物語

−お稽古に入られて、作品の魅力をどのように感じていますか。
小林「大人である僕らがミッキーとエディの7歳の子ども時代を演じるというのは、ある種、大人がやる可笑しさもあると思うんです。可笑しいからこそ悲しい部分が伝わるので、そこが面白いなと思います。また、ミセス・ジョンストンとミセス・ライオンズ、2人の母親の葛藤もリアルに描かれているので、凄く胸に刺さる作品だなと思いながら稽古をしています」
山田「人間の本質を描いた作品で、誰しも1つは共感する部分があるんじゃないかなと思います。ミッキーとエディの関係性は凄く生々しいんです。例えば友達と、一緒に学生生活を送っている時は同じ感覚で過ごしていたのに、久しぶりに会ったら全然感覚が違う、という経験をしたことがある人は多いと思います。友達同士で感じるズレというのが自分の中で腑に落ちましたし、凄くリアルな作品だなと思いました」
−7歳から大人になるまでを1人の俳優が演じることでよりリアルに感じることもあるのでしょうか。
山田「あると思います。普通の公演では子役がいて、10代の後半から僕らが演じる場合が多いと思うのですが、それとはまた違う見え方になる気がします」
小林「子役と共演すると“ここはこういう表情をするんだな”とか“大人の僕に似せるためにここを真似してくれるんだな”という発見がありますが、今回は自分で演じるので、俳優としての責任が伴う分、ミッキーとエディの出会いから演じられて心が動きます。演出の日澤さんも生々しくやりたいというのをベースにしていらっしゃるので、いかに実感を持って演じるかを大切にしています」
6時間のご飯会から見えてきた共通点は

−双子としての繋がりを感じるために、何かやられていることはありますか。
山田「特にありませんが、力を抜いて一緒にいるのが良いのかもしれません。ご飯もよく一緒に食べに行っています。亮ちゃんが誘ってくれるんです。僕は行きたいんですけれど、なかなか自分から誘えなくて。でも歌稽古初日に亮ちゃんが誘ってくれたので嬉しかったです」
小林「歌稽古初日にいきなり誘ったのは初めてです(笑)。でも健登のことを知りたかったので。その日からいきなり6時間くらい2人きりで話したよね(笑)。6時間の間に言葉がない瞬間があっても居心地が良くて、これまでの人生で重ねてきたものや、大事にしているものが共通していることが多かったです」
−どんな部分が共通点だと感じられていますか。
山田「亮ちゃんは芯がある人だなと思うんです。僕はポヤポヤしている部分もあるんですけれど、自分の中で“これ”というものがあって、“結構熱いね”と言われることも多い。それが似ているなと感じました。内に秘めているものがあって、男らしい亮ちゃんに共感することが多いです」
小林「小学生の時に、タイミングは違うけれど同じ番組に出ていたり、ダンスやグループ活動をしていたりという共通点もあるよね。健登とはこの作品で初めて共演しますが、これまで仕事で経験した葛藤が似ていると感じました。また、人に対しても、俳優として舞台の上に立つ時も、フラットでいたいという感覚が似ていると思います。ミッキーとエディは双子でありながら育った環境が大きく違うので、2人の微妙なバランス感は今後の稽古で探っていきたいですね」
俳優人生のターニングポイントとなる作品に
−音楽についてはいかがですか。
山田「難しいです。同じメロディーが何度も出てくるし、どう表現するのが良いか、まだもがいています。ポップス寄りの曲調だからか、ちゃんと考えないとただ綺麗に歌っているだけになってしまう気がして、常に悩みながら音楽に向き合っています」
小林「後半にあるエディの楽曲は、それまでの曲調とガラッと変わってメロディアスなので、惚れちゃいます(笑)。楽曲も好きだし、健登の声も好きだから聴いていたいけれど、ミッキーとして考えると気持ちが持っていかれてしまうので、袖で待つ時の気持ちの作り方が難しいです。自分の楽曲に関して言うと、僕はミュージカルで簡単な楽曲に出会ったことがないので、いつも難しいと感じているのですが(笑)…日澤さんがお芝居をベースに『ブラッド・ブラザーズ』を構築しようとしているので、その中に存在する楽曲として、言葉の延長線上としてどう歌うかをより考えています。基礎はもちろん必要ですが、技術だけで持っていくよりも、いかに芝居として歌うかが重要だと思います」

−7歳から演じる上で、歌でも年齢の変化を表現する難しさがありそうですね。
小林「大人が子どもを演じようとすると、分かりやすく声のトーンを上げがちだと思うんです。でもそれだけでは今回の物語の本質が伝わらないから、それをどう見せていくか、音楽でどう音にしていくか。その感覚を擦り合わせていきたいと考えています」
山田「亮ちゃんが言うように、声を作るだけでは十分ではないと思います。最初は声を作るところから入ったんですけれど、今は意識がもっと内側に向いている感覚があって、それは良い方向に向かっているのかなと思います。気持ちが先行して、結果的に声が高くなる分には良いのかなと、感じています」
−日澤さんの演出はいかがでしょうか。印象に残っている言葉はありますか。
山田「俳優に寄り添ってくれる方だなと日々感じていて、素晴らしい演出家の方に出会ったと思っています」
小林「導き方が凄く丁寧だし、かつ的確だなと思います。それに、俳優でいらっしゃることもあって凄く演技がお上手なんですよ。一幕のあるシーンをやってくださった時、パッと表情が変わって、桜が満開になったみたいな笑顔になって。その場が一瞬でピンクになったと感じるくらい」
山田「急に目がキラキラしたよね」
小林「俳優にとってはプレッシャーなくらいです(笑)。稽古序盤で“豊かな想像力でこの作品を作っていきたい”とおっしゃったのも凄く印象的でした。今、携帯を見ればなんでもすぐに答えが出てしまう時代で、想像力が失われがちだと思います。だからこそ想像力を捻り出していくのが俳優の仕事だと思うし、想像を超える作品を作らなければいけない。自分が日常感じたことを芝居に組み込んでみるとか、想像力を大切に、稽古をしています」
山田「僕は俳優として今までも課題だと感じていたことを日澤さんが言ってくださったのですが、これはクリアしたいなと思っています。今後の俳優人生にも絶対に生きてくることだと思うので、『ブラッド・ブラザーズ』を終えた時の自分がどうなっているのか、凄く楽しみです。エディは物語の中で成長していくけれど、俳優自身も成長していく作品だと思っています」

渡邉蒼×島太星ペアから受ける刺激
−今回はWキャストでミッキーを渡邉蒼さん、エディを島太星さんが演じられます。小林さん、山田さんとはまた違った個性を持つお二人ですよね。
小林「全然違いますよね(笑)。ペアというより、個人個人として捉えることが多いです。個性が際立っている4人だと思うので、凄く刺激をもらうし、太星くんがエディだからこそ、蒼くんの見たことない瞬間が見られるし、僕らにもそういう瞬間があるだろうなと思います。
稽古に入る前は、もっと不安になるかなと思ったのですが、今は4人の仲が良くて、ライバルとか嫉妬の感情を超えた関係性になっていると思います。日澤さんが製作発表で“Wキャストではなく、2つの作品をそれぞれ作っている感覚”と言ってくださって、そういう言葉にも救われていると思います」
山田「2人を見ていると面白いです。太ちゃん(島太星さん)は自分だったら考えもしないような行動を取るし、独特なテンポ感がある。蒼くんは凄くしっかりしていて、思いもよらないような方向から飛んでくる演技を、上手く受け止めているんですよね。2人が可愛くて愛おしいです」
−本作は格差社会について鋭く切り込んだ作品でもあります。今の時代に重なる部分も多いと思いますが、どのように感じられていますか。
小林「稽古序盤に翻訳の伊藤美代子さんが、脚本・作詞・作曲のウィリー・ラッセルさんから初演時に聞いた話や、物語が生まれた背景、イギリス・リヴァプールの人たちは当時どういう暮らしだったのか、日本に置き換えたらどうか、といった話をしてくださいました。
ミッキーは下層階級で苦しい暮らしを強いられますが、ミセス・ジョンストンが力強く一家を引っ張っていて、凄く前向きな家庭だと思います。今の世の中、“結局お金がないと”という側面ももちろんあるけれど、そうでなくても、幸せや楽しさを感じられる瞬間はあるはず。それをいかに僕らが映し出せるかが大切だと思います。
子ども時代を演じながら自分の幼少期を振り返ると、違う環境で育った子がいようと、多少の違和感はあったとしても、みんな仲良く遊べていたなと思うんです。そういった童心や遊び心を届けられたら、今この物語を上演する意味があるのかなと思います」
山田「もちろんお金はあった方が良い場面もあるけど、そうでないほうが、幸せだったり、幸せに気づける瞬間が多いのかなと思います。お金が沢山あると、お金に支配されているような気にもなりますし。でも大人になるにつれて、支配されなければいけない状況になってくるんだと思うんです。自分で一人暮らしを始めて、お金ってこんなに必要なの?生きているだけでもお金がかかるって思うじゃないですか。だから忘れがちになってしまうんですけれど、ミッキーとエディ、どっちが幸せだったのかなって今、凄く考えています。心が幸せだったのはどっちかなって。目先のことではなく、根本を大事にしたいです」

−最後に観客へのメッセージをお願いします。
小林「家族の問題や社会的な環境、色々なテーマが詰まった作品です。皆さんが生きてきた過程のどこかに結びつく瞬間がある作品だと思うので、物語の中で誰がどんな選択をしていくのか、その選択を見届けた皆さんがどういう想いを抱いて劇場を出られるのか。ぜひ劇場で何かを受け取っていただけたら嬉しいです」
山田「全力でお届けしますので、その想いを受け取っていただけたら嬉しいです」
ミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』は2026年3月9日(月)から4月2日(木)まで東京・シアタークリエ、4月10日(金)から12日(日)まで大阪・サンケイホールブリーゼにて上演が行われます。公式HPはこちら
穏やかな雰囲気を持ちながらも、内に熱さを秘めているお二人が演じるミッキーとエディが楽しみです!



















