ヨーロッパ企画・上田誠さんの傑作戯曲を大歳倫弘さん(ヨーロッパ企画)の演出で贈る舞台『曲がれ!スプーン』。主演に鈴木大河さん(IMP.)を迎え、喫茶店「カフェ・ド・念力」に密かに集うエスパーたちの物語を繰り広げます。共演に、岡田義徳さん、忍成修吾さん、時任勇気さん、オラキオさん、ひょうろくさん、松井愛莉さん、相島一之さんと実力派キャストが集結。鈴木大河さんに本作の魅力や稽古の様子を伺いました。

SFなのにアナログ。演劇ならではの親しみやすさ

−出演が決まった時はどんな心境でしたか。
「これまで何度も上演され、映画化もされて、たくさんの方に愛されてきた作品なので出演できることに凄く嬉しい気持ちがありつつも、背筋が伸びる思いでした。初主演ということもありますし、錚々たる役者さんに囲まれて、嬉しさと不安の両方がありましたね。出演が決まってから舞台映像を拝見したのですが、アドリブなのかなと思うくらい自然な会話劇が進んでいくうちに前半の伏線が回収されていって、凄く惹き込まれました。
いざ台本を頂いて読んでみると、相槌や何気ない台詞が多く、情景があまり浮かんでこなくて、映像と一致しない感覚になる台本というのは初めてで。稽古に入る段階でどのくらい台詞を入れていったら良いのか、どのくらい役を作っていった方が良いのか、凄く難しさを感じました」

−実際にお稽古に入ってみていかがでしたか。
「稽古初日から皆さんの会話のテンポが軽快で楽しくて、稽古を重ねていくうちにどんどんその呼吸が掴めていきました。より作品を深掘りできていますし、ここが面白いポイントだなというのが細かく分かってくるようになりましたね」

−本作には様々な超能力を持ったエスパーたちが登場します。
「僕自身も超能力は全然否定派ではなくて、面白いなと思っていたんです。この作品のエスパーたちの面白いところは、SFに振り切っていないところ。演劇だからこそ超能力を使うシーンもアナログな装置で動かしていたりします。そういうところが観ている方々にとって親しみやすくて、この作品が長年愛されてきた理由なんだろうなと感じています」

新たな設定とともに見えてきた河岡の可愛げ

−鈴木さんは「カフェ・ド・念力」の常連客で、念力でどんなものでも動かせるサイコキネシス能力者の河岡を演じられます。
「映像を拝見した段階ではどの役を演じるのかまだ分からなかったのですが、河岡を演じられていた方は体格も大きく、パワー系というのが一目で伝わる方だったので、この役はないだろうなと最初に思ったんです。でもサイコキネシスという能力は憧れがあったので、河岡を演じることになって嬉しかったです。自分のイメージとマッチしない感覚があって最初は苦労したのですが、演出の大歳さんともお話しさせていただきながら、自分なりの河岡像を作っていくことができました」

−河岡というキャラクターの魅力は何だと思われますか。
「河岡は喫茶店の常連客の中では若手なので、親しみやすさや可愛げがあるキャラクターだと思います。椎名(時任勇気さん)は筧(岡田義徳さん)の後輩なので筧との上下関係がはっきりしていますが、河岡はそういった関係値がない分、割と年上にもガンガン行けるタイプ。でも大歳さんに元ヤンという新しい設定を作っていただいたので、先輩や後輩を大事にする感じも表現できたらと思います。他のエスパーたちもとても親しみやすいキャラクターばかりなので、良い雰囲気を、自分も楽しみながらお客様にお伝えできたら良いですね。大人が真面目にふざけているところを笑っていただけたらなと思います」

−劇中ではエスパーが超能力を披露する場面もあります。
「エスパーたちの超能力の使いどころが“そこ?!”って突っ込みたくなるくらいおかしいんです(笑)。稽古をしていても笑いそうになってしまいますが、実はそれぞれの超能力には細かい設定があって、辻褄が合うようになっているのでそれも面白いです」

先輩キャストから学ぶコメディーの“間”

−キャストの皆さんの印象はいかがですか。
「本当に多方面でご活躍の方々ばかりなので、日々勉強させていただいています。芸人のオラキオさんからはコメディーにおける“間”をアドバイスいただいていますし、相島一之さんからもお芝居について色々とアドバイスをいただいています。岡田義徳さんともよくお話しするんですけれど、河岡が突っ込むトーンや言い方など、どうしたらもっと伝わるようになるかいつも教えていただいているんです。稽古時間になると声を掛けられる前にみんながゾロゾロとセットの方に向かっていくので、大歳さんが“みんな真面目だね”とおっしゃっていました」

−本作は会話劇なので、皆さんとの掛け合いも楽しみですね。
「きっと毎公演違う空気感になると思います。最初に映像を拝見した時は、“ここはアドリブなのかな?”と思った部分も多かったのですが、台本を見てみるとちゃんと台詞として書いてあって、凄く綿密に計算され尽くした作品なのだと感じました。ただ、その中で遊びの部分も多い作品で、先輩方が色々と投げかけてくださるので、それに返していくのが凄く楽しいです。自分から仕掛けるのはハードルが高いですけれど、先輩方が色々な言い回しで投げかけてくださるので、それをしっかり感じ取りながら、毎回応えていきたいと思います」

−演出の大歳さんとはどんなことをお話しされましたか。
「河岡を演じるにあたって、前回演じられた方と自分とのギャップについてご相談させていただきました。そこで河岡の細かいバックボーンについて−元ヤンで、学校を卒業してすぐに工場に就職したけれど、工場長にもすぐにカッとなって能力を使ってしまう−というのをお伺いして、自分に合うように設定を作ってくださったのが嬉しかったです。設定に合わせて、本来は黒髪に戻す予定だった髪色も金髪のままにしました。僕は元ヤンの経験はないんですけれど(笑)、会社員とかよりはやりやすいのかなと思います。空き時間も実際に存在するエスパーの話をしてくださったり、作品の題材となった本を紹介いただいたりしています」

今の時代に響く、コメディーの中にあるリアルさ

−大歳さんの「ファンタジーやコメディの入り込む隙間がないくらいしょっぱい世の中になってきたからこそ、人々の集う劇場にそれはあるべき」というコメントに、本作に込められた想いが感じられますよね。
「稽古場でもそういったお話をしてくださいました。この作品が初演された2000年はエスパーや超能力ってテレビ番組でもたくさんやっていたと思うんですけれども、令和にはなかなかありません。この作品ではエスパーたちが日常生活で能力を明かせないという悩みも描かれていて、とても現代にリンクするリアルさがあるなと思います。エスパーって大衆として見ると信じ難い現象として否定されてしまいがちですが、個人で向き合ったらどこかしら信じているというか、別になくもないんだろうなと感じている部分はあると思うんです。コメディーの中にそういうリアルさが盛り込まれているのもこの作品の魅力だと思います」

−最後にメッセージをお願いします。
「稽古の段階でも自分たちで笑ってしまうくらい凄く楽しい作品になっています。この作品をずっと愛している方、今回初めて観る方、色々な方がいると思いますけれど、僕を含め、キャストの皆さんの個性が詰まった新しい『曲がれ!スプーン』を楽しんでいただければと思います。ぜひ劇場に足を運んでいただけたら嬉しいです」

撮影:晴知花、ヘアメイク:大森創太(IKEDAYA TOKYO)、スタイリング:YAMAMOTO TAKASHI(style³)

『曲がれ!スプーン』は2026年6月4日(木)から6月14日(日)までIMM THEATER、6月17日(水)から6月19日(金)まで京都劇場にて上演が行われます。公式HPはこちら

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Yurika

ヨーロッパ企画の作品は、SFでありながらも人の手で作る温かみに満ちていると感じます。鈴木さんはご自身のパブリックイメージとは異なるキャラクターを演じられるので、そのギャップも楽しみです!