人気小説家・池井戸潤さんの作品を初めて舞台化するミュージカル『民王』が、2026年9月より東京で上演されます。ドラマ版も好評を博した痛快政治コメディがどんなミュージカルとなるのか注目です。

池井戸潤小説が初めてミュージカルに

ミュージカル『民王』は、池井戸潤さんの同名小説を原作とする作品です。池井戸さんの小説は幅広い世代から圧倒的な支持を得ており、『下町ロケット』をはじめとする『下町ロケット』シリーズや『花咲舞が黙ってない』『ハヤブサ消防団』など、映像化されたものも多数あります。

特に『半沢直樹』シリーズをベースにした同名ドラマは高視聴率を記録し、堺雅人さん演じる主人公のセリフ「倍返し」が流行語大賞に選ばれるほどヒットしました。

2010年に刊行された小説『民王』もまた、老若男女問わず人気のある作品のひとつ。物語では、突然心と体が入れ替わってしまった内閣総理大臣と大学生の息子が、周囲を巻き込みながら悪戦苦闘する姿が描かれます。コメディ仕立てでありながら、現代社会に対する皮肉や風刺を織り交ぜる匙加減が絶妙。2015年にテレビ朝日系にてドラマ化されると、2024年にはオリジナルストーリーのテレビドラマ『民王R』が放送されました。

そしてついに2026年9月、ミュージカル版が東京・大阪・福岡で上演されます。「池井戸潤小説」の舞台化は本作が初めてとあって、ミュージカル好きの方はもちろん、原作やドラマのファンの方にとっても期待せずにはいられません。

<あらすじ>
就任したばかりの現職総理大臣の武藤泰山と、武藤のドラ息子で大学生の翔の心と身体が、ある日突然入れ替わってしまい…!?原因もわからないまま、やむなく泰山の変わり身となって国会に出ることになった翔。遊んでばかりの日々を送ってきた翔には、国会でおこなわれる討論や質疑応答など、到底理解できず、さらには文書に書かれた漢字すら読めず何度も誤読し、世間に大きな衝撃を与えます。一方翔の変わり身となった泰山もまた、翔が受けるはずだった就職面接を代わりに受けますが、政治家仕込みの横柄な態度で好き放題言いまくり、けんか別れに…首相と息子の入れ替わりなど夢にも思わない世間では、ただでさえ一国の代表とは言いがたい言動に対する厳しい批判が渦巻く事態に。追い打ちをかけるように泰山のまわりでは、スキャンダルが発生。泰山と翔は混乱の中、この入れ替わりの真実に近づいていく―。

期待の若手から実力派の名優まで豪華キャストが出演

内閣総理大臣の父親と入れ替わる大学生・翔役は、今勢いに乗る若手俳優の1人である有澤樟太郎さんです。舞台『キングダム』やミュージカル『のだめカンタービレ』などさまざまな作品で経験を積み、2024年にはミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』で帝劇初主演を飾りました。2025年も躍進は続き、日本初演のミュージカル『HERO』で単独初主演を果たしたほか、メインキャストをほぼ一新したミュージカル『キンキー・ブーツ』ではチャーリー役のWキャストに選出。同年の『ジャージー・ボーイズ』では2022年版と同じ役を演じて高く評価されました。直近では、2026年2月のミュージカル『レイディ・ベス』にてロビン役を瑞々しく演じた姿も記憶に新しいところです。

現職総理大臣であり翔の父親でもある武藤泰山役は、舞台に映画、ドラマ、ラジオと多岐にわたって活躍する別所哲也さん。これまで『ミス・サイゴン』『マイ・フェア・レディ』といった大作ミュージカルを含む数々の舞台に出演し、何度も再演されている『レ・ミゼラブル』では2003年から2011年までジャン・バルジャン役を務めました。豊かな表現力を活かし、演じる役としての存在感を放つ実力派です。

俳優活動の一方で、1999年より日本発の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア」を主宰するなど、芸術分野の発展にも貢献。本作ではミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』で共演した有澤さんとともに、人格が入れ替わった親子という難役に挑みます。

政治家を志望する優等生の村野エリカを演じるのは、豊原江理佳さんです。2008年のミュージカル『アニー』でデビューし、2015年には単身でニューヨークへ留学。演技や歌唱、ダンスに磨きをかけ、帰国してからはミュージカル・舞台を中心に活動しています。2025年はミュージカル『SIX』でキャサリン・ハワードをWキャストで演じ、その後の日本キャストによるロンドン公演にも参加。2026年1月には、オリジナルミュージカル『ISSA in Paris』でヒロインを好演しました。また現在、8月までツアー公演中のミュージカル『レベッカ』にてWキャストで「わたし」役を務めています。

翔の同級生で起業家の南真衣役には、乃木坂46の4期生として音楽活動に加え、テレビや配信番組の出演にも力を入れる林瑠奈さん。2026年4月に日本大学芸術学部映画学科を卒業したばかりで、在学中には自身の監督作品が第5回TYO学生ムービーアワードの銅賞を受賞しました。林さんにとって本作が記念すべき初舞台であり、12月にはミュージカル『FOUR MINUTES -4分間のピアニスト-』への出演も控えています。

泰山の秘書・貝原茂平を演じる俳優の山崎大輝さんは、音楽ソロプロジェクト「眠りにつくまで付き合って」で自ら楽曲制作やライブ活動を行うアーティストとしての顔も持っています。近年の主な出演舞台に『スリル・ミー』『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』『星の降る時』など。また、2026年5月31日に大千秋楽を迎えたミュージカル『天使にラブ・ソングを〜シスター・アクト〜』では、パブロ役で新たにカンパニー入りしました。

公安の刑事である新田理役は、伸びやかな歌唱とダンスを強みとする俳優の上川一哉さん。劇団四季出身で、『リトルマーメイド』『恋におちたシェイクスピア』といった名作で主要な役を務めました。2021年の退団後は『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』や『ある男』など、ミュージカルを中心に出演が続いています。直近の2026年6月6日まで上演されていたミュージカル『メリー・ポピンズ』ではバート役として出演。今後は2027年1月にミュージカル『イザボー』に出演予定です。

さらに、泰山のライバル政治家・蔵本志郎役を福田転球さんが演じます。大阪芸術大学舞台芸術学科ミュージカルコースを卒業した後、1993年に「転球劇場」を旗揚げ。2006年のさよなら公演まで13年間にわたり、全31作品の出演・構成・演出を手掛けました。近年は「2Cheat」や「新ロイヤル大衆舎」などユニット活動を展開する一方で、外部作品にも精力的に参加。本作でも、独特の笑いのセンスを織り交ぜた演技で物語を盛り上げてくれそうです。

泰山の妻で翔の母でもある武藤綾役には、高い歌唱力と柔軟な演技力を誇る一路真輝さんがキャスティング。宝塚歌劇団の雪組トップスターとして人気を博し、1996年に日本初演されたミュージカル『エリザベート』で退団しました。その後も『王様と私』『キス・ミー・ケイト』『アンナ・カレーニナ』などに出演。特に『エリザベート』に関しては、2000年から2006年まで東宝版のタイトルロールを務め、その演技に対して2005年に第12回読売演劇大賞の優秀女優賞を受賞しています。直近では、2026年3月に上演された音楽劇『コーカサスの白墨の輪』で物語の語り手を演じ、芯のある歌声を響かせました。

そして、泰山が属する民政党の大物議員である城山和彦役で竹中直人さんが登場します。映像作品から舞台に至るまで、その活躍ぶりはひとところに留まりません。ミュージカル『のだめカンタービレ』では、テレビドラマと映画版で演じたフランツ・フォン・シュトレーゼマン役で出演。2025年には竹中さんと生瀬勝久さんによる演劇ユニット「竹生企画」の第4弾『マイクロバスと安定』における演技が評価され、第60回紀伊國屋演劇賞の個人賞を受賞しました。さらにコメディアンや俳優としてだけでなく、映画『無能の人』『東京日和』では監督も務めています。本作のなかなか“濃そう”なキャラクターも、竹中さんならパワフルかつユニークに演じてくれるでしょう。

才能と実績を併せ持つクリエイティブ陣

本作で脚本を手掛けるのは、2023年公開の映画『シャイロックの子供たち』で新人ながら第47回日本アカデミー賞の優秀脚本賞を受賞したツバキミチオさんです。『シャイロックの子供たち』も元は池井戸さんの小説ですが、映画版では完全オリジナルストーリーで描かれました。

楽曲については、原作者からのラブコールを受け、ピアニスト・作曲家の角野隼斗さんが担当。角野さんはクラシックで培った高度な技巧に独自の編曲や即興を融合させ、新しい音楽表現を探求しています。

これまでにシカゴ交響楽団やロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団、NHK交響楽団など国内外の名だたるオーケストラと共演。2023年よりニューヨークに拠点を移し、2025年にはクラシック音楽界で顕著な功績を挙げた若手演奏家に贈られるレナード・バーンスタイン賞を受賞しました。また、2025年11月にニューヨーク・カーネギーホールとKアリーナ横浜で開催したソロリサイタルは、双方とも完売。特にKアリーナ横浜公演は「屋内のソロピアノリサイタルで販売されたチケットの最多枚数」のギネス世界記録に認定されました。

さらにYouTubeでも「Cateen(かてぃん)」名義で活動し、チャンネル登録者数は155万人以上。世界中を音楽でつなぐ若き才能が、本作で初めてミュージカルに楽曲提供するのも見どころ、もとい聴きどころです。

そして、演出家の永井誠さんが演出を担います。平成30年度文化庁新進芸術家海外研修制度により、ロンドンに1年間留学。舞台演出について学ぶなかで、イギリスの著名な演出家であるジョン・ケアードさんの個人指導も受けています。帰国後は舞台『千と千尋の神隠し』で演出補・レジデントディレクターを、ミュージカル『ミス・サイゴン』『ムーラン・ルージュ』などで演出助手を務めました。直近でもミュージカル『ロマンティックス・アノニマス』や『レベッカ』に演出助手として携わっており、着実に経験値を積み上げています。

ミュージカル『民王』は9月6日(日)から10月6日(火)まで東京・シアタークリエで上演。その後は10月11日(日)から13日(火)まで大阪の梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ、10月17日(土)から19日(月)まで福岡の博多座にてツアー公演を行います。チケットの一般発売は東京・大阪公演が7月18日(土)、福岡公演が8月22日(土)より開始予定です。詳細は公式HPをご確認ください。

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もこ

あの池井戸潤さんの小説が初めてミュージカル化するだけでもワクワクするうえに、キャスト&スタッフも驚きの強力打線。ドラマ版とはまた違った演出や展開になるのではないか、と筆者も楽しみにしています!