6月27日より本多劇場で開幕した舞台『コテンペスト』。小手伸也さんが舞台初主演を務め、長年の盟友である村上大樹さんが作・演出を務めます。『テンペスト』を大胆に翻案・脚色したコメディ作品は、“小手る”満載の癖の強い作品に!開幕前に行われたゲネプロと囲み取材の様子をお届けします。

復讐劇に巻き込まれるのは「妖精おじさん」?!

シェイクスピアが単独で執筆した最後の作品『テンペスト』を村上大樹さんによって大胆に翻案・脚色した『コテンペスト』。

地方の老舗百貨店「天平ストア」で“無人島”の如く遠く離れた別館を舞台に、“妖精おじさん”こと内木弁慶(小手伸也さん)が、別館社員のプロスペローならぬ黒須(崎山つばささん)の復讐劇に巻き込まれていきます。

冒頭には作詞を村上大樹さん、作曲を米米クラブのフラッシュ金子さんが手がけたテーマソング「そろそろやろう」を歌唱。“埼玉はまだ早い”など早速シェイクスピアネタで客席を笑いに引き込みます。

オリジナルストーリーではありながらも、『テンペスト』の展開と重なり、台詞の引用(翻訳:小田島創志)も度々あるなど、シェイクスピア愛溢れる『コテンペスト』。

内木がかつて劇団員であったということや、本館から別館に左遷されてしまうアルバイトの二瓶(松田 凌さん)が役者を志しているということから、『ロミオとジュリエット』の一節も登場します。

鈴木保奈美さんも天平ストア別館の下着売り場の店員を、癖強く好演。片桐仁さんは別館の中に何故かある立ち飲み屋のマスターや天平ストアのシニアマネージャーを早着替えに追われながら演じていきます。

舞台写真 撮影:岸 隆子

数々のセット転換を役者自身が行うなど、“小劇場らしさ”もふんだんに盛り込まれ、演劇愛溢れるカンパニーによる濃厚な全力コメディ!そこにはバカバカしさだけでなく、人が人の手で創り上げる演劇の尊さを感じられるのではないでしょうか。

バカバカしいことを大真面目にやれたら

ゲネプロ終了後に行われた囲み取材には、小手伸也さん、鈴木保奈美さん、片桐仁さん、崎山つばささん、松田 凌さん、AOIさん(WHITE SCORPION)と脚本・演出の村上大樹さんが登壇しました。

小手伸也さんは「初座長・初主演という身に余る光栄の中、『コテンペスト』というタイトルでやらせていただくこと自体が、まだ僕の中では受け止めきれていない…」と語ると、片桐仁さんから「受け止めてください!小手さんしか『コテンペスト』はできません」と早速ツッコミが。

鈴木保奈美さんは「あっという間に初日が来てしまって、ちょっとアタフタしています。私は皆さんに比べると舞台経験が少ないので、着替えとか色々な物を動かすのが本当にパニックになっていて。皆さんに助けていただいて」と語ると、小手さんから「こんな凄い人に、舞台の装置の転換をやらせているんですよ。手弁当みたいな小劇場で」、片桐さんからも「本当に手が足りないんだよね(笑)。ここまで役者が転換をやることはないですよ。衝撃の数です」と語られます。

片桐さんは「この舞台のために保奈美さんと小手さんがあらゆるテレビ・ラジオで番宣をやってくれた結果が、たくさんのお祝いのお花を頂いたことに繋がったと思います。これは凄いことですよ。演劇ってどうしても99%の人が興味のない世界だと思いますし(小手さん「言い過ぎだぞ!」)、劇団四季とかは別だよ?いくら本多劇場が演劇の聖地だと言っても、日本で観たことがない人が1億人以上いるわけですから。さらにシェイクスピアなんて、安土桃山時代の人ですからね。どこかの国の時代劇を我々がやるというので、シェイクスピアのハードルを限界まで下げて(笑)。あぁこういう感じかと最初は思われるかもしれないですけれども。歌詞にもあるんですが、“埼玉はまだちょっと”と思っている人もいますから。しかも小手さんじゃないと『コテンペスト』じゃないわけですから、本当に凄い演劇ですよ。僕は1年小手さんと一緒にYouTubeをやっていますけれど、全然喋ってくれないので、今回で仲良くなりたいです(笑)」とユーモアを交えつつコメント。

崎山つばささんは「小手さんの初主演舞台ということで、僕は絶対にトチれない、間違えられないという気持ちでゲネプロに臨んだのですが、ど頭に甘噛みしました(笑)。でも小手さんの華々しい舞台になるよう、一員として、一生懸命頑張っていきたいと思います」と意気込みを。

松田 凌さんは「仁さんが仰ったうちの1%、演劇大好き学生だったので、17歳の時の自分に、十数年後に本多劇場に立つぞと言ってやりたいです。小手さんが初主演を務められる、『コテンペスト』という作品で、素晴らしい歴戦の皆様とご一緒させていただけることに光栄な思いもありますが、自分も“小手って”、舞台上で暴れ回ってやりたいと思います」と気合い十分。

ここで片桐さんから「“小手る”の説明をしなくていいかな?演劇業界で20年くらい前から言われている、主演を差し置いて、出過ぎた真似をする脇役のことです(笑)。小手さんがいない場所で言われていたんだよね」と解説が。これには小手さんが「説明が粗い!」とツッコミが入ります。

松田さんは「でもそんな背中を見て僕はずっと演劇を志してきたので、今回この機会を機に、しっかりと皆様と板の上で生きられれば」と演劇愛溢れる言葉が紡がれました。

AOIさんは「カンパニーの中では最年少で、ドキドキしながらのお稽古場、ゲネプロだったんですけれども、キャストの皆様が本当にお優しくて、たくさんサポートしていただいて。たくさんの方々のお力あっての舞台だなと感じながらやらせていただきました」と真摯にコメント。

演出を務める村上大樹さんは「本多劇場で初めて小手くんとお芝居をやったのは、2001年、劇団の時でした。それから25年後、小手くん主演で、あの時と同じようなバカバカしいお芝居を全力でできるというのは、すごく幸せで楽しいことだなと改めて思っております。今回のカンパニーは20代から60代まで、幅広く、色々なところから集まったチームなんですけれども、個性を持った人たちが小手座長の元に集まって、バカバカしいことを大真面目にやれたら。本多劇場というのは舞台をやっている人にとっては聖地のような劇場なので、そこで全力で力一杯ふざけて、シェイクスピアのことを全く知らない人も楽しめるような作品になっていると思いますので、ぜひ劇場にお越しいただけたらと思います」と呼びかけました。

稽古場の様子を問われると、小手さんは「僕が危機感を感じるほど、みんなが“小手って”ました。我々小劇場の俳優って、同じアドリブを繰り返さず、日替わりでアドリブを試していくことがあるんですが、それが悪い方向に感化されてしまって、先輩から若手に至るまで全員がそれをやり始めてしまって。良くない背中を見せているなと(笑)。先頭で走っていたら、後ろが大変なことになっていた(笑)。演出家って普通は“もっと出して、もっとやって良いですよ”と言うものですが、村上が“もうそれ以上やらないで”とほぼ全員に言っていました(笑)」と個性が爆発した稽古場の様子を明かします。

また“俺もそろそろシェイクスピア・シリーズ”というタイトルについては「50歳を過ぎて、シェイクスピアと真正面から向き合ったことが一度もないから、そろそろ真正面からやりたいと言ったのに気がついたらこうなってしまって…(笑)。私は一生、シェイクスピアさんと向き合えないのかも」と語ると、村上さんは「小手くんが本当のシェイクスピア作品に呼ばれるまでシリーズが続けば。今後、ちゃんとしたシェイクスピアに出たい人も出るような作品に」とコメントし、「吉田鋼太郎さんに呼ばれるまで?(笑)なんで埼玉への登竜門がここなんだよ!」と突っ込む小手さん、そして「吉田鋼太郎さんもこっちに出てもらって構わないですよね!お互いに成長しあっていきたい!」と吉田さんの出演を望む片桐さんでした。

本作をシェイクスピアが見たらどう思うか、という質問には小手さんが「本来の『テンペスト』の主人公プロスペローではなく妖精エアリアルの目線で、という翻案はなかなかやるじゃんと思ってくださると思うのですが、内容全体を見返すと、静かにお怒りになるのでは(笑)。でもできるだけ皆さんが親しみやすく、笑ってくださる劇場空間を目指しているので、みんなが楽しそうで、幸せそうに笑ってくれれば、シェイクスピア先生も許してくれると思います」とコメント。

また「一般用語のように“小手る”が使われていますけれども、周りの共演者を気遣ってみんなでバランスを取りながら1つの表現を作り上げていくことは本当に正しいことではあるし、みんなでそれを目指すべきだとは思うんですけれども、お客さんが笑うためであれば、たまにはそういうものを逸脱しても良いのではないか。そういう自意識過剰が“小手る”だったりするので(笑)、今回はそういうのも全肯定して、やっていきたいと思います。どうか客席で、我々がどこにいくのか見守っていただけたら幸いです」とメッセージが贈られ、会見が締めくくられました。

囲み取材 撮影:山本春花

俺もそろそろシェイクスピア・シリーズ『コテンペスト』は6月27日(土)から7月7日(火)まで東京・本多劇場、7月17日(金)から7月19日(日)まで大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホールにて上演が行われます。公式HPはこちら

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Yurika

ファンタジックな世界観の中で復讐と赦しを描いた『テンペスト』とは程遠いコメディ作品ですが(笑)、台詞や人物名、展開には『テンペスト』を感じ思わず笑わされてしまいます。また演劇ネタもたくさん盛り込まれており、演劇の聖地・本多劇場で堪能すべき、味わい深い作品になっています!