2026年8月15日からPARCO劇場で開幕するPARCO PRODUCE 2026『アメリカン・ドリーム』。三谷幸喜さんが長年温めていたテーマであるハリウッドの赤狩りにまつわる物語を、豪華キャストで描く新作舞台です。ドラマ・映画はもちろん『歌妖曲~中川大志之丞変化~』『儚き光のラプソディ』と舞台でも印象的な活躍を見せる中川大志さんに、本作にかける思いを伺いました。
大先輩に囲まれた会話劇、大きな高揚感に包まれて

−本作への出演が決まった時の心境からお聞かせください。
「三谷さんの新作舞台ということでお話をいただきました。これまで大河ドラマを始め映像作品で三谷さんの脚本作品に出演させていただき、三谷さんが生み出したキャラクターを演じさせていただいてきましたけれども、自分にとっても思い入れのある作品・役ばかりでしたので、また三谷さんとお仕事ができるということが純粋に嬉しかったです。かつ演劇という新しいフィールドでご一緒できることにワクワクしました」
−共演は小日向文世さん、浅野和之さん、山崎一さん、浅野雅博さん、関谷春子さん。密室での会話劇が繰り広げられます。
「大先輩しかいない、限られた登場人物での会話劇ということだったので、正直身震いしました。自分のような世代が1人入ってお芝居を作っていける機会というのはなかなかないと思いますし、登場人物たちのぶつかり合い、会話のやり取りでお客様に作品にのめりこんで頂かなければいけないので、もちろん怖さもゼロではなかったんですけれども、それ以上に高揚感が大きかったです」
−『アメリカン・ドリーム』の脚本を読んでみていかがでしたか。
「ハリウッドの赤狩りは三谷さんが長年描きたかったテーマだと伺っています。脚本を読んだ段階から、その想いや熱量をひしひしと感じました。1940年代、50年代のハリウッドは、僕自身はあまり馴染みのない時代だったので、まずこの時代に何が起きていたのかを勉強するところから始まりました。1つ調べ始めるとどんどん広がっていって、すごく興味深かったです。この時代の映画や書籍から勉強を始め、稽古期間中も学んでいる最中です。本作でも明言はされていませんが、モデルとなる実在の映画人がいるので、彼らの歴史を調べだすと面白くて。演じる上での手助けになれば良いなと思いながら勉強しているところです」
−どのような作品をご覧になりましたか。
「本作は三谷さんの映画愛が詰まった作品なので、劇中にも作品のタイトルや俳優の名前が数々出てきます。映画好きの方は、“ここでこの作品が出てくるか”という面白さもあると思います。僕が演じる役は調査委員会の人間ではありながらも、映画が大好きで、実は過去に俳優志望だった青年なので、そういった芝居をする上で知っておいた方が良いであろう監督や俳優、映画について勉強しました。三谷さんから“この映画を見ておいて”と言われた作品もあります。この時代の映画を見ることで、時代の空気を知ることができますし、それが作品の世界に入っていく上で力になります」
真実が置き去りにされた赤狩りから今の時代を思う

−中川さんが演じるのは、映画人たちを追求する非米活動委員会の委員だそうですね。
「アメリカ国内で反共産主義に基づく赤狩りが起こる中、僕と浅野雅博さんが非米活動委員会の委員を演じ、4人の映画人たちを調査していきます。面談を通して1人1人のキャラクターにフォーカスしていくのですが、それぞれのキャラクターに個性があり、思惑があります。彼らにとっては映画人としての未来が掛かっているので、面談でどう立ち回り、どう面談を切り抜けようとするかを楽しんでいただけると思います。僕ら委員も相手によって戦い方を変えているので、お互いに手の内を明かさずに繰り広げる心理戦が面白いんじゃないかと思います」
−稽古場での雰囲気はいかがですか。
「課題の尽きない脚本なので、掘り下げること、こだわることがたくさんあります。雰囲気自体はすごく和やかですし、三谷さんと長年やってこられている面々なのでざっくばらんに作品とは関係のない話で盛り上がる時間ももちろんあります。でも作品のこととなると、やはり緊張感のあるテーマでもありますし、稽古も終盤に差し掛かっているので、いよいよ近づいてきたなというひりつきはそれぞれの中にあると思います」
−今回作品を通して赤狩りについてどのような印象を受けられましたか。俳優として、映画に携わる身として、どんなことを感じられましたか。
「第二次世界大戦を経て、ロシアとの対立関係から生まれた反共産主義が赤狩りの発端となりましたが、気づけばどんどん加熱していき、真実は置き去りにされていきます。作品の中でも描かれますが、疑いの目を一度向けられたら逃げられない。その恐怖の中で、密告があったり、自分が疑われるような発言はしないようになったりしていきます。この構図は時代を経て、今の時代にも言えることだなとすごく感じています。三谷さんもおっしゃっていましたが、“今の時代からは考えられない悲劇の歴史”ではなく、現代とも地続きな部分があると思います。
今はSNSが普及し、炎上という言葉もしょっちゅう耳にします。炎上を恐れ、自分が本当に思っていることを素直に言えなかったり、周りの目を気にしてしまったりする人も多いと思いますし、集団の怖さというのも感じます。
赤狩りを勉強していく中ですごく自分たちのことを考えさせられましたし、映画人という表現者がその標的にされたということ、それは今の時代もそうですが、そこでの戦いがあるということはとても重く感じました」
どのキャラクターも愛おしい、三谷作品の魅力

−今回は“コメディではない”と三谷さんも明言されていますが、作品の中で三谷作品らしさを感じる瞬間はありますか。
「やはりそれぞれのキャラクターの個性だと思います。本当にどのキャラクターも憎めないですね。それぞれが正義と守らなければいけないものを抱えていて、戦い方は違いますけれど、それぞれに共感ができると思いますし、人によって共鳴するキャラクターが違うかもしれません。どんなキャラクターであっても愛おしく感じられる部分を書かれるのが三谷さんの脚本の素晴らしさだと思いますし、今回は三谷さんと付き合いの長い俳優陣ということで、当て書きも非常に多いです。脚本を読んでいる時もすでにそれぞれの皆さんの声で自然と脳内再生されました」
−ご自身のキャラクターで、当て書きだと感じる部分はどこでしょうか。
「いざ自分のこととなるとあまり分からないですね(笑)。でも三谷さんが本作で自分に託してくれたこと、自分が担わなければいけない責務は何だろうとは考えます。脚本に、三谷さんからそれぞれの俳優に対するメッセージがたくさん詰まっていると思うので、今回書いてくださった役において、自分にしかできないこと、今の自分だから出せるものというのは大事にしていきたいです」
PARCO PRODUCE 2026『アメリカン・ドリーム』は2026年8月15日(土)から9月13日(日)までPARCO劇場、9月17日(木)から9月20日(日)まで京都劇場、9月24日(木)から9月27日(日)まで札幌市教育文化会館 大ホール、10月1日(木)から10月4日(日)まで岡山芸術創造劇場ハレノワ 中劇場、10月8日(木)から10月12日(月・祝)まで森ノ宮ピロティホール、10月16日(金)から10月18日(日)まで穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール、10月22日(木)から10月25日(日)までキャナルシティ劇場にて上演が行われます。公式HPはこちら

衣装:パンツ ¥35.200 saby / evolve 03-6823-5074
赤狩りについてや当時のハリウッド映画について、様々な学びを深めながら作品と向き合っているご様子が伺えました。赤狩りと言えばアーサー・ミラーの戯曲『るつぼ』が思い浮かびますが、2026年3月に上演された『るつぼ』を観て、いかに現代に通じる作品であるか、まさに今観るべき作品だと痛感しました。きっと本作も“現代とも地続き”であることを強く考えさせられるだろうと思います。表現者が表現することを恐れなければいけなかった時代のこと。しっかりと向き合いたいです。



















