映画の中の登場人物が目の前に現れたら、あなたならどうしますか?モノクロ映画のヒロインと映画好き青年の恋を描いた2018年公開の映画『今夜、ロマンス劇場で』が、2022年に宝塚歌劇団によって舞台化されることになりました。舞台化に先駆けて、作品の魅力を探っていきましょう。

ファンタジックなロマンス映画『今夜、ロマンス劇場で』

映画監督を目指す助監督の健司は、なじみの映画館・ロマンス劇場でとある女性と奇跡の出会いを果たします。その女性とは、健司が毎日観に通っていたモノクロ映画「お転婆娘と三獣士」の主人公であるお姫様の美雪。健治は映画の中の美雪に恋をしていたのです。

突然目の前に憧れの美雪が現れて動転する健司でしたが、モノクロの世界しか知らない美雪にカラフルな現実世界を見せていくうちに、彼女への恋心が強くなっていくのでした。主人公の優しい青年・健司を演じたのは俳優の坂口健太郎さん、お転婆な美しいお姫様・美雪を演じたのは女優の綾瀬はるかさんです。劇中後半に登場する健司の老後の姿は、この映画の公開の4カ月後に亡くなった俳優・加藤剛さんが演じています。

モノクロ映画のお姫様・美雪の秘密とは?

次第に惹かれ合っていく健司と美雪でしたが、美雪には健司と恋仲になれない”秘密”がありました。それは、人のぬくもりに触れると存在が消えてしまうこと。美雪は人の手や唇に触れられないという代償と引き換えに、映画の世界を飛び出してきたのです。

美雪がそこまで危険を犯したのは、毎日劇場へ自分を観に来る健司に会うためでした。愛する人に触れられないという恋人同士にはつらすぎる試練から、身を引いて自ら消滅しようとする美雪。健司が選んだまさかの答えに、胸がキュンとすること間違いなしです。

宝塚だからこそ期待できる見どころが盛り沢山!

『今夜、ロマンス劇場で』を初めてミュージカル化するのは、宝塚歌劇団の月組。これまで数々の名作映画を舞台作品として成功させてきた宝塚だからこそ、映画の中で印象的だった以下の三点は期待せずにはいられません。

一点目は、モノクロ映画のシーンとカラフルな現実世界の使い分け。美雪が初めて健司に出会ったときは美雪の存在だけが色のない白黒の色彩に表現されていたので、舞台上ではどのように色を使い分けるのかが気になります。

二点目は、この映画の目玉と言っても過言ではない美雪の豪華な衣装。お姫様のドレスから1960年代のクラシカルな洋服まで、劇中の美雪の衣装はなんと25種類もあるのです。衣装デザインやヘアメイクも、宝塚流の再現に期待が高まります。

三点目は、舞台化にふさわしい個性豊かな登場人物たち。主演の二人の他にも、銀幕スターの俊籐龍之介や健司に思いを寄せる成瀬塔子など、物語を盛り上げる魅力的なキャラクターがたくさん登場します。彼らがそれぞれどのように舞台の上で動くのか、注目したいところです。

さきこ

月組トップのお披露目公演として上演される今作。少女漫画チックでちょっぴり切ないラブロマンスは、トップのお二人に似合いそうだと宝塚ファンの間でも期待が高まっています。月組公演ミュージカルキネマ『今夜、ロマンス劇場で』は2022年1月から3月にかけて兵庫の宝塚大劇場と東京宝塚劇場で順次上演。ジャズ・オマージュ『FULL SWING!』との2本立て公演です。