2019年秋よりブロードウェイで上演され話題となりましたが、コロナ禍で幻となってしまった伝説のショー『アメリカン・ユートピア』。今回はそのショーを記録・再編集、まるで生のショーを観ているような体験ができる同名映画をご紹介します。

ロックスターが挑んだ幻のブロードウェイ・ショーを鬼才スパイク・リーが映画化

このショーの原案は、1970年代~80年代にかけて活躍したアメリカのバンド「トーキング・ヘッズ」(1991年解散)のフロントマンだったデイヴィッド・バーンが、2018年に発表したアルバム『アメリカン・ユートピア』。同アルバムから5曲、トーキング・ヘッズ時代の9曲など、全21曲を披露するショーへと再構築し、2019年秋からブロードウェイで上演されました。観賞した人々の口コミなどで連日人気となりましたが、コロナの影響で翌年2月にショーは全て中止に。

その内容を、映画『ドゥ・ザ・ライト・シング』など人種問題と向き合ってきた映画監督、スパイク・リーが記録、再編集し完全映画化。50年以上にわたりアメリカの音楽や大衆文化を伝えてきた雑誌「ローリングストーン」が、2020年のベストムービー第3位に選出するなど、映画版も話題となっています。

まずは映画を観て、感じてほしい!混沌な世界で生きる者への人生賛歌

お揃いのグレーのスーツに身を包み、楽器を持った多国籍の演者たちが舞台上を裸足で自由自在に歌い踊るパフォーマンスは、次第に観客たちの心を巻き込んでいきます。ショーの終わりには劇場全体がまるでライブハウスのような熱気に包まれ、映画を観ているこちらも踊りだしたくなる衝動にかられます。

また、バーンはパフォーマンス中に、移民や人種嫌悪、地方選挙の投票率など社会問題に切り込んだ話を観客に語りかけていきます。スパイク・リーが監督を務めている点も含め、この映画を通して伝えたいメッセージを考えさせられる重要なシーンです。もちろん、デイヴィッド・バーンやトーキング・ヘッズの曲を知らなくても、エンターテイメントショーとして楽しむことができます!

おむ

友人から「音楽好きなら絶対に映画館で観て!」と言われたこの作品。筆者はあまりに凄すぎて劇場で泣きました…。もはや映画を観ているというより、生身のショーを観劇しているような感覚です。東京では5月末より公開されましたが、私が観た8月時点でも映画館は満員御礼!復活上映する映画館もあるようなので、お近くの映画館で体感してみてはいかがでしょうか。