シェイクスピア劇の映画版として知られているバズ・ラーマン監督の『ロミオとジュリエット』が今年で公開から25周年を迎えました。若きレオナルド・ディカプリオが演じたロミオ、ジュリエット役のクレア・デインズ、そのほか俳優陣による名演技や、斬新な編集は映画作品としても、今もなお色褪せない名作です。

美しい台詞は、そのままで—映画と原作の違いを考察

「ああロミオ、どうしてあなたはロミオなの?」。本作を知らない人でも、この台詞は聞いたことがあるぞ……なんて人も多いのでは。ミュージカルやバレエなど、さまざまなエンターテインメントで表現されてきた『ロミオとジュリエット』。バズ・ラーマン監督の魔法により、現代版にアップデートされた本作を紐解きます。

あらすじ
モンタギュー家の跡継ぎであるロミオは、敵対するキャピュレット家のジュリエットと恋に落ちてしまいます。激化する両家……許されぬ恋をしてしまったふたりを待ち受ける悲しい運命とは。

舞台はブラジルの架空都市
原作での舞台は14世紀のイタリア、ヴェローナ。本作ではブラジルの架空都市ヴェローナ・ビーチという設定に。このビーチで煙草を吸いながら、哀愁を漂わせるレオ様演じるロミオのシーンには、うっとりしてしまいます。

現代ならではのプロローグ
テレビキャスターが、有名なプロローグを読み上げるシーンから、物語はスタート。「2時間かけてご覧に入れましょう」と締めくくると、モンタギュー家(ロミオの家)とキャピュレット家(ジュリエットの家)が遭遇し、緊迫したムードに。剣での決闘から、銃撃戦にアップデートされた街を巻き込む騒動のシーンは目が離せません。

両家の争い
長年対立していたモンタギュー家とキャピュレット家。マフィアの抗争に設定したことで、ロミオとジュリエットのラブストーリーだけでなく、派手なアクションドラマが楽しめるのも本作の魅力のひとつです。

悲劇のラスト
ロミオが訪れ、毒薬を飲んで死んでしまいます。そして、目覚めたジュリエットが死んだロミオを見つけ、剣で自分を刺して死んでしまうという悲劇。バズ・ラーマン監督は、このラストにも少し手を加え、当時映画館で観た多くの人を泣かせました。

スタイリッシュな音楽が、映画を彩る​​

オープニングから目を引く映像や、豪華キャストによる素晴らしい演技は、ワイルドでエキサイティングな作品に。そんな本作を完璧に仕上げているのが、素晴らしいサウンドトラックです。その中でも、特に印象的なシーンと曲をご紹介します。

Talk Show Host / レディオヘッド
恋に悩み、海沿いでポエムを書き綴るロミオ。そこに流れるこの曲の独特なサウンドが、ロミオの孤独感を演出。

Young Hearts Run Free / キャンディ・ステイトン
キャピュレット家で行われたパーティーで、ロミオの親友であるマーキューシオがこの曲で煌びやかに踊るシーンは、ゴージャスな一幕となっています。

I’m Kissing You / デズリー
ロミオとジュリエットがはじめて出会う重要なシーン。パーティー会場で歌われているこの曲に導かれるようにして、惹かれあうふたりの姿は、心に残る名シーンです。

When Doves Cry / Everybody’s Free(ロザラ)/ クインドン・ターバー
ロミオとジュリエットが信頼し、物語の核となる神父。そこの教会でこの曲を歌う聖歌隊の少年の美声は、一度聞いたら、忘れられません。

25年経っても、古さを感じないバズ・ラーマン監督の『ロミオとジュリエット』。まだ見たことのない人は勿論のこと、すでに見たという人も、改めて見てみてはいかがでしょうか。

菜梨 みどり

ディカプリオの作品のなかで、1番好きな映画です。はじめて見た時の衝撃から、もう25年も経つのかと思いましたが、今見直しても素晴らしい!恋に悩み、恋に生きたロミオの美しさ......。どこを切り取っても美しいのは、シェイクスピアの美しい言葉の響きがあってこそでしょう。長年、時代に合わせて改訂され表現されつづけてきたシェイクスピアの戯曲。バズ・ラーマン監督のつぎに誰が魔法をかけ、どんな仕上がりになるのか、楽しみです。