今年大きな話題を呼んだ演劇作品のひとつ『フェイクスピア』。開幕直後から人気に火がつき、立ち見席が埋め尽くされるほどの大盛況ぶりでした。演劇界を賑わせた『フェイクスピア』を生み出したのは劇作家・演出家・俳優の野田秀樹さん。今回は野田さんや彼が主催するNODA・MAP(野田地図)について書いていきたいと思います。

「演劇人」野田秀樹とは?

「演劇人」という言葉がとにかく似合う野田秀樹さん。言葉遊びを織り交ぜた独創的な台本を作り、演出を手がけたうえ自身も俳優として出演する、そんな上演スタイルを長年続けてきました。

野田さんは東京大学法学部在学中の1976年に「劇団夢の遊眠社」を結成。『野獣降臨(のけものきたりて)』や『半神』など数々の戯曲を創作・上演しました。「夢の遊眠社」の解散後は文化庁の芸術家在外研修制度の留学生として渡英し、ロンドンに滞在。帰国後の93年に演劇企画製作会社「NODA・MAP」を設立し、『キル』『THE BEE』『エッグ』などのオリジナル作品を国内外で発表してきました。

NODA・MAP以外では、現代劇の枠組みを越えて新作歌舞伎やオペラの演出を手がけ、日本の上演芸術を牽引。現在は多摩美術大学の教授や東京・池袋の東京芸術劇場の芸術監督としても活躍されています。

野田地図(NODA・MAP)の舞台の魅力とは。

NODA・MAPの上演作品は全てが作・演出 野田秀樹。野田さんが手がけるその作品群は緻密な物語の構造が印象的です。題材の取り合わせは実に巧み。唐突なシーン転換や脈絡のない台詞など、繰り返される混沌にはじめは戸惑うものの、その全てが結末への布石となっています。振り返るとそこには確かに道があった、というような戯曲の完成度の高さはNODA・MAPの代名詞と言っても過言ではありません。

言葉遊びも野田作品らしさのひとつ。韻や同音異義語を多用したり、同じ台詞を違うシーンで繰り返して新たな意味を与えたりと、言葉の可能性を感じられます。そこに加わる躍動的な演出は、台詞が肉感を持って立ち上がるための起爆剤。舞台を駆け回ったり、スローモーションで動きに制限をかけたり、台詞を発する俳優の身体に負荷をかけていくのは野田さんらしい演出です。筆者が初めてNODA・MAP作品を観劇した際には、限界まで熱量を上げた俳優たちから発せられる言葉のエネルギーに圧倒されたことを覚えています。まさに「血湧き肉躍るコトバ」というものが存在するのだなと感じさせられた瞬間でした。

近年の上演作品は、夢の遊眠社時代からの傑作である『贋作 桜の森の満開の下』やロックバンドQUEENの名曲が彩るラブストーリー『「Q」:A Night At The Kabuki』など。今年は『フェイクスピア』に続き、番外公演として『THE BEE』が上演されました。NODA・MAPにはファンが再演を望む作品も多く、来年はどんな世界へ誘ってくれるのだろうかと期待せずにはいられません。

NODA・MAP第24回公演『フェイクスピア』はWOWOWライブにて12月25日(土)午後3時から放送です。

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Sasha

『フェイクスピア』を観る機会がなかったという方、そしてもう一度観たいという方に朗報!明日、12月25日(土)にWOWOWで放送されます!迫力の本編映像に続けて、主演の高橋一生さん、橋爪功さん、白石加代子さんと野田秀樹さんの限定インタビューも。放送機会の少ないNODA・MAP作品、その貴重な放送機会をお見逃しなく!!!