イングランド国王ヘンリー二世の領土・後継ぎをめぐる争いや、妻と愛妾との駆け引きを描いた『冬のライオン』。ヘンリー二世に佐々木蔵之介さん、妻エレノアに高畑淳子さんを迎え、2月26日より東京芸術劇場 プレイハウスにて開幕します。世界で上演されてきた名作歴史劇でありながら、まるで“夫婦漫才”かのように笑いながら楽しめる作品に仕上がっているようです。
国の領地をめぐる壮大なコント?!関西弁での稽古も
1966年にブロードウェイ初演を迎えた舞台『冬のライオン』。映画化・テレビ映画化もされ、世界の名優が演じてきた歴史劇です。三男のジョンが可愛いヘンリー、長男リチャードをヘンリーの愛妾アレーと結婚させ、王位を継がせようとする妻エレノア、アレーの異母きょうだいである現フランス王フィリップ…。領土や後継ぎを巡り、各々の思惑が入り混じる作品となっています。
…と聞くと、重苦しい舞台をイメージされる方も多いかもしれません。しかし、ヘンリーを演じる佐々木蔵之介さんは「夫婦のやりとりが夫婦漫才のように見える」作品だと語ります。稽古場では笑いが絶えず、演出・森新太郎さんによる提案から関西弁で演じてみたこともあったのだとか。テンポ感を大切にした言葉の応酬に、気づくと引き込まれること間違いなし。ジョンを演じる浅利陽介さんは「1日10笑してしまうくらい、楽しい現場。壮大なコントのような作品」とのこと。ジョンもまるで家族の愛犬のような天真爛漫なキャラクター像で、本作は歴史劇でありながら、家族劇なのだと感じさせられます。
革ジャンやジャケットを着た王族たち
さらに本作で特徴的なのは、歴史劇では珍しい革ジャンやジャケットなどに身を包んだ登場人物たち。「時代ものの作品だからこそ、今の時代に合ったものを」という想いから、各登場人物を象徴する衣装が印象的です。ヘンリーの飾らない性格を表すため、「白いジャージ姿に毛皮のコートを羽織る」という案もあったのだとか。フランス王フィリップ(水田航生さん)は上下真っ白なスーツで、イングランドのファミリーたちとは一線を画します。
それぞれの衣装から、1人1人のキャラクター像や家族の中の立ち位置を考察するのも、『冬のライオン』の楽しみ方の1つ。ラフな格好に王冠をかぶっているヘンリーの姿は可愛らしさすら感じます。佐々木蔵之介さんが「格式ばったイメージを楽しく裏切れる作品になれたら」とコメントした通り、800年以上前の王族の物語というとっつきにくさを取り払ってくれる演出です。
舞台『冬のライオン』は東京芸術劇場 プレイハウスにて、3月15日まで上演予定。詳細は公式HPをご確認ください。
愛妾アレーを演じる葵わかなさんは、意外にもストレートプレイ初出演。人質として育てられ、ヘンリーの愛妾となる特異な立場ながら、言葉の中に美しさと強さを感じさせる佇まいが印象的でした。