劇団四季が作り出す舞台の世界を劇団の歴史と共に知ることができる記念館が、長野県の大町市にあります。劇団創立者である演出家の浅利慶太さんと劇団四季の歩みを展示した「劇団四季 浅利慶太記念館」が、劇団創立70周年に伴い、今年の7月にリニューアルオープンしました。劇団四季ファンの筆者が実際に行ってきましたので、詳しく紹介します。

劇団四季・浅利慶太氏の歩みを年代ごとにたどる展示

「劇団四季 浅利慶太記念館」は、もともと「四季演劇資料館」という名前で、1995年に長野県大町市に開館しました。2016年に「劇団四季記念館」、2020年に「浅利慶太記念館」と名前を変え、2023年7月13日(木)にリニューアル。この日は浅利慶太さんの5回目の命日であり、劇団四季創立70周年の前日でもあります。

以前から記念館の存在は知っていましたが、訪れたことがなかった筆者。劇団四季の記念すべき年、大切な日に新たに開館すると知り、「行くなら今だ!」と思い立った次第です。

リニューアルオープンを機に展示が見直され、劇団四季と浅利慶太さんのこれまでの歩みを年代順に知ることができる内容になりました。

2階建ての館内には、舞台の模型、実際に使われた衣装や小道具、台本など、貴重な資料が沢山!入り口には浅利さんのレリーフと浅利さんが稽古場で愛用していたという黒い椅子が置かれ、ファンとして神聖な気持ちになります。

1階の展示は劇団四季の歴史を辿る内容です。

浅利さんら10人の若者によって旗揚げされ、資金繰りが厳しい中ストレートプレイを上演した創立期、日生劇場公演から始まったミュージカル時代の幕開け、浅利慶太事務所の設立やオリジナル作品への取り組みなど、劇団の今と昔が丁寧に解説されています。

アンドリュー・ロイド=ウェバー作品のコーナーでは、『キャッツ』の名物であるゴミオブジェが飾られていました。横浜、大阪、北海道など地方ごとの劇場でしか見られないご当地ゴミが同じ場所に隠れているのは、きっとこの記念館だけなのではないでしょうか?

ディズニーコーナーでは至近距離で『ライオンキング』の衣装とマスク、パペットが見られるため、劇団の知識に自信がないという方でも十分に楽しめるはずです。

2020年以降に生まれたオリジナルミュージカルの資料も展示されていて、『ロボット・イン・ザ・ガーデン』のタングとカイルのパペットがまるでお喋りしているように仲良く並んでいました。

見学中は、自身のスマホで聞くことができる音声ガイドを無料で利用できます。

ガイドの声は、『ノートルダムの鐘』のエスメラルダ、『マンマ・ミーア!』のドナ役を演じている岡村美南さんと、『ウエストサイド物語』のリフや『クレイジー・フォー・ユー』のボビー役などで知られる荒川務さんです。

なぜ長野県大町市に劇団四季の記念館があるのか?

2階の展示は、浅利慶太さんの学生時代から劇団四季発足までの歩みと、劇団以外での活動についてをメインに紹介しています。

浅利さんは1998年2月に開催された長野冬季オリンピックにおいて開閉式の総合プロデューサーに就任し、式典の演出を担当しました。展示によると、開会式は善光寺の鐘の音から始まり、アンドリュー・ロイド=ウェバー作曲によるテーマソングが披露され、小澤征爾さんの指揮のもと、世界各国との同時中継による大合唱が行われたのだとか。浅利さんらしい画期的なセレモニーだったようですね。

そもそも、「なぜ劇団四季と浅利慶太さんの記念館が長野県大町市にあるのだろう?」と疑問に思った方もいるのではないでしょうか?

浅利慶太さんの出身は東京都。しかし実は幼い頃、太平洋戦争によって軽井沢に疎開していたそうです。子供の頃に過ごした北アルプスの自然に心を動かされた浅利さんは劇団四季を創立後、軽井沢に稽古場を設けようとします。場所を探したとき、知人に紹介された大町市を大変気に入り、最終的にこの地を稽古場に選んだのです。

記念館は「四季演劇資料センター」の中にあり、同敷地内には舞台装置や衣装を保管する巨大倉庫も設けられています。浅利さんと深い繋がりを持つ大町市から劇団四季の歴史が発信され、実際の舞台作りにも関わっているのですね。

「劇団四季 浅利慶太記念館」は、11月26日(日)まで開館中。毎週月曜日が休館日となっています。詳しくはこちらをご覧ください。

さきこ

「劇団四季 浅利慶太記念館」は山と川に囲まれた雄大な自然の中にあり、車で向かう途中に美しい景色を楽しめました。 記念館を見に長野県を訪れた際は、浅利慶太さんが少年時代に感動したという信州名物の野沢菜の美味しさも、ぜひ体験してみて下さいね。