新国立劇場にて2023年10月に交互上演される『尺には尺を』『終わりよければすべてよし』。シェイクスピアのダークコメディと呼ばれる2作を交互に上演するという前代未聞な挑戦に、岡本健一さん・浦井健治さん・中嶋朋子さん・ソニンさんらが挑みます。演出・鵜山仁さんと全キャスト19名が制作発表会に出席しました。

人間は必ず過ちを犯す。それを愛が救済できるか

2009年『ヘンリー六世』から2020年『リチャード二世』まで、演出を鵜山仁さん、岡本健一さん・浦井健治さん・中嶋朋子さんら俳優が同一の役を通して演じ、スタッフもほぼ同じメンバーで作られた「新国立劇場シェイクスピア歴史劇シリーズ」。『リチャード二世』では第28回読売演劇大賞 最優秀作品賞を受賞するなど、話題を呼んだカンパニーが新たに挑むのは、シェイクスピアのダークコメディ『尺には尺を』『終わりよければすべてよし』の交互上演。

『ヘンリー六世』以来、14年ぶりに新国立劇場シェイクスピア作品の出演となるソニンさんや新キャストも迎え、表裏一体のような2作品を同公演期間内に描き出していきます。

制作発表会では『尺には尺を』でメインの役を演じるキャストは黒、『終わりよければすべてよし』でメインの役を演じるキャストは白の衣装で登場しました。

2作品の共通点は「問題劇」とも呼ばれるダークコメディであることと、女性が物語の主軸であること。またシェイクスピアが同時期に執筆したと推測されている2作品でもあります。2作品について、「人間は必ず過ちを犯す。それを愛が救済できるかというテーマと同時に、演劇は世界を救済できるかというテーマにも繋がっている」と語ったのは、演出の鵜山仁さん。

『尺には尺を』でアンジェロ、『終わりよければすべてよし』でフランス王を演じるのは、岡本健一さんは、2作品のタイトルに惹かれたと言います。「何の尺なのか、誰にとっての尺なのか興味が湧きました。また、色々な世の中の流れがある中で、なんとか“終わりよければすべてよし”に進んでいけばいいなと思います」とコメント。また新国立劇場での上演ということで、「若い人から年配の方まで、演劇を始めて見る方にも楽しんでいただきたい。作品の中では国を動かす人たちが出てくるので、ぜひ日本の政治家の方にも劇場に足を運んでもらいたい」と力を込めました。

『尺には尺を』でクローディオ、『終わりよければすべてよし』でバートラムを演じる浦井健治さんは、「鵜山さんから“佐藤B作さんが演じたフォルスタッフのような”という言葉があったり、作品が続いていることに意味があるんだなと感じる」とコメント。「演劇は続いていく」ということを実感していると語りました。

『尺には尺を』でマリアナ、『終わりよければすべてよし』でヘレナを演じる中嶋朋子さんは、14年ぶりに新国立劇場シェイクスピア作品に出演するソニンさんについて、「『ヘンリー六世』ではジャンヌ・ダルク役で、切込隊長のように“これはどういうことですか?!私はこう思うんです!”といつも質問していて、元気なお嬢さんだったんです。それによってみんながどんどん自分のものを発見するために発言する突破口になっている気がしていました。今回の稽古場でも鵜山さんとマンツーマンでやり合っているのを見ていると、“あぁ始まった!”とワクワクしています」と笑顔で語ります。

これにはソニンさんも「恥ずかしいです!大人になったつもりなんですけど(笑)」と照れながら、「14年前、体の中をお芝居で埋め尽くされている濃度の高い人たちに囲まれるのが本当に楽しくて、芝居を愛する現場が幸せで幸せでたまらなかったのを記憶しています。今回の稽古場でも異次元で贅沢な現場にいられることを、体中が喜んでいて、戻ってこられて本当に幸せです」と喜びを語りました。ソニンさんは『尺には尺を』でイザベラ、『終わりよければすべてよし』でダイアナを演じます。

木下浩之さんが「劇団公演のようにベッタリでもなく、1公演ずつのプロデュース公演のようなよそよそしさもなく、強いて言えば14年続いた遠距離恋愛の相手と久しぶりに再会するような胸のときめきを感じさせてくれるメンバー」だと表現した、信頼と絆の深いカンパニーが織りなす『尺には尺を』『終わりよければすべてよし』。10月18日から11月19日まで、新国立劇場 中劇場にて上演されます。

出演は、岡本健一さん、浦井健治さん、中嶋朋子さん、ソニンさん、立川三貴さん、吉村 直さん、木下浩之さん、那須佐代子さん、勝部演之さん、小長谷勝彦さん、下総源太朗さん、清原達之さん、藤木久美子さん、川辺邦弘さん、亀田佳明さん、永田江里さん、内藤裕志さん、須藤瑞己さん、福士永大さん。作品公式HPはこちら

Yurika

『終わりよければすべてよし』では浦井さん演じるバートラムは、作品の終盤で中嶋朋子さん演じるヘレナに対して「塩をかけられたナメクジのようになってくれ」という演出があったのだとか。鵜山さん独自の演出で作られる2作品がどのように仕上がるのか、期待が高まります。