2月6日(火)から明治座創業150周年ファイナル公演として上演される『メイジ・ザ・キャッツアイ』。時代を超えて愛され続ける「CAT‘S♥EYE」を原作に、脚本 岩崎う大さん(かもめんたる)、演出・共同脚本 河原雅彦さん、藤原紀香さん・剛力彩芽さん・高島礼子さん主演で上演。作品の舞台を明治時代に移した新たな物語となります。華やかな製作発表で早くも注目を集めた本作の見どころ・演出のポイントについて、河原雅彦さんにお話を伺いました。(参考:「脚本を読んだら、瞳が空を飛んでおりました」明治座創業150周年ファイナル公演『メイジ・ザ・キャッツアイ』製作発表リポート)
『キャッツアイ』と演劇は相性が良い
−本作は北条司さんによる漫画「CAT‘S♥EYE」を原作にしたオリジナル作品となります。原作のどのような部分を大切にしようと考えられましたか?
「喫茶店で働いている美人の3姉妹が、お父さんのために泥棒をやっているという基本設定をもとに、ラブコメの要素もある作品ですよね。改めて原作を読み返してみて思ったのは、良い意味で“結構でたらめだな”ということです。例えば金髪のカツラを被って外国人のフリをする瞳はどう見ても瞳なのに、瞳の恋人で刑事の俊夫は全く気づかないんですよ。そういったでたらめさ、おおらかさがこの作品の魅力だと思いました。個人的に、最近はエンターテイメントをやるにあたって息苦しさを感じることもあるのですが、この題材は1980年代という時代の空気も相まって、逆に、今やるに相応しいケレン味に溢れた作品だと感じています」
−矛盾点を追求せずに楽しめる“でたらめさ”は、作品の空気感につながりますね。
「それが演劇との相性も良いと思うんですよね。ビルからビルに飛び移るのも、あっという間に着替えているのも、映像なら編集で出来るけれど、演劇ではそうはいかない。演劇が持っているマジック…というと大袈裟ですが、演劇的な見せ方に置き換える必要があるし、だからこその面白さがあります。“こんな表現、演劇でどうやるの?”というものの方が、僕は演劇には向いていると思うんです。演劇脳を駆使して作ることで、舞台版特有のオリジナリティもわんさか生まれますしね」
−今回はそこに明治時代という要素も加わりますね。
「明治時代というのは重要なコンセプトですよね。衣裳など見た目的な部分もそうですし、恋愛観も現代とは違うと思うんです。原作でも瞳と俊夫は早くくっつけば良いのに、という焦ったさがありますが、明治時代の設定だと、そこがより焦ったくなるでしょ?恋愛模様だって、手をつないだりキスしたりとか、現代とは全然重さが違う。そういう置き換えをしてこその『メイジ・ザ・キャッツアイ』だし、お客さんにも楽しんでいただきたいポイントだったりします」
−小道具やセットも明治時代をベースに作られていくのでしょうか。
「そうですね。例えばキャッツアイはカードで犯行予告をしますが、カードと明治時代って合わないですよね。じゃあ木札はどうか?とか。1つ1つ置き換えていくことで、レトロでありながらも斬新なキャッツアイが提示できると思います。でも今上演するからこそ、新しい要素も入れるべき。だから振り付けは元・東京ゲゲゲイの水木マリエさんにお願いしました。音楽もこの作品の代名詞とも言えるアニメの主題歌「CAT’S EYE」に、時に明治風アレンジ、時に現代風アレンジというふうに、バランスを見ながら自由に創らせてもらっています」
ここまで望んでいないよと思うくらい、圧倒的なエンターテイメントを
−エンターテイメント性の高い作品になりそうですが、脚本を岩崎う大さんが務めるというのは意外な印象でした。
「斜め上からの発想が欲しかったんですよ。『キャッツアイ』ってもはや古典とも言えるじゃないですか。錚々たるキャスト陣ですし、ベタに話をまとめてしまうこともできるのですが、古典を逆手にとって面白がる意外性が欲しいなと思ったんです。でもう大さんは思いのほか『キャッツアイ』が大好きになっちゃったみたいで意外にちゃんと『キャッツアイ』を書いてきたんですけど(笑)。でも台詞の掛け合いの節々にう大さんの色が当然出ているから、独特さもあります。とはいえ出演者の皆さんに台本を渡す時、実はちょっと反応が怖かったです。でも楽しんで読んでくれているみたいなので良かったですね」
−生澤美子さんが衣裳を手がけられますが、やはり早着替えは見どころになりそうでしょうか。
「やっぱりキャッツアイは名泥棒ですからね。変装を控えてくれたら着替えなくて良いんだけれど(笑)。化けて盗んで、また元の姿に戻らなきゃいけないので、早着替えはかなり多いです。それに藤原紀香さん・剛力彩芽さん・高島礼子さんの3姉妹には、素敵な衣裳をいくつも着てもらいたいじゃないですか。そういった意味でもエンターテイメント性の高い舞台になると思いますよ。出演者の皆さんは舞台袖で着替えてばかりで想像以上に大変だと思いますが…瞳は空も飛びますしね。でもそのバタバタ感もまた演劇の醍醐味ですし、どうなるのか楽しみですね」
−河原さんの演出というと、『ルードヴィヒ~Beethoven The Piano~』の薔薇の花びらが舞い落ちるシーンや、『After Life』で大量の靴が天井から一斉に降ってくるシーンなど、ハッとさせられる絵作りが印象に残っています。そういった場面は意識して創られているのでしょうか?
「意識します。物語の中の起伏のどこかに大きなカタルシスを入れようと考えた時に、ビジュアル化することでカタルシスを増幅させて見せる。お客さんをハッとさせる要素というのを、僕は作りがちですね。今回も、瞳が空を飛ぶ以外にも、これが実現したら相当面白いかもな、という要素は、用意してあります。大体1作品に1箇所、そういった遊び心を入れられるシーンがあるものですが、この作品は随所に、遊べるところがありますね。ここで終わっても良いんじゃないかと思うくらい盛り上がるシーンがいくつもあるので、仕込みすぎたんじゃないかと不安な気持ちもあります(笑)。それはここから調整していきます」
−ますます楽しみになってきました。エンタメ要素がかなり盛り込まれていそうですね。
「確かにショー要素が多く、何も考えずに笑って驚いて感動して・・・的な作品ですが、これは自分の気質ですけれども、そこにはクオリティの高さがないと僕は楽しめないんです。賑やかに歌ったり踊ったりしてたらショーっぽいねというのではなく、ハイクオリティのステージングや衣裳、音楽、俳優さんの芝居があって、終始バカバカしく本気で遊んでいるというのが一番の理想系。目指すは、お客さんがここまで望んでいないよと思うくらい、圧倒的なエンターテイメントですね。せっかく『キャッツアイ』をやれるんだから、『キャッツアイ』に甘えないように、演劇の作品として面白いものを見せたいです」
明治座創業150周年記念ファイナル公演 舞台『メイジ・ザ・キャッツアイ』は2月6日(火)から3月3日(日)まで明治座にて上演。2月12日(月)17時公演では河原さんがゲストで登壇するアフターイベントも行われます。チケットの詳細は公式HPをご確認ください。
Audience Award 2022では演出部門で大賞を受賞された河原さん。観客の心を掴む演出がどのように創られているのかが垣間見えるインタビューとなりました。