俳優・小野田龍之介さんの連載企画「小野田龍之介と春夏秋冬さんぽ」。季節を感じる場所をお散歩しながら、ミュージカルのことはもちろん、小野田さんの近況やこれまでについて様々な視点で掘り下げていきます。第1回目のテーマは「はじまり」。連載のスタートであり、新生活の始まりでもある4月に、最近始めたことから、新しいことを始める時のコツなどを伺いました。

ミュージカルの本番が始まって思うこと

−取材時はミュージカル『20世紀号に乗って』の本番期間中。前回のインタビューでは稽古期間中にお話をお伺いしていましたが、本番が始まってみていかがですか。
「コメディ作品はお客さんが入ってみてどう盛り上がるか、どう受け入れられるかというところが大切なので、実際に始まってみると“こういうところで笑ってくれるんだな”“意外にここは反応が少ないな”と発見がありますね。全体的にアトラクションに乗っているような感覚で楽しんでもらえたら良いなと思っていて、その感じは舞台上で感じるので嬉しいです」

−手拍子が起こって盛り上がるシーンもありますよね。
「リピーターの方もたくさんいらっしゃるだろうし、何回か観ることで楽しみ方を見つけてくれているのかなと思います。そういう意味でショーっぽさもあって、こういう演劇のジャンルはこれまであまりやることがなかったので、楽しくやっています」

−本番が始まったからこそ、気をつけていることは?
「ドライブ感を失わないようにすることが1番です。演出のクリスが間や変なルーズさを本作では嫌っていて、ポンポンポンポン、考える前に口を動かすように心がけてくださいと言われていたんです。あえて間を取る部分以外はテンポ感が欲しいと言われていて、でも長く公演をやっていくとなんとなくルーズに流れてしまいそうになる瞬間がどうしてもあるので。そういうことがないように、ドライブ感を持ってやろうというのはキャストみんなで心がけているポイントです」

−公演数を重ねていくことで新たな発見はありますか?
「こういう遊び方もあるな、違うアプローチも出来るなと感じることはありますよ。演出の意図は外さないよう、ドライにジャッジしながらやるのは難しいですが、楽しく挑めていますね」

−増田貴久さん演じるオスカー、上川一哉さん演じるオーエンとの“三銃士”の絡みは日々進化があるように見えました。
「やりとりというより、聞き方や喋る瞬間の角度とかを自分の中で調整することが多いです。例えば昨日まではオスカーの方をしっかり向いて話を聞いていたけれど、ここまで体を向けて聞いていなくても良いかなとか。自分がどうセリフを言うかより、何かが起きている時に自分がどういるかというのは、遊べるポイントでもあるので色々やってみていますね」

−なるほど。それは作品に関わらず、でしょうか。
「作品に関わらずそうかもしれない。ミュージカルは歌のリズムやテンポは決まっているので、どう歌うかは変えられないけれど、聞き方を変えることでセリフの雰囲気が変わってくるので。自分がやることを変えるというより、聞き方を変えることで出てくるセリフが変わる、その瞬間を楽しめたらいいなと。もちろん的確に演じることは守った上で、ですけど。僕は制限がある方が好きで、制限がある中で遊ぶのって難しいけど楽しいんですよね。そこでいかに自分がアプローチできるかというのはやりがいを感じますね」

−小野田さんは『マリー・アントワネット』『メリー・ポピンズ』『マチルダ』、そして『20世紀号に乗って』と近年は毎年春に東急シアターオーブでの上演作品に出演していらっしゃいますね。
「僕はシアターオーブ大好きなんです。『メリー・ポピンズ』ではメリーがあの高さを飛ぶってすごい感動しますよね。稽古中に3階からあのシーンを見てみたんですけど、メリーがここまで来てくれた!って嬉しくて。シアターオーブならではの演出が叶うので、とっても好きです。シアターオーブで出た作品はどれも大切な作品ばかりですし、毎年同じ時期に1つの劇場に出ることってないので、嬉しいですよ。僕は楽屋も毎回決まっているので、落ち着く場所になっています」

ダンスを始めた瞬間から、人生が決まった

−4月は新生活を始める人も多いですが、小野田さんが今始めたいことはありますか?
「始めなきゃいけないことは、ありますよね…(笑)」

−スケートですね?(『氷艶2024 −十字星のキセキ−』にご出演)
「スケートです。スケーターの方々がいらっしゃるのでそこまで滑れるようになる必要はないのですが、マイシューズも作っているので、やっぱりある程度は取得したいですよね。実は、中学生くらいの時にスケートにハマって放課後に友達とよく行っていたんですよ。だから子どもの時の心を思い出して、懐かしくなりました。ただあの頃とは違って怪我にも気をつけながら…。普段、芝居している時って大地に立っている感覚がすごくあるので、そこの違いはどうするのか。現実的な感覚がないまま、どう芝居するのかはこれから探っていかなきゃいけないですね」

−プライベートで始めてみたいことはありますか?
「ゴルフ始めてみたいです!ゴルフクラブすら持ってないんだけど(笑)。自然の中で出来る趣味って良いなぁと思って。ゴルフの後に温泉も入って美味しいものも食べられたら、充実するだろうなと。毎日6時には自然と目が覚めちゃうので、早起きも出来ると思います。あとは最近好きなサウナに行けていないので、再開したいですね」

−始めたことで、人生が変わったことは?
「ダンスですね。人生変わったというか、決まっちゃった。ダンスを始めた瞬間からこの芸能の世界で生きていくんだなと思って、アルバイトも他の仕事も経験したことがないので。ディズニーのショーに出て人を楽しませる人間になりたいなと思ってダンスを始めたら、そこがミュージカル系のスタジオで。そこからすっかりミュージカルの世界にハマっちゃいましたね」

−小さい頃に始めて、辞めたいと思ったことはなかったのでしょうか。
「1回もないんですよ。自分がやる・やらない関係なく、エンターテイメントが好きだからでしょうね。しんどいとかはあるけれど、辞めたいというほどネガティブな気持ちになったことがなくて。僕が辞めたいと思う時が来るとしたら、全てのエンターテイメントを嫌いになる瞬間だと思います」

辛い自分を受け入れて、抱きしめる

−俳優という職業で考えてみると、作品ごとに毎回新しいカンパニーになり、数ヶ月ごとに新生活が始まるとも言えますよね。新生活が始まる時、心がけていることはありますか?
「心がけるというよりは、楽しみしかない。色々な価値観の人間が集まって創作活動をしていくわけじゃないですか。とにかく楽しめる数ヶ月にしたいなと思いますね」

−会社で働いている人の中には、部署が変わったりメンバーが変わったりすることに対して不安に感じる方もいると思います。
「僕は逆かもしれない。仲の良い人とばかり喋るより、初めて共演したり、久しぶりに共演したりする人と喋るようにしていますね。興味があるんですよ、どういう人なんだろうなと。価値観が合うか違うかも、接してみないと分からないじゃないですか。だからとにかくまずは接してみますし、人となりを知っていくのが面白いです。新たな世界には飛び込んでいくタイプですね。何も知らないのに“この人合わないかも”と二の足を勝手に踏んじゃう時間がもったいないから、まず飛び込んでみます。自分のために飛び込む環境を作るというか。自分のためと思えば、なんでも出来るかな」

−小野田さんは共演者の方々とすぐに打ち解けられているイメージがあります。
「でも本当はめちゃくちゃ人見知りなんですよ。だからこそアクセル全開で、接するようにしているんです。子どもの頃から仕事をしているので、それも影響しているかもしれないですね」

−人見知りとは意外でした!それでも自分が心地よく過ごすために、飛び込んで行かれているのですね。しかも1年間に何度も。
「その分出会いが多いから、宝も増えますね。それを楽しんだもの勝ちかなと思っています」

撮影:山本春花、ヘアメイク:野中真紀子、スタイリスト:津野真吾(impiger)
衣装:ポンチョシャツ¥42,900-/ユリウス 他、スタイリスト私物

−小野田さんのように新生活をすぐに楽しめる人もいれば、なかなかポジティブに切り替えられない人もいます。新生活に悩んでいる人も多い時期だと思うのですが、アドバイスするとしたらどのような言葉を掛けられますか?

「やりたくないことや、嫌だなと思う自分を、受け入れる。“やりたくないけどやるか”とか“行きたくないけど行くか”って僕もたまに自分に言うんですよ。自分の感情を自分自身が受け入れて抱きしめてあげると、少しハッピーになれる気がします。頑張らなきゃ、頑張らなきゃとばかり思っていると、気付かないうちに自分で自分を苦しめている瞬間もあるだろうから。心の中で思っているだけだと胸が詰まってくるから、“辛いな。辛いけどやるか”と声に出して自分に言ってみるのがおすすめです。最後は“やる”と前向きな言葉にしてみてください。

あと自分の好きなことや熱中していることは、絶対に手放さないこと。それが生き甲斐じゃないですか。僕も俳優は非常に大変な仕事で、心も体も声も使ってしんどい時もあるけれども、エンターテイメントが好き、演劇が好きという気持ちがあるから、熱中できる。それは幸せなことですし、自分が熱中しているもの、推しているものは大事にして欲しいです」

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Yurika

小野田龍之介さんの「小野田龍之介と春夏秋冬さんぽ」は4月から毎月連載となります!撮影日はとっても穏やかな晴れた日で、桜や菜の花に囲まれて和やかな表情を見せてくださいました。来月もお楽しみに。

小野田龍之介と春夏秋冬さんぽ

小野田龍之介と春夏秋冬さんぽ

連載(7本)