伝説的ミュージカル作家のジョナサン・ラーソンの代表作といえば、『RENT』。そんな彼が『RENT』を作る前の、夢を追う姿を描いたミュージカル『tick, tick…BOOM!』が、2024年秋に薮宏太さん主演で上演されます。
時限爆弾の音、刻一刻と迫る30歳
『tick, tick…BOOM!』は、ミュージカル作家としての成功を夢見て創作に励むジョナサン・ラーソンの葛藤と溢れる才能を、恋人や親友との交流を踏まえて描いた自伝的作品。1990年にジョナサンの1人芝居として執筆された時の当初の題名は、『30/90』でした。
20代のうちに成果を残したいけれど、29歳のジョナサンは1990年に30歳の誕生日が差し迫っていて…。タイムリミットに焦る様子を時限爆弾の音に例え、最終的に『tick, tick…BOOM!』というタイトルになりました。
伝説的ミュージカル作家が”成功する前”の焦りが綴られた音楽
『RENT』の作曲ではロックをベースに、ゴスペルやR&Bなど様々な曲調を取り入れたジョナサン・ラーソン。本作では彼の未来への焦りや日常の中で荒ぶる感情が、ロック調のミュージカルソングで綴られています。
タイトルの初期案であった『30/90』は、オープニングナンバーの曲名に起用されました。疾走感あふれるメロディの中に、周りから「ハッピーバースデー」と言われても、泣きたい気分になってしまうというジョナサンの苦悩が歌われている1曲です。
ジョナサンがアルバイト先のダイナーで歌う「Sunday」は、店の混雑で忙殺される様子を歌った歌詞と、爽やかな曲調の対比がユニーク。この曲は、ジョナサンの創作活動に多大な影響を与えたスティーブン・ソンドハイムのミュージカル『サンデー・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ』をリスペクトしたものです。
オフブロードウェイで上演、日本公演は過去にも
こちらの記事で詳しく紹介されているように、ジョナサン・ラーソンは1996年に35歳の若さで亡くなってしまいます。未完成だった『tick, tick…BOOM!』は彼の亡きあとに3人芝居のミュージカルとしてリメイクされ、2001年にオフブロードウェイで上演されました。
その後イギリス、カナダなど海外でも上演されるようになり、日本では2003年に初演。『RENT』でマーク役を務めた山本耕史さんがジョナサン役と演出・訳詞・翻訳を手掛けました。
また昨年は、渋谷を拠点に活動する渋谷ユニバーサルミュージカルが、オフブロードウェイミュージカル『tick, tick…BOOM!』を上演しています。2021年にアンドリュー・ガーフィールド主演の映画版も公開され、日本でも、本作が『RENT』と並ぶジョナサンの代表作として浸透しつつあるようです。
薮宏太×梅田彩佳×草間リチャード敬太(Aぇ!group)の3人芝居に注目!
2024年公演の演出を務めるのは、ブロードウェイで『RENT』のエンジェル役を演じ、同作の日本公演でリステージを担当したアンディ・セニョールJr.さん。翻訳と訳詞は、『ビリー・エリオット』や『20世紀号に乗って』など数多くのミュージカル作品に携わる高橋亜子さんです。
新作ミュージカルの試演会に挑む若き日のジョナサン・ラーソンを演じるのは、薮宏太さん。Hey!Say! JUMPのメンバーである薮さんは、これまで高橋さんが手掛けたミュージカル『ハル』と『ジョセフ・アンド・アメージング・テクニカラー・ コート』においても、主演の経験があります。
ジョナサンの恋人スーザン・ウィルソン役には、元AKBで『Endless SHOCK』のヒロイン役を3年連続で演じた梅田彩佳さん。スーザンはダンサーを志していたキャラクターで、ダンススキルに定評があり、ダンスバトルの審査員を務めたこともある梅田さんにぴったりです。
ジョナサンの親友で俳優の夢に見切りをつけ、ビジネスマンに転身したマイケルは、今年5月にCDデビューを果たしたAぇ!groupの草間リチャード敬太さんが演じます。2022年に『EDGES―エッジズ―2022』に出演して以来、草間さんにとって2度目のミュージカル出演です。
薮さん、梅田さん、草間さんの3人芝居で展開する本作。ジョナサン・ラーソンが生み出したキャッチーな楽曲を3人がどのように歌い上げるのか、注目したいですね。
ミュージカル『tick, tick…BOOM!』は、2024年10月6日(日)から31日(木)まで日比谷シアタークリエにて上演。東京公演のチケットの一般発売は、各社プレイガイドにて8月10日(土)からです。
11月3日(日・祝)から4日(月)には愛知公演、11月7日(木)から11日(月)には大阪公演が開催され、両公演のチケットの一般発売は10月6日(日)からとなります。チケットの詳細につきましては、作品公式HPをご覧ください。
ジョナサンのことを「年齢を重ねることに焦りながら夢を追う若者」として見ても、「名作『RENT』の生みの親」として見ても楽しめる本作。 ジョナサン・ラーソンや『RENT』をよく知らないという方にも、興味を持っていただけたら嬉しいです。