2000年に東宝版初演を迎えて以来、何度も上演されてきた大ヒットミュージカル『エリザベート』。今年は、タイトルロールであるエリザベート役に新キャストを迎えた上演が決定しています。観客の心をつかんで離さないミュージカル『エリザベート』の魅力とは。

“自分らしく気高く生きる” 皇后エリザベートの人生

この作品では、皇后エリザベートが様々な問題に直面しながらも、自由を求め自分らしく生きようとする姿が描かれています。その生き様こそが、多くの観客の心を惹きつける理由のひとつでしょう。

今回そんな皇后エリザベートを、新たに望海風斗さんと明日海りおさんの二人が演じることになりました。望海さんは宝塚歌劇団雪組のトップスターとして活躍。退団後は『next to normal』『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』などの作品に出演し、読売演劇大賞優秀女優賞や菊田一夫演劇賞を受賞するなど、ミュージカル界に欠かせない存在となっています。

明日海さんは宝塚歌劇団の花組トップスターを5年半という長期間務め、退団後は『王様と私』『昭和元禄落語心中』などのミュージカル作品はもちろん、『おちょやん』『下剋上球児』などのドラマ出演や映画『ムーラン』の吹き替えを務めるなど、舞台という枠に留まらず幅広い分野で活躍されています。

そんな二人は宝塚歌劇団の同期で、宝塚音楽学校時代には同じ部屋で生活を共にしたこともある間柄。また宝塚歌劇団時代には、『エリザベート-愛と死の輪舞-』にそれぞれトートとルキーニとして出演し、すでに本作の世界観を経験済みです。かつて男役としてこの作品と向き合った2人が、今度は皇后エリザベートとしてどのような姿を見せてくれるのか、観客の期待は高まります。

またエリザベートを死へと誘う黄泉の帝王トート役は、古川雄大さん(全公演地)、井上芳雄さん(東京公演)、山崎育三郎さん(北海道・大阪・福岡公演)の豪華実力派キャスト3名が揃います。

物語をドラマチックに彩る名曲の数々

作曲家シルヴェスター・リーヴァイが紡ぐメロディーは、一度耳にすると記憶に残る曲が多く、物語の中で生きる人物たちをより生き生きと、ドラマチックに描き出します。

1幕の見せ場の一つである「最後のダンス」。華やかな舞踏会から一転、死の象徴であるトートが現れ、“最後にエリザベートを手に入れるのは俺だ”と高らかに宣言しながら歌うナンバーです。怪しくも力強くそしてエリザベートを振り回しながら歌う様は、客席を圧倒しトートの存在感を示す絶好のナンバーです。

そして“自分自身は誰かの所有物ではなく、私だけのものだ”と力強く歌う「私だけに」。皇后となったエリザベートでしたが、結婚後の生活は、宮廷の厳しいしきたりや姑であるゾフィーとの確執などに苦悩することになります。そんな中でエリザベート自身が、1人の人間として生きて行きたいと決意する時に歌う一曲。「例え王家に嫁いだ身でも 生命だけは預けはしない 私が生命 委ねる それは 私だけに」という最後のフレーズには、心を揺さぶられた方も多いのではないでしょうか。

「闇が広がる」も人気のある一曲。政治的思想において父であるフランツと対立をし、心が揺らぎ、不安を抱える皇太子ルドルフに“立ち上がれ 未来の皇帝陛下”とトートが奮い立たせるように歌う曲です。ミュージカルでは珍しい同性同士が歌うナンバーで、特にトートとルドルフの声が重なり合って歌うサビの部分は、力強さに圧倒されてしまいます。

ほかにも「私が踊る時」「キッチュ」「夜のボート」など、魅力的な曲が多いこの作品。登場人物の感情や運命を鮮やかなものにし、物語に深みと力を与えてくれる楽曲たちに注目して、観劇してみてはいかがでしょうか。

ミュージカル『エリザベート』は、10月10日(金)~11月29日(土)まで東京・東急シアターオーブ、12月9日(火)~18日(木)まで北海道・札幌文化芸術劇場hitaru、12月29日(月)~2026年1月10日(土)まで大阪・梅田芸術劇場メインホール、1月19日(月)~31日(土)まで福岡・博多座にて上演されます。詳しくは公式ホームページをご覧ください。

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初めてこの作品を見たとき、独特な世界観とそれらを作り上げる音楽、そして自分らしく生きていこうとするエリザベートの姿に心を揺さぶられました。特に「私だけに」のナンバーは、彼女の生き様をまさに表したような曲で、落ち込んだ時や勇気が欲しいときに聞き返して自分自身を奮い立たせている曲の一つです。