第一次世界大戦の中、ダンサーとして脚光を浴びフランスのスパイとなった実在の人物マタ・ハリ。戦争の中で自分の人生を生きようともがき、また美しく舞い続けた姿は、史実に脚色を加えてミュージカル『マタ・ハリ』として韓国で誕生しました。2021年日本版の観劇リポートをお届けします。(2021年6月・東京建物Brillia HALL)

美しく強い女性マタ・ハリを元宝塚トップスター柚希礼音が好演

辛い過去を乗り越え、エキゾチックなジャワのダンスで世界中を虜にしたマタ・ハリ。2018年の初演でもマタ・ハリ役を演じた柚希礼音さん(今回は愛希れいかさんとのWキャスト)は、圧倒的な存在感で彼女の強さと美しさを表現。さすがは元宝塚トップスター、ピンスポットが彼女を照らすとその輝きは倍増。マタ・ハリに世界中の人々が夢中になった理由が理解できます。

一方で、印象に残ったのは舞台全体を通して感じる戦争に対する市民のやるせなさ。平凡な日常すら送れない、大切な人が戦場に行けば生きて帰ってくる保証はほぼない。そんな暗い世の中で、未来の見えない日々を過ごしていた人々。いつになれば、自由に「普通に」過ごせるようになるのか。そんな苦悩は、コロナ禍の今の世の中にも重なります。マタ・ハリは戦争の中で悲劇に巻き込まれることになりますが、最後まで自分らしく、美しく生きようとします。その姿にどんな時代でも自分らしく生きる強さをもらえます。

宝塚スターとバレエスター圧巻のダンスに注目!

圧巻だったのは、2幕冒頭での柚希礼音さんとバレエダンサーであり俳優としても活躍する宮尾俊太郎さんのダンス。宮尾さんの重力を感じさせない軽やかなターンやジャンプには、思わずため息が出そうなほど。宝塚とバレエ、2つの世界でスターとして活躍したお二人の芸術性の高さが、『マタ・ハリ』の魅力を倍増させてくれます。

音楽が少しキャッチーさに欠けること、ストーリーが駆け足でもう少し余韻が欲しいこと(特にラストシーン)が気になりましたが、この辺りは人それぞれの印象によって異なるものでしょう。マタ・ハリ、彼女をスパイにさせるラドゥー大佐、彼女が恋に落ちるパイロットの青年アルマンはWキャストのため、キャストによっても歌や演じ方の印象が異なるはずです。

Yurika

ミュージカル『マタ・ハリ』は東京建物Brillia HALLで6月27日まで、7月には愛知県と大阪府にて上演が予定されています。また、東京千穐楽である6月26日・27日にはライブ配信も決定!Wキャストそれぞれの公演が見られるチャンスです。どうぞお見逃しなく。チケットぴあでのチケット購入はこちら