2026年5月1日(金)から、夏目漱石も観劇に訪れた明治座にて開幕するミュージカル『アイ・ラブ・坊っちゃん』。音楽座ミュージカルで1992年に初演され、「日本のオリジナルミュージカルの到達点」と評された傑作ミュージカルです。開幕に先立ち、囲み会見・公開ゲネプロが行われました。
「裏側にある夫婦の愛情をお伝えできれば」

囲み会見には井上芳雄さん、三浦宏規さん、小林 唯さん、彩みちるさん、松尾貴史さん、春風ひとみさん、土居裕子さんが登壇しました。

夏目漱石を演じる井上芳雄さんは、本作の1992年初演時も漱石の妻・鏡子役を演じた土居裕子さんとの共演について、「約30年前の初演と同じ役をしているって、みんな聞き流していますけれど、聞き直した方が良いくらい。なかなかないことですけれど、舞台だからできることでもあり、土居さんだからできること。一緒にこの舞台をできることが奇跡のよう」と語ります。「夏目漱石はこの時期、すごく神経が繊細になってイライラしていて、ずっと当たり散らしているというか、怒鳴り続けているんです。そんな役はやったことがないですし、今のコンプライアンス的にはもうアウトのような…映像作品だったら最後に注釈がつくくらい。でもそれを(土居さんが)しっかり受けてくださっていますし、ただただ“あいつ、きついな”というだけではなく、裏側にある夫婦の愛情をお伝えできればと思うんですけれど、稽古当初は本当に慣れなくて、裕子さんをこんなに怒鳴っていいものかなと…今は結構慣れました(笑)」とコメント。

これに土居さんは「芳雄さんの持っていらっしゃる優しみは変わらないので、芳雄さんが怒鳴った姿もセクシーです」と愛情深いお返しが。また漱石の妻・鏡子について「鏡子さんはよく言えばとてもおおらかな方で、怒鳴られても笑っていて…悪く言えば大雑把な性格だったみたいで、だから2人は上手くいったのかなと思います。夏目漱石さんが亡くなった後、鏡子さんは割と長生きなさったんですけれども、最期に娘の筆子さんに“私は色々な男の人を見てきたけどね、やっぱりお父ちゃまが一番良いわね”と言ったという言葉がものすごく心に残っています」と明かしました。
坊っちゃんを演じる三浦宏規さんは「僕にとっては春風ひとみさんが演じる清(きよ)の存在がすごく大きくて、坊っちゃん自身も松山に赴任してから改めて清という存在のありがたみに気づいたわけですし、僕もお芝居の中でやりながらすごく清の温もりを感じて、上京してから親のありがたみを知るじゃないですけれど、僕も上京してきた身なので、そういう気持ちを思い起こされました。清の坊っちゃんを見る眼差し、(坊っちゃんを)遠巻きに見ているというシーンが何個かあるんですけれど、全員が正面を向いていても、清だけは坊っちゃんを見ていて、それが僕はすごく嬉しくて、ぜひ注目して見て頂けたら」と見どころを語ります。

また三浦さんはご自身が坊っちゃんに重なる瞬間が多くあるようで、「原作小説の冒頭には坊っちゃんが無鉄砲が故にやらかしてしまったことが色々と書いてあるんですけれど、“あれ、自伝かな?”と思うくらい(笑)。特に幼少の頃は無鉄砲だったなと。(原作の)冒頭で心を掴まれました」と語りました。
山嵐と正岡子規の2役を演じる小林 唯さんは、「今回、明治座さんに立たせていただくのも初めてですし、『アイ・ラブ・坊っちゃん』は二十歳くらいの時に観させていただいたのですが、まさか自分がこうやって関わらせていただくとは思っていなくて。山嵐という人物像も全く新しいものになっていて、新しい創造の現場に立たせていただいて楽しませていただいています。この作品のメッセージがお客様に伝われば良いなと本当に思っております」とコメント。

また「山嵐として坊っちゃんの宏規との関係性は、アンジョルラスとマリウスの系譜に近いなと勝手に思ったりしていて。その関係性を宏規と一緒に作っていけるのを、すごく楽しませていただいています。正岡子規としては芳雄さんと少ないながらも濃密なお芝居があって、夏目漱石と正岡子規の友情を芳雄さんと構築できるのは感慨深くもあり、恐れ多くもあり。最初は緊張しました」と明かします。これには井上芳雄さんも「事務所の先輩・後輩でもあるので、強く言わなきゃいけないシーンでもどうも腰が引けていて(笑)。最初は遠慮してくれていました」と稽古の様子が語られました。

彩みちるさんは本作が宝塚歌劇団を退団後、初の出演となります。「マドンナと雪江という役で、キッチュさん(松尾貴史さん)演じる赤シャツとヴァイオリンの先生の2役との、恋の駆け引きや恋の迷いが描かれています。また漱石さんの兄嫁の登世という役もやるので、天から見守る大きな愛で包めたら」と役柄について語りました。

赤シャツを演じる松尾貴史さんは「本当に欲望に忠実で、狡猾な男なんですが、でも憎めなくない。二重否定ですね。その辺をできるだけ下品にならないように」と語ります。ミュージカル出演については「今まで5〜6回出させていただいたことがあるんですけれども、何年かぶりばかりなので、毎回リセットされた状態できょろきょろオロオロしていて、皆さんに助けていただいて。スタッフの皆さんもキャストの皆さんもプロフェッショナルばかりなので、そこに混ぜていただいていることが嬉しいです。毎日の酒が美味いです」と充実感を語りました。

「若い頃に拝見した音楽座さんの『アイ・ラブ・坊っちゃん』にまさか出させていただけるとは、本当に感動しております」と語ったのは、清を演じる春風ひとみさん。坊っちゃんを演じる三浦宏規さんについて「演出のG2さんからいただいたノートで“春風さん、泣かない”と言われるくらい(笑)、本当に可愛らしすぎて、孫のように、愛おしくなる。皆さんの中にもきっと、どんなことがあっても、何があっても、両手を広げて待ってくれている人って、人生の中で出会っていらっしゃると思うんです。そういう人を客席で思い浮かべてくれたら、本当に嬉しいなと思っています」と語りました。

最後に井上さんから「皆さんご存知の夏目漱石が書いた『坊っちゃん』のミュージカルなんですけれど、音楽座さんが創ってくださったこのミュージカルの優れたところは、坊っちゃんの魅力的な物語が進みながら、同時にその隣でずっと夏目漱石が『坊っちゃん』を書いていて、漱石の人生の物語も同時に進行しています。それが並行しているだけではなくて、時に交わったり、喧嘩したり教わったりしながら、漱石にとってフィクションの『坊っちゃん』の世界がなくては生きていけない、人生を進められないところまで行くという物語の構造が素晴らしいです。日本のミュージカルの到達点と言われている作品だということをやればやるほど実感しますし、新しい僕たちの『アイ・ラブ・坊っちゃん』として、ギリギリまで稽古をしていてまだてんやわんやしているんですけれども、初日にそれがガチっと上手くハマった時、僕たちも知らない素敵な世界がお見せできるんじゃないかと思っております。ぜひ劇場にお越しください。お待ちしております」とメッセージが贈られ、会見が締めくくられました。
生きてさえいれば…

1906年、39歳の夏目漱石の日常と、書き始めた新しい小説「坊っちゃん」、2つの世界が交錯していく『アイ・ラブ・坊っちゃん』。漱石は教師を辞めて小説家として独立したいと願うも踏ん切りがつかず、鬱々とした気持ちを妻の鏡子にぶつけてしまいます。鏡子は漱石の体調を気遣いながら、時に飄々と、明るく振る舞います。

漱石を演じる井上芳雄さんは会見でも仰ったように「怒鳴り散らす」キャラクターに新鮮さがありつつも、井上さんの優しさや愛情が根底にあり、怒鳴る中にも漱石の苦悩が垣間見えます。誰しもが、理想の自分ではいられない瞬間があるはず。そんな人間の弱さをチャーミングに演じる、井上芳雄さんの新境地となっています。

土居裕子さんは時に漱石に寄り添い、時にマイペースな鏡子の魅力を卓越した表現力で魅せていきます。

漱石と鏡子、2人のやり取りに笑わされる瞬間も多く、愛らしい夫婦像が魅力的です。

一方、漱石が書き始めた「坊っちゃん」の世界では、江戸っ子で曲がったことが嫌いな坊っちゃんが、四国・松山の中学校に赴任し、不器用ながらも教師という仕事に向き合っていきます。

そこで出会ったのが強い正義感を持つ数学教師の「山嵐」。腹黒い教頭の「赤シャツ」らの企てに翻弄されながらも、坊っちゃんと山嵐は心を通わせていきます。


三浦宏規さんは坊っちゃんの愛らしく不器用なキャラクターを豊かな表情で表現。兄弟とは違って不出来な自分をどうして可愛がるのかと尋ねた坊っちゃんに「なんと言われようと青い空は青い空。嫌いにはなれません」と答えた清の言葉が印象的です。

すっきりとした青空のごとく、真っ直ぐにさまざまな事件に立ち向かっていく坊っちゃん。そこには、漱石の“本当は自分もこうあれたら”という願いが込められているようです。

山嵐を豪快な熱い男として演じるのは、小林唯さん。山嵐は結核で亡くなった漱石の親友、正岡子規の姿が重ねられており、彼が語る言葉の数々に、本作の強いメッセージが込められています。美しい響きが歌声一音一音に宿り、言葉を届ける力を持つ小林唯さんさんだからこそ、本役が託されたのでしょう。

物語というのは、作者の心が反映されるもの。漱石の人間関係や葛藤が「坊っちゃん」を通して見えてくるのが、本作の面白さの一つです。漱石の執筆中に鏡子が話しかけると物語世界の登場人物たちも静止してしまったり、漱石が原稿を丸めると彼らも丸まってしまったりと、ユーモラスなシーンも魅力的。

また印象的だったのは、山田うんさんが手がける、独創的かつ物語のキャラクター1人1人が躍動的に描かれる振付の数々でした。和物ならではの仕草を取り入れながらも軽やかさがあり、三浦さん、小林さんもその身体能力の高さを遺憾なく発揮しています。アンサンブルキャスト演じるそれぞれの役の人生にも思いを馳せてみたくなるのは、音楽座という「劇団」から生まれた作品だからなのかもしれません。


「生きてさえいれば、どんなことでもできる」。音楽座のピュアで真っ直ぐな哲学が本作の隅々に行き渡っていながら、G2さんの演出により、壮大なセットがファンタジックな世界観を創り上げます。


物語は、観る者を癒すものでありながら、作者自身をも癒していく。その姿が温かに描かれる傑作ミュージカルです。


ミュージカル『アイ・ラブ・坊っちゃん』は2026年5月1日(金)から31日(日)まで明治座にて上演。6月7日(日)から14日(日)まで北海道文化芸術劇場hitaru、6月22日(月)から28日(日)までSkyシアターMBSにて上演が行われます。公式HPはこちら
チャーミングなシーンがたくさんあって、ワクワクしながら、笑いながら、本作の魅力に惹き込まれていきました。音楽座の作品は、ピュアで尊くて、温かい気持ちになれます。井上芳雄さん、三浦宏規さん、小林 唯さんの共演も贅沢で、お三方の魅力を堪能できる作品になっています!



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