ピクサー映画といえば、『トイ・ストーリー』や『カーズ』など奇想天外な世界を題材にした作品が魅力。そんなピクサーの記念すべき20作品目は、人間の頭の中を舞台にした『インサイド・ヘッド』です。2015年に公開後、第88回アカデミー賞2部門、第43回アニー賞10部門など映画賞を総なめにしました。子どもよりも大人のファンが多い『インサイド・ヘッド』。その魅力は、作品を彩る豊かな感情と美しい音楽にあります。

頭の中の「感情」たちが主役

『インサイド・ヘッド』は、家族が大好きな11歳の少女・ライリーの頭の中で始まる物語です。ライリーの言動に司令を送っているのは、彼女の頭の中にいるヨロコビ、カナシミ、イカリ、ビビリ、ムカムカの5つの感情たち。

家族と友達に囲まれて充実した日々を送っていたライリーですが、家族が田舎から都会に引っ越したことでその生活は一変。頭の中に蓄積された過去の楽しい思い出が、転校を機にどんどん悲しい思い出に変わっていきました。

ヨロコビは「これはカナシミのせいだ」と考え、彼女と揉み合ううちに感情を作る司令部から離れてしまいます。ライリーの幸せを取り戻すため、ヨロコビとカナシミは解決策を探す旅に出るのでした。

主要キャラクターである5つの感情たちは、カラフルで個性的。ヨロコビは黄色い星、カナシミは青い涙の雫というように、それぞれテーマになっている色とモチーフがあります。正反対なキャラクターが見ていて楽しいヨロコビとカナシミ。日本語吹き替え版では、ヨロコビ役を竹内結子さん、カナシミ役を大竹しのぶさんが担当しています。

感情を音で表現する、美しい音楽

ストーリーとキャラクターだけでも面白い『インサイド・ヘッド』ですが、劇中の音楽も心に響きます。その楽曲は第43回アニー賞の音楽賞にノミネートされ、ピクサー映画のオーケストラコンサートでも演奏されるほどの人気です。

最も印象的な曲は、冒頭で流れる「Bundle Of Joy」。頭の中から湧き上がるような美しいピアノの旋律が、作品のリアルな3D映像にさらなる細やかさを与えます。ヨロコビが飛び跳ねるような軽やかなテンポや、カナシミのやる気を損なうような重たいブラス・サウンドなど、音で表現された感情が巧みです。

楽曲を担当したのは、『Mr.インクレディブル』や『カールじいさんの空飛ぶ家』などで作曲を担当したマイケル・ジアッチーノ氏。ピクサーミュージックのヒットメーカーです。

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主題歌はDREAMS COME TRUEの書き下ろし曲

『インサイド・ヘッド』には、ピクサー映画では異例の日本人アーティストによる描きおろしのオリジナル主題歌があります。それが、DREAMS COME TRUEが歌う「愛しのライリー」。ピクサーファンの間ではもちろん、ドリカムファンの間でも知られる隠れた名曲です。

この曲はエンドクレジットに流す主題歌としてではなく、作品に興味を持ってもらうための”コマーシャルソング”として書き下ろされました。DREAMS COME TRUEの2人が80年代の音楽と昔のアニメソングをイメージして作ったというこの曲。サビには「ライリーライリーこっち向いて」という作品を意識したストレートな歌詞がついています。

「さぁここへ来て。話聞かせて。今日はどんな日だった?」で始まる優しい歌詞は、まるで親が子どもの1日の出来事を聞いているような包容力を感じます。映画に惚れこんだというDREAMS COME TRUEが書き下ろした「愛しのライリー」も、『インサイド・ヘッド』が大人に支持される理由の1つなのかもしれません。

さきこ

ライリーは純粋で子どもらしい明るい性格の少女ですが、彼女の頭の中にある感情の5つのうち、ヨロコビ以外はネガティブな感情です。ヨロコビは「なぜライリーに悲しみが必要なの?」と不思議に思っていましたが、人が生きていくためには悲しみや怒りなどのネガティブな感情が必要不可欠。それらを経験することで人生の幸せの数が増えていくのだと、『インサイド・ヘッド』は教えてくれます。思い悩んで頭の中が散らかったときは、『インサイド・ヘッド』の豊かな感情たちと美しい音楽に触れてみてはいかがでしょうか?