『ベルサイユのばら』という少女漫画を読んだことはありますか?連載当時から大ファンだったという方もいれば、名前だけは聞き覚えがあるという方もいるでしょう。フランス革命へと向かう激動の時代を背景に繰り広げられる、男女の美しくも哀しい物語。歴史に大いなるロマンを絡ませた作品をミュージカル化したのが、宝塚歌劇団でした。今回は、“タカラヅカ”で観る『ベルばら』の魅力と、初心者におすすめしたいポイントについてお話します。

宝塚歌劇団による『ベルサイユのばら』

初めて宝塚歌劇団で『ベルサイユのばら』が上演されたのは1974年。以来、何度も再演され、劇団史上最大のヒット作となりました。2013年には、宝塚歌劇団100周年を記念して月組・雪組による公演が行われたことからも、その人気の高さが窺えるでしょう。

宝塚歌劇団では、『ベルばら』を2つの物語にわけることでキャラクターの心理を丁寧に描いています。「オスカル編」では、男装の麗人・オスカルと幼馴染のアンドレのもどかしい関係に最後までハラハラドキドキ。一方、「フェルゼンとマリー・アントワネット編」では、フランス王妃のアントワネットと外国貴族であるフェルゼンの道ならぬ恋に切なくなります。

昭和、平成とそれぞれの時代に宝塚歌劇団を盛り上げてきた、『ベルばら』。令和ではいったいどの組が演じるのか、その機会が待ち遠しいところです。

“タカラヅカ”と『ベルばら』の運命的な出会い

今や宝塚歌劇団の代表作となった『ベルサイユのばら』ですが、初演にこぎつけるまでは数々の苦労があったそう。漫画の舞台化はほぼ未経験だった歌劇団にとって、『ベルばら』公演決行は大きな賭けだったのではないでしょうか。

また、原作ファンからの反発も厳しいものでした。『ベルばら』の魅力である、18世紀の華やかなフランス宮廷文化や、美男美女ぞろいの登場人物。キラキラとした世界観を再現するのは、確かに至難の業のように感じられます。

逆風の中、劇団員たちは細かな演出から舞台装置、衣装にまでこだわり、練習に励みました。その結果、月組による初演は大成功を収め、一躍ブームを巻き起こします。現在、宝塚歌劇団では定番のミュージカルだけでなく、漫画原作の作品も果敢に実演。チャレンジ精神の下地は、『ベルばら』によって培われたといえるでしょう。

初めてのタカラヅカ観劇を楽しんで

宝塚歌劇団と『ベルサイユのばら』は、まさに出会うべくして出会った関係ではないでしょうか。少女漫画らしい輝くビジュアル、豪華なドレス、そして男装の麗人と国家の王妃。どれも一筋縄では再現できない、夢のような世界です。女性のみの歌劇団だからこそ、違和感なく『ベルばら』のファンタジーを三次元へと呼びこんでくれます。

また、歴史ものながら恋愛要素が強いため、ストーリーに入り込みやすいところも大きな魅力。“タカラヅカ”ならではの演出を初体験しつつ、物語も楽しむなら、『ベルサイユのばら』がうってつけですよ。

もこ

筆者の『ベルサイユのばら』初体験は、2015年の花組による台湾公演のライブビューイングでした。国境を越えた人気に驚かされながら、漫画から抜け出してきたようなオスカルたちに感動しっぱなし。次回公演時は、宝塚大劇場での観劇を密かに狙っています。