日本時間6月13日に実施された第75回トニー賞授賞式。昨年は時期と場所を変えての開催でしたが、今年はコロナ禍以降初めて、ラジオシティ・ミュージックホールに帰還。劇場閉鎖の辛い日々を乗り越え、“Return to the Normal”を印象付けるトニー賞となりました。

文句なしの名作がミュージカル&演劇作品賞を受賞

アメリカ演劇界で最も権威のあるトニー賞。毎年、該当期間中にニューヨークのオン・ブロードウェイで開幕した演劇・ミュージカル作品を対象に贈られます。1番の注目は作品賞。ミュージカル作品賞は、2020年ピュリッツァー賞で戯曲賞を受賞、今年のトニー賞で最多11部門ノミネートを記録していた『ア・ストレンジ・ループ(A Strange Loop)』が文句なしの受賞!

NEW YORK – JUNE 12: Jaquel Spivey performs a number from “A Strange Loop” onstage at the 75th Annual Tony Awards at Radio City Music Hall on June 12, 2022 in New York City. (Photo by Theo Wargo/Getty Images for Tony Awards Productions)

『ア・ストレンジ・ループ』は性的マイノリティの黒人青年が、自身の経験をもとにミュージカルの脚本を書く物語。葛藤する心の中の声を6人の俳優が表現しつつ、コミカルなシーンも印象的な作品です。同性愛者、黒人といった近年のブロードウェイでもトピックスに挙がる要素が含まれた本作。ミュージカル脚本賞も受賞し、作品として高く評価されていることが窺えました。

演劇作品賞を受賞したのは、リーマン・ブラザーズの誕生からリーマン・ショックによる崩壊までをたった3人の俳優だけで演じる『リーマン・トリロジー』。日本でもナショナル・シアター・ライブにて度々上映されており、Audienceライターが「とんでもなく、とんでもなく面白い」と称した作品です。演劇作品賞の他にも、演劇演出賞(サム・メンデス)、演劇主演男優賞(サイモン・ラッセル・ビール)、演劇照明デザイン賞、演劇装置デザイン賞の 5 冠に輝き、最多受賞を記録。演劇主演男優賞には主演3人全員がノミネートされ、彼らの高い演技力が評価されました。

YouTubeがきっかけ。デビュー作でミュージカル主演男優賞に!

NEW YORK – JUNE 12: Hugh Jackman performs a number from “The Music Man” onstage during the 75th Annual Tony Awards at Radio City Music Hall on June 12, 2022 in New York City. (Photo by Kevin Mazur/Getty Images for Tony Awards Productions)

久々にブロードウェイの舞台に戻ってきたハリウッドスター、ヒュー・ジャックマンさんもノミネートされていた中、ミュージカル主演男優賞を受賞したのは『MJ』のマイルズ・フロストさん。彼は、『MJ』がコロナ禍の劇場閉鎖により上演が延期された影響で、新たにキャスティングされた人物。なんと高校の学園祭で披露したマイケル・ジャクソンのパフォーマンスがYouTube で話題となり、本作への出演が決まったという、現代の“アメリカンドリーム”を掴んだ人でもあります。本作がプロとして初舞台ながら、トニー賞パフォーマンスでも会場をマイケルワールドに惹き込み、才能の高さを魅せつけました。

ミュージカル主演男優賞の受賞が決定すると、同じくプロ初ステージでトニー賞ノミネートされていたジャクウェル・スパイヴィーさん(『ア・ストレンジ・ループ』)と熱いハグ。受賞スピーチでは母親への感謝と、黒人の子供たちへ「夢は叶う」とメッセージを伝え、「マイケル・ジャクソンであれば“Heal the world with Love”(愛をもって世界を救おう)と言ったでしょう」と締めくくりました。

Myles Frost accepts the award for best leading actor in a musical for “MJ” at the 75th annual Tony Awards on Sunday, June 12, 2022, at Radio City Music Hall in New York. (Photo by Charles Sykes/Invision/AP)

『MJ』はミュージカル主演男優賞の他に、ミュージカル音響デザイン賞、振付賞、ミュージカル照明デザイン賞を受賞。注目すべきは、エレクトロニックミュージックデザイナーとして『MJ』に携わった日本人ヒロイイダさんもこだわり抜いたと語っていた、 “音楽”が高く評価されたこと。現代の楽器・音の技術で、マイケルの当時の音楽を、どうブロードウェイのステージに蘇らせるか。そしてその中に新たな発見があるか。観客を夢のような世界に連れていく、プロフェッショナルたちの技術が評価されました。

その他、演劇リバイバル作品賞は、様々な背景を抱える選手たちが集う野球チームの舞台裏を描いた『テイク・ミー・アウト』が受賞。日本人ピッチャー役で出演していた日本人俳優ジュリアン・スィーヒさんも授賞式に出席しており、トニー賞のステージへ!授賞式終了後、WOWOW に「トニー賞を受賞した作品に日本人役で出演できた事を光栄に思っています」と喜びのコメントを寄せました。

NEW YORK, NEW YORK – JUNE 12: Carole Rothman (C) accepts the award for Best Revival of a Play for “Take Me Out” with the cast and crew onstage at the 75th Annual Tony Awards at Radio City Music Hall on June 12, 2022 in New York City. (Photo by Theo Wargo/Getty Images for Tony Awards Productions)

トニー賞を盛り上げたのは、やっぱり授賞式パフォーマンス!

トニー賞を見る人々にとって、1番の楽しみと言っても過言ではない授賞式パフォーマンス。映画『ウエスト・サイド・ストーリー』でアカデミー賞助演女優賞を獲得したことが記憶に新しいアリアナ・デボーズさんが、トニー賞司会者としてオープニングパフォーマンス「This Is Your Round Of Applause」を披露しました。ブロードウェイ作品の名曲たちが立て続けに登場する圧巻のパフォーマンスに、会場はいきなりスタンディングオベーション!

NEW YORK – JUNE 12: Ariana DeBose performs onstage at the 75th Annual Tony Awards at Radio City Music Hall on June 12, 2022 in New York City. (Photo by Theo Wargo/Getty Images for Tony Awards Productions)

マイルズ・フロストさんを始めとする『MJ』カンパニーは、マイケルのヒットナンバー「The Way You Make Me Feel」と「Smooth Criminal」をパフォーマンス。トニー賞のステージにマイケルが降臨!華麗なムーンウォーク&ゼロ・グラヴィティで観客を沸かせます。

NEW YORK – JUNE 12: Myles Frost performs a number from “MJ” onstage during the 75th Annual Tony Awards at Radio City Music Hall on June 12, 2022 in New York City. (Photo by Kevin Mazur/Getty Images for Tony Awards Productions)

思いを込めた涙ながらの歌声に胸打たれたのは、『パラダイス・スクエア』の主演女優でジョアキーナ・カラカンゴさんのパフォーマンス。「Let It Burn」を力強く披露し、会場は鳴り止まない拍手喝采、スタンディングオベーションで讃えました。彼女はミュージカル主演女優賞を受賞しています。

Joaquina Kalukango accepts the award for Best Performance by an Actress in a Leading Role in a Musical for “Paradise Square” at the 75th Annual Tony Awards in New York City, U.S., June 12, 2022. REUTERS/Brendan McDermid

ブロードウェイが戻ってきたことを強く感じられた今回のトニー賞。字幕版は6月18日午後9時からWOWOWにて放送されます。世界最高峰のチームが魅せるステージを、ぜひ楽しんでみてください。

Yurika

オープニング、エンディングパフォーマンスと大活躍だったアリアナ・デボーズさん。黒人青年を描いた作品、登場人物の性別を入れ替えて上演した作品などブロードウェイ作品はもちろん、性的マイノリティであることを公表している候補者にも触れ、“Inclusion”が進んでいることをアピールしていたのが印象的でした。日本でも様々なことへの理解が、エンタメと共に前進することを願います。