国際交流基金は、現在公式YouTubeで世界に向けて日本の作品を届けるため、優れた舞台作品が無料配信されています。野田秀樹さんの作品『赤鬼』や、先日Audienceでも特集を組んだ山内ケンジさんの作品も、現在無料配信中。今回は配信中のミュージカル作品をご紹介します。

日本の優れた舞台作品を世界に

国際交流基金は、新型コロナウイルスの影響によって、日本の舞台公演に接する機会がなくなってしまっている世界の人々に向けて、日本の優れた舞台公演作品をオンライン配信するプロジェクト「STAGE BEYOND BORDERS –Selection of Japanese Performances– 」を行っています。

配信作品は、現代演劇、ダンス・パフォーマンス、伝統芸能の3分野。各公演は約5か国語の多言語字幕付きで、国際交流基金の公式YouTubeチャンネルから無料で視聴できます。日本の優れた舞台作品を、国境を越えて、多言語で発信することで、舞台芸術に親しむ全ての人への希望となることを期待して始まりました。

裏方に焦点を当てた舞台愛溢れるミュージカル

ミュージカル『HEADS UP!』は、舞台の縁の下の力持ちな、スタッフ達に焦点を当てた作品です。原案・作詞・演出を務めるのは、お笑い芸人・俳優・司会者・演出家と多彩な顔を持つ、ラサール石井さん。ラサールさんは、本作の構想になんと10年費やしたのだとか!想いのこもった作品です。

『HEADS UP!』は、ミュージカルファンなら誰もが知るあの名作が、1000回目の公演を迎え、華々しく終了したはずだったところから物語が始まります。ベテラン主演俳優が、地方の古い劇場で1001回目を上演することを要求。誰も逆らえず、上演することになりましたが、舞台美術は廃棄済み、キャストのスケジュールは押さえておらず、スタッフも人手不足。演出家は理想のプランを譲りません…。

さらに、今回は新人舞台監督がデビューする作品でもありました。幸か不幸か、チケットは完売。観劇のために都合を付けた観客達が待ってくれています。厳しい条件下でもスタッフたちは、必死に幕を開けようと奔走します。

舞台スタッフの奮闘を音楽にのせて綴るオリジナルミュージカルで、新人とベテランの二人の「舞台監督」を中心に描いています。舞台上では、舞台セット組みから、照明、音響、衣装、制作、小道具、そして演出部、と各セクションのスタッフが本番に向かって動いていく姿を追っていく、「メイキング」型のミュージカル。舞台を支え、舞台を愛する、裏方のスタッフ達に焦点をあてた群像劇がリアルに描かれた、本格的なミュージカル作品です。

本作の特異な点は、「バラシ」と呼ばれる、公演終了後の劇場撤収作業まで描かれていること。普段は絶対にフォーカスされない部分なので、スタッフとして舞台に関わっている身としては、新鮮に映りました。

ベテラン舞台監督に俳優で歌手の哀川翔さん。新米舞台監督には、『レ・ミゼラブル』でアンジョルラスを演じるなどミュージカルで活躍する、相葉裕樹さんという豪華な俳優陣も見どころ。演出部を演じる橋本じゅんさんや芋洗坂係長さんが歌う「ウラカタ」をはじめとしたポップなナンバーで彩られ、コメディタッチで描かれた、舞台愛に溢れた作品になっています。どのように舞台が作られていくかや、スタッフワークに興味のある方は必見です。

ミュージカル『HEADS UP!』の映像はこちらからご覧頂けます。来年3月頃までの公開予定です。

ミワ

誇張はあれど、スタッフ間の役回りや関係性に共感しながら観ていました。舞台がどのように作られているか知って頂ける素敵な作品だと思います。