子供たちが舞台芸術に触れる機会の提供を続けている日生劇場。最近では、子供たちが楽しめる作品を日生劇場と全国各地の劇場で上演する取り組みを行っています。今年は、新たなミュージカル『リトル・ゾンビガール』が上演されます。NHKの「みんなのうた」で愛されてきた歌がたくさん登場する、お子さまとの観劇にぴったりのミュージカルです。

全国の子どもたちに舞台芸術を届けたい!歴史ある取り組み、ニッセイ名作シリーズとは?

はじめに、ニッセイ名作シリーズについて解説しておきましょう。これは、子どもたちをミュージカルなどの公演に無料で招待する取り組みのこと。東京・日比谷の日生劇場を運営するニッセイ文化振興財団が主催となり、長年、児童・青少年を劇場に招待してきました。1964年の日生劇場オープン当初から続けられているこの取り組み。長年、劇団四季のオリジナルミュージカルを上演し、ニッセイ名作劇場という名称で親しまれていたので、そちらで覚えている方もいるかもしれません。現在ではニッセイ名作シリーズとして事業を続けています。

招待公演の当日、子どもたちでいっぱいになった客席は明るい笑顔で溢れ、終演後は俳優たちがお見送りをするなど、一段と活気ある雰囲気になります。2014年に「ニッセイ名作シリーズ」へとリニューアルされてからも、オペラ、クラシックコンサート、人形劇など、広いジャンルの公演を展開。社会貢献活動として、児童・青少年が舞台芸術に親しむ機会を提供し続けています。

ゾンビの少女と人間の少年の絆がつなぐ、分断したふたつの世界

多くの子どもたちに届けたいニッセイ名作シリーズの新作は、NHK「みんなのうた」の名曲をたっぷり詰め込んだオリジナルミュージカル。『リトル・ゾンビガール』というタイトルの通り、ゾンビの女の子・ノノが主人公です。

「人間は恐ろしい敵」だと聞かされて、ゾンビの森で仲間たちと平和に暮らしていたノノ。ある日、ゾンビの森に人間たちが押しかけてきて、ゾンビたちは震え上がります。仲間のために、ノノは正体を隠して、人間の街へ潜入することに。警戒するノノが出会ったのは、心優しい人間の男の子・ショウ。ふたりのこころ温まる交流が、対立を深め分断する一方のゾンビと人間たちとを繋いでいきます。

ノノ役はタレントとして活躍中の髙橋ひかるさんと、『レ・ミゼラブル』コゼットを好演した熊谷彩春さんがWキャストで演じます。同じくWキャストのショウ役には、女優として活動の幅を広げる石井杏奈さん、乃木坂46メンバーの伊藤理々杏さん。大人のゾンビ役にはコング桑田さんと大和悠河さん、人間の大人役にはエハラマサヒロさんと石田佳名子さんが名を連ねます。

「誰もがひとりぼっち」「ぼくらはみんな生きている」 みんなのうたを歌いつぐ、子どもから大人までが楽しめるミュージカル

長い歴史のなかで、「みんなのうた」で放送された曲はなんと1500曲以上にもなるそう。数ある中から厳選した曲を使って、『リトル・ゾンビガール』というオリジナルミュージカルが作られました。その主題歌に選ばれたのは、2020年に放送された「 夜明けをくちずさめたら」という曲。いきものがかりの水野良樹さんが作詞・作曲を手掛けた、月夜の孤独を感じさせる大人向けのバラードです。「誰もがひとりぼっち」から始まり、どんなに離れていても、いつか共に夜明けを迎えられるとの期待が歌詞に込められています。さまざまな分断が続く今だからこそ、心を動かされる1曲です。

しっとりとした主題歌の対になっているのが「手のひらを太陽に」。アップテンポで心がはずむこの曲は、制作発表でも披露されました。子どもから大人まで一緒になって、「ぼくらはみんな生きている」と口ずさめる、60年以上愛される名曲です。作詞は、アンパンマンの作者、やなせたかしさん。歌詞には、ミミズやオケラ、アメンボと、小さな生き物たちが登場します。姿かたちが違っても、命あるものはみんな友達なのだと、小さな子どもにも伝わるやさしい歌詞。対立するゾンビと人間とが、一緒になってこの歌を歌うハッピーエンドの物語であればいいなと期待したくなります。

そのほかにも、「 コンピューターおばあちゃん」や「 WAになっておどろう ~イレ アイエ~」など大人が懐かしく感じる曲が登場します。お子さんはもちろん、少し世代が違う方と観に行くと、曲を手がかりに、思い出を共有するきっかけになるかもしれません。

NHKみんなのうたミュージカル『リトル・ゾンビガール』は 2022年8月20日(土)から 28日(日)まで、日生劇場にて上演されます。その後は、千葉、兵庫、大分、岩手、大阪と、全国を回ります。ニッセイ名作シリーズとしての小学生を対象とした無料招待公演も予定されています。詳しくはこちらの公式サイトをご覧ください。

Sasha

この作品には様々な年代の歌が登場します。筆者はリアルタイムで「 WAになっておどろう」をみんなのうたで聴いていた世代ですが、この曲は母にとっては子育て真っ盛りの時代を思い出す1曲だそう。そんな思い出を親子や3世代で観に行って、観終わった後に思い出を共有しあうことができたら楽しそうですね。