演劇を上演するためには、多くの役職が存在しています。しかし、どんな仕事をしているのかが分からなかったり、そもそも役職が知られていないということも。そこで今回は、“これさえ読めば初心者でも公演がつくれる!”という全日本演出家協会が無料配布している演劇入門書「はじめての演劇」を参考にしながら、振付家・作曲家の仕事について紹介していきたいと思います。(舞台監督・床山編、音響・照明編、舞台制作・演出家・演出助手編はこちら)
シーンを表現しながらパフォーマーを輝かせる【振付家】
劇中で使用する楽曲とシーンをもとに踊りを考えて、振り付けを指導する仕事が振付家です。現役のダンサーをしながら振付家として活動する人や、ダンサーを引退した後に振付家として活動する方もいらっしゃいます。
日本で活躍している振付家の方では、ミュージカル『回転木馬』や『モーツァルト!』『マイ・フェア・レディ』など多くのミュージカル作品を手がけている前田清美さんや、ブロードウェイミュージカル『IN THE HEIGHTS』などで演出も手がけているTETSUHARUさんらが挙げられます。
TETSUHARUさんは、『ロミオ&ジュリエット』(初演・再演)、『ロックオペラ・モーツァルト』、『ミュージカル刀剣乱舞 幕末天狼傳(初演)』、『ジョセフ・アンド・アメージング・テクニカラー・ドリームコート』などで振り付けを担当していました。
人数の多い舞台や複雑な動きが多い場合には「振付助手」と呼ばれるポジションがあり、振付家をサポートするスタッフがいることも。また、ダンスのジャンル(HIP-HOP、ジャズダンス、バレエ、コンテンポラリーなど)によって、振付家の方が複数人付くこともあります。
特殊な動きやダンス、集団での演技など、舞台上の俳優の動きを整理し、演出家の想像する像を舞台上の世界にまとめていく、動きのプロフェッショナルです。物語のシーンに合った踊り、演出家が伝えたい感情などをダンスで表現していきます。時には役者のちょっとした立ち回りの動きなども任されることも。
振付をする上で1番大切なのは「ストーリーを伝えること」。「そのシーンで伝えたいことは何か」そして、「そのシーンを表現しながら役者が輝く動きは何か」を意識して振りを完成させていきます。
派手な舞台セットがなくても、俳優たちの身体表現だけで、波や海などの自然だったり、本当に様々なものを表すことができます。台本を読んだだけで、それを考えつく振付家のみなさんにいつも驚かされます!
音楽で物語に命を吹き込む【作曲家】
ミュージカルや音楽劇において、作品世界を音楽の面からまとめているのが作曲家の仕事。(ミュージカルの作品などに限らず、お芝居の下で曲が流れていることもありますね!)
まず最初に脚本家、作詞家と全体の流れを相談。どこを歌にするか(既に決まっていることも)や、どんな曲調のイメージか、どんな展開にするのかなどについて話し合います。 次に、歌詞や曲を細かく調整し、作曲し、デモ音源を作成します。デモ音源を元に、演出家との相談・調整を再度繰り返していき、完成となります。
世界で名作を生み出している作曲家といえば、『ジーザス・クライスト・スーパースター』や『エビータ』『キャッツ』『オペラ座の怪人』など数多くのヒット作品を生み出すアンドリュー・ロイド・ウェバーさん。
『太平洋序曲』『スウィーニー・トッド』『イントゥ・ザ・ウッズ』で知られるスティーヴン・ソンドハイムさん。
『ジキル&ハイド』『スカーレット・ピンパーネル』『DEATH NOTE』『四月は君の嘘』と近年のミュージカルの作曲において欠かせない存在のフランク・ワイルドホーンさんと、現在までのミュージカル史に貢献してきた作曲家たちは数知れず。
作曲家は、音楽を使ってキャラクターや、様々な感情、シーンを表現し、物語に命を吹き込みます。
ミュージカルや音楽劇の中での歌は、台詞や語りの意味を持ちます。そのため、聞いただけで歌詞の言葉が分かり、言葉に込められた想いや気持ちを表現していなければなりません。
また、作品の世界に応じて、ジャンルを越えた様々な音楽作りが必要になってきます。オーケストラ、バンド、和楽器でのお囃子、シンセサイザーなど様々なアレンジで、作品の世界観をより濃くしていきます。
オーバーチュアーを聞くだけで作品の世界が一気に広がったりと、音楽の持つ力は本当に大きなもの。作曲家は、魔法使いのように作品世界に彩を与えてくれます。
今回は作品を作っていく上で(ミュージカルなどでは)特に欠かせない、振付家さんと作曲家さんを紹介しました。紙に文字が書いてあるだけの台本という2次元から、どんどん舞台が立ち上がっていく様は何度見ても魔法のようで、いつも感動してしまいます!