2022年が日中国交正常化50周年、2023年は日中平和友好条約45周年。演出の良知真次さん曰く「日本と中国の為に何かできないかと生まれた」のが、日中合作音楽劇『李香蘭-花と華-』です。第二次世界大戦を生き抜いた実在の歌姫・李香蘭の半生を音楽劇で描きます。

第二次世界大戦を生き抜いた歌姫・李香蘭の半生を描く

本作のモデルは、1920年に中国で、日本人の父・山口文雄と母・山口アイの間に生まれた山口淑子さん。中国で育った彼女は、13歳の時に、日中友好の夢を父親から託され、中国人の李将軍の養女となり、「李香蘭」という中国名を貰います。

その後、類まれなる美貌と歌の才能を認められ、中国人女優・李香蘭としてデビューすることに。
日中戦争時には満州映画協会(満映)の専属女優として『白蘭の歌』『支那の夜』『熱砂の誓ひ』など多くの日本映画に出演。また、彼女の歌った「夜来香」「蘇州夜曲」などの歌がアジアで大ヒット。

世界大戦開戦直前の1941年には、日本劇場(日劇)で「歌ふ李香蘭」に出演すると、日本人ファンが押し寄せ、大騒動になるほどの人気を誇りました。

しかし徐々に戦争は激しくなり、中国と日本は対立を深めていきます。どちらの国も愛している李香蘭は、自分が「山口淑子」という名を持つ日本人であるということを隠し続けることに苦悩します。

そして、彼女は人気を日本軍の宣伝に利用され、終戦後、中国で中国人として祖国を裏切った漢奸(※)の容疑で軍事裁判にかけられてしまいます…。

※漢奸:中国人でありながら、中国に反抗し、日本の宣伝活動や機密事項を日本軍に通報するなどの行為をした国に逆らった者のことを指します。李香蘭、川島芳子もこの罪で裁かれました。


李香蘭は日本人であることが証明され、漢奸罪は適用されずに、国外追放処分となり、日本に帰国しました。帰国後は、山口淑子の名前で芸能活動を再開。日本だけでなく、アメリカや香港の映画などで活躍しました。また、1969年〜1974年までワイドショーの司会者を務めたり、1974年〜1992年まで18年間、参議院議員を務めるなど、多岐に渡り活躍をした聡明な女性です。

国会議員時代の秘書・寒川一郎さんは、「“日本と中国の架け橋”になるような何かが起こる時、その方々を応援してあげて欲しい」と山口さんから遺言のように預かっていたそう。まさに「今回の舞台公演のことだと感じている」とコメントしました。

平和を願い続けた李香蘭の人生を描いた物語です。

西内まりや初の舞台作品に挑戦!

『李香蘭』は、1991年に劇団四季でミュージカルとして初演されました。以来、劇団四季の代表作品として人気を呼び、現在まで何度も再演を重ねている演目です。

今回、日中合作音楽劇『李香蘭-花と華-』では、李香蘭役は本作が初舞台となる西内まりやさんが、そして山口淑子役を安寿ミラさんが演じます。西内まりやさんは、歌手として2014年〜2017年の間に7枚のシングルを発表。2021年にNetflixの『全裸監督』シーズン2で女優業を再開しました。

安寿さんは宝塚歌劇団で花組トップスターまで登り詰め、退団後も舞台を中心に活躍する他、“ANJU”の名前で振付家としても活動しています。

男装の麗人・川島芳子役は、飛龍つかささんと玉置成実さんが演じます。川島芳子さんは清朝王族・粛親王の第14代目の王女で、日中戦争の際に活躍したスパイ。男装をしていたため「男装の麗人」とも呼ばれました。劇団四季が上演したミュージカル『李香蘭』では過去に濱田めぐみさんが演じたことのある役でもあります。

飛龍つかささんは、2022年9月まで宝塚歌劇団の花組に在籍し、男役として活躍した、まさに「男装の麗人」!玉置成実さんは、歌手として活躍するだけでなく、ミュージカル『キンキーブーツ』をはじめとする舞台でも活躍しています。

日中合作音楽劇『李香蘭-花と華-』は、2023年1月13日(金)〜22日(日)紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて上演です。公式HPはこちら

ミワ

不安定な世の中で中国と日本という二国どちらも背負いながら活躍した李香蘭。写真を見ると、その美貌に息を呑みます。新たに創作される本作ですが、劇団四季版とはどのような違いがあるのでしょうか。