舞台『幾つの大罪〜How many sins are there?〜』はTEAM NACS戸次重幸さんが作・演出・出演を務めるソロプロジェクト。須賀健太さん・馬場ふみかさん・前野朋哉さん・ゆうたろうさん・濱尾ノリタカさん・黒岩司さん・波岡一喜さんを迎え、ゴシップ誌記者と死刑囚のサスペンスを描きます。今回は戸次さんへのインタビューが実現!作品について、現場づくりについて、そしてエンタメへの思いを伺いました。
人間の欲を曝け出す、舞台『幾つの大罪〜How many sins are there?〜』
−本作は“死刑囚が殺害方法についてブレインストーミングする”という特殊な設定ですが、どういったところから着想を得たのでしょうか?
「実は、本作はある20年前のアメリカ映画のワンシーンを再現したいというところから始まりました。サスペンスもの・ダークな作品が好きで、人が死ぬ・死なないというのはエンタメの普遍のテーマでもありますので、そういったものは本作でもテーマになっています。
僕は、人間の汚いところを見せるのが好きなんです。欲を曝け出すというところに面白みを感じるので、物語にそういった要素は盛り込まれていると思います。
ただ、存分に笑えるシーンも用意しています。笑いがない舞台って僕は少し苦手で。一瞬お客さんが座っているお尻の痛さを忘れるのに、笑いって必要な要素だと思っています。
笑いは役者にとっても快感なんですよ。役者は、お客さんの感情を汲み取って舞台上で瞬間的に満足する生き物なのですが、その中でも笑いは笑い声として外に出やすいので、役者も感じ取りやすい。僕も快感だし、僕の作品に出る役者にはそれを体感してもらいたいと思って作っています」
−笑いを体感できるのは、舞台ならではですね。
「自分がやったことの結果として、タイムラグなく、リアルタイムでお客さんの反応を見ながら芝居をすることができるのは、舞台ならではの魅力ですね。役者だけじゃなく、お客さんもそうだと思います。目の前で、何のつい立てもない、モニターでもなく、ライブで芝居を感じる。映像で見るのと生で見るのとでは、やはり物語の入り方が違うと思います」
−出演者についてはいかがでしょうか?
「脚本は何年も前から用意していたので、当てがきではないのですが、物語に合うキャストの方にお願いしました。共演したことがない方も半数以上いるので、稽古初日に盛大な親睦会をしたいなと企んでいます(笑)。元々ソロプロジェクトは誰よりも僕が楽しみたいと思って企画しているので、皆さんの芝居は楽しみでしょうがないですね」
お芝居が好き。その気持ちを思い出せる現場づくりを
−ソロプロジェクトで意識していることはありますか?
「元々好きで始めたお芝居という商売なのですが、好きなことを仕事にしてしまうと、好きだった時の気持ちってどこか感じなくなっていくんですよね。どんな仕事でもそうだと思うのですが。その好きな気持ちを、役者の皆さんにもう一度感じてもらえるような作品づくり、稽古場づくりをしていく。これが僕のソロプロジェクトの大きなテーマです。誰より僕が感じたいからなんですが」
−好きな気持ちを感じてもらえるために、具体的にどんなことをされているのでしょうか?
「非常に効率的な稽古しかしないと決めています。余計なことはしなくていい。演出家は色々なパターンを欲しがる傾向にあるのですが、それにうまく対応できる人とできない人がいて、僕はそれを非効率に感じています。僕は脚本も自分で書いているので、そのイメージを的確に伝えるだけ。それが実現できれば、他のパターンを試す必要はないと伝えています
稽古の時はストレスを感じたら手を挙げてくださいと言ってるんです(笑)。僕は役者なので、プレイヤーとして出た時に感じるストレスを、ソロプロジェクトにおいては1人たりとも与えたくないと思っています。仕事なのでストレスを全く感じないことはないかもしれませんが、できる限り排除できるストレスは排除していく。本来のお芝居の楽しさを思い出してもらえるような現場にするのが大事だと考えています。
役者たちが本気で楽しんでいないと、本当の意味でお客さんを楽しませられないですしね。決して安くないチケット代で見に来てくれるわけですから、その金額に相当するような感動、持って帰れるものを用意するつもりでいます」
−脚本家であり、演出家であり、役者である戸次さんならではの視点ですね。
「僕は自分のことを演出家だと思ったことはなくて、書いたものを伝える人、という感じで思っています。他人が書いたものを演出することはできないですし、ドラマや舞台で素晴らしい監督・演出家たちに出会っているので、自分のことは演出家だとは思ったことはないですね」
『笑の大学』は、世界一の二人芝居
−本作はアメリカ映画が着想のスタートだったということですが、映画やドラマはよく見られるのですか?
「撮影中でも移動時間を利用したりして、たくさん観ています。Netflixに加入したら見たいものを消化するのに一生かかるじゃないですか(笑)。さらにディズニープラスもあって、プライムビデオもあって、毎週撮り溜めているテレビドラマもあるので、時間がないですね。Netflixのドキュメンタリーものも最高に面白いし、マーベル作品も好きですし。なんでも観ますね。アニメも大好きです。僕の体を切ったら中からアニメが出てくるくらい(笑)。
僕は芝居をやるものも好きなのですが、見るのも同じくらい好きなんです。良い作品を見たら、出たかったなぁとか思うし。ドラマ『ブラッシュアップライフ』出たかったなあとか(笑)」
−Audienceでは「生きてて、よかった。そう思える瞬間が、演劇にはある」をコンセプトに掲げているのですが、戸次さんはそのように感じた作品はありますか?
「この作品を見られてよかった、と思う作品はいっぱいありますね。特に演劇を始めた頃に出会った作品たちは、面白いとはこういうことだ、と教えてもらいました。映画『12人の優しい日本人』を大学時代に見た時は衝撃でした。4つしかないシチュエーションで1本の映画で成り立っていて、凄い作品だと。それから舞台を観るようになりました。僕がワンシチュエーション好きなのは三谷幸喜さんの影響が大きいです。特に『笑の大学』はたった2人でワンシチュエーションで、こんな面白い作品ができるなんて…世界一の二人芝居だなと思いました」
エンタメを愛し、芝居を愛する戸次重幸さんが手がける舞台『幾つの大罪〜How many sins are there?〜』は4月15日(土)からEX THEATER ROPPONGIにて上演、その後大阪・北海道公演を予定しています。チケット詳細は公式HPをご確認ください。
<ヘアメイク>
Qta
<スタイリスト>
小林洋治郎(Yolken)
<衣装協力>
TEENY RANCH
第3弾ソロプロジェクトでは一人芝居に挑んだ戸次さん。“一人芝居でのカーテンコールで感じるエクスタシーは特別なもの”なのだとか。観客のエネルギーを一身に浴びるのは特別な体験なのだそうです。