太宰治が戯曲形式の小説として『ハムレット』を語り直した作品を、2月に第30回読売演劇大賞の最優秀演出家賞を受賞した五戸真理枝さんの演出で、6月にPARCO劇場にて上演が決定しました。太宰治のフィルターを通して描かれた『新ハムレット』は、器量の小さい、失敗の多い、それでいて真面目で、日本人が大いに共感できる作品になっているのだとか…!キャストには木村達成さん、島崎遥香さん、加藤諒さんら個性派俳優陣を迎えます。

『ハムレット』とは一味違う、悩める登場人物の物語『新ハムレット』

1941年、12月に太平洋戦争が開戦した年。太宰治にとって、初めての子供が生まれた年でもあります。そんな年に、太宰治が初めて書き下ろした長編小説は、シェイクスピアの『ハムレット』の翻案でした。 

『ハムレット』は、シェイクスピアの四大悲劇の一つ(他3作は『オセロ』『マクベス』『リア王』)。父の死の真相を知り、苦悩し復讐を誓うデンマークの若き王子・ハムレットの物語です。
王位の争奪や国家の存亡という壮大なスケール感と詩的なセリフの数々が世界中の人々を魅了し続けています。

しかし、日本人にとって、遠い国の遥か昔の物語であることは否めません。現実味が薄く、全てを理解することは容易ではない作品。太宰治が語り直した本作は、設定は同じながらも太宰治のレンズを通して描いたことにより、ハムレットや彼を取り巻く人物たちが拗らせる悩みや関係性が、日本人の感覚そのままで理解・共感しやすい内容へと翻案されています。

本作の戯曲化、そして演出を手がけるのは、五戸真理枝さん。『コーヒーと恋愛』『貴婦人の来訪』『毛皮のヴィーナス』の演出が評価され、第30回読売演劇大賞の最優秀演出家賞を受賞しました。

古典作品を現代的かつ親しみやすく立ち上げる手腕に定評のある五戸さん。本作にどのような工夫を加えるのか、期待が高まります。

五戸さんは本作の演出にあたり以下のようにコメントしています。

「どの登場人物もシェイクスピアの傑作でお馴染みの人物ですが、ひとりひとりの、人生に対する期待と不安が、 よりはっきりと描かれています。太宰治が筆を執ったこの翻案戯曲は、日本の現代演劇の隠れた至宝なのではないかと、強く惹かれています。 本家『ハムレット』のように、何度も再演され、語り継がれる物語として存在してほしいです」

『新ハムレット』は、『ハムレット』と同じ役名ながらも、泣き虫のハムレット、秘密を抱えるオフヰリヤ、敬語を絶やさない王クローヂヤスと、一味違う、悩める登場人物の物語です。

デンマークの首府、エルシノアでは、国王が突然崩御したため、国王の弟・クローヂヤスが即位し、先王の妻で王妃のガーツルードと結婚します。定められた運命と、叔父であり義父となったクローヂヤス、母ガーツルード、そして恋人オフヰリヤとの関係に思い悩む王子ハムレット。

そんな時、友人ホレーショーから先王の亡霊が現れるという噂を聞き、ハムレットはクローヂヤスが父親を殺したのではないかと疑い始めます…。

登場人物たちが「愛」について悩み苦しむ姿は、時代を超えて、現代の我々にも考えさせられるものがあります。

華と個性を併せ持つ実力派俳優陣が太宰治の描く『新ハムレット』に挑む!

(上段左から) 木村達成さん、島崎遥香さん、加藤諒さん、駒井健介さん
(下段左から) 池田成志さん、松下由樹さん、平田満さん

本作のハムレット役には、近年『ジャック・ザ・リッパー』『マチルダ』などのミュージカルから、『SLAPSTICKS』『血の婚礼』などのストレートプレイ、さらには大河ドラマ『青天を衝け』への出演など活躍の場を次々広げている木村達成さん。

「戯曲を読み進めていくうちにフラストレーションより共感が勝っていた」という木村さん。

「その気持ちわかるよハムレットと、背中をさすってやりたい。 冒頭の“からかわないでください、僕は地獄へ行くんです” というセリフがイヤな親近感をわかせます。とんでもない苦悩にぶち当たる、そんな初夏を迎えることになりそう」とコメントしました。

ハムレットを慕うオフヰリヤ役には、AKB48在籍中から“ぱるる” の愛称で親しまれ、2016年にAKB48を卒業した後は数々のドラマ『ハレ婚。』『私のシてくれないフェロモン彼氏』や映画『凪の島』『さかなのこ』で俳優として活躍している島崎遥香さん。

島崎さんは本作について「『ハムレット』はイメージとして復讐悲劇のイメージがありますが、『新ハムレット』はユーモアに溢れ、 ひとつの家庭のちょっとした喧嘩のようにさえ感じてしまう面白さがある」と話しました。

ハムレットの学友ホレーショー役には、確かな演技力と個性的すぎる存在感を併せ持つ加藤諒さん。

個性的すぎる存在感で『パタリロ!』シリーズでは主演を務め、その確かな実力で、臨機応変な対応力が必要とされる岩井秀人プロデュース『いきなり本読み! in 東京国際フォーラム』にも出演しています。

侍従長ポローニヤスの息子レヤチーズ役には、文学座の実力者で『リア王』や『オセロー』など数々のシェイクスピア作品にも出演してきた駒井健介さん。

駒井さんは、本作の登場人物は「みんな、ゴツゴツしていて、とても人間くさい。そこがなんだか愛おしいし、“自分もこういう所あるな”とたくさん共感出来る部分がある」とコメント。

そして侍従長ポローニヤス役には、池田成志さん。

大人計画、シス・カンパニー、NODA・MAPや劇団☆新感線の作品、また、Audience Award2022演劇作品部門に選ばれた音楽劇『歌妖曲~中川大志之丞変化~』への出演など活躍は多岐にわたります。
池田さんは本作の登場人物たちを「皮肉で、夢想家で、理屈っぽいのに、寂しがり、という太宰治の小説の中の人間がいます。そして誰もが饒舌なのに、肝の事はなかなか言わない。普通ではないです」と表現。

ハムレットの母でデンマーク王妃ガーツルード役には、連続ドラマや2時間ドラマなどで活躍する松下由樹さん。

現王にしてハムレットの叔父にあたるクローヂヤス役に、2度も読売演劇大賞優秀男優賞を受賞している平田満さん。「みんなが悩んでいるのも、小人物ぶりも、太宰治らしい。器量の小さい、失敗の多い、それでいて真面目な太宰のハムレットが、僕は嫌いではないです」と話しました。

『ハムレット』のイメージに収まらない一癖も二癖もある個性あふれる俳優陣が“新しい”『ハムレット』を立ち上げます。

PARCO 劇場開場 50 周年記念シリーズ『新ハムレット~太宰治、シェイクスピアを乗っとる!?~』は6月6日(火)〜6月25日(日)にPARCO劇場にて上演です。公式HPはこちら

ミワ

シェイクスピア作品というと、どうしても難しそうという先入観が付き纏いますが、どうやら今回は一風変わった物語。「泣き虫なハムレット」、とても気になります!