9月9日(土)に幕を開けるミュージカル『ラグタイム』。物語の舞台は、アメリカの移民の約9割がやってきたと言われる1900年代。より作品を深く楽しめるように、当時のアメリカの様子を見ていきましょう。(作品について詳しくはこちらの記事へ)
商工業の発展を支えた移民の存在
激動の時代のニューヨークを描いたミュージカル『ラグタイム』は、1998年にブロードウェイで開幕。同年のトニー賞で13部門にノミネート、最優秀脚本賞・最優秀オリジナル楽曲賞など4部門を受賞した、大ヒットブロードウェイミュージカルです。
ユダヤ人、黒人、白人のそれぞれのルーツを持つ3つの家族が固い絆で結ばれ、差別や偏見に満ちた世界を変えていこうとする物語となっています。
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1900年前後のアメリカでは何が起こっていたのでしょうか。1861年〜1865年にかけて起こった南北戦争で北部が勝利したことで、アメリカではついに奴隷制が廃止されることになりました。
そして、1869年に大陸横断鉄道が完成。アメリカ東部と西部を結ぶルートが確保されました。商工業が発達していき、1870年代に第2次産業革命を迎えます。1913年頃までの間に、アメリカ合衆国は世界でも先進的な工業国に成長しました。
この商工業の発展を支えたのが移民の存在でした。1840年から1920年の間に、ヨーロッパを中心とする他の大陸からアメリカへ移民の波が訪れました。その数は約3,700万人にも上ったのだそう。
ドイツやアイルランド、ロシア、イタリア、イングランド、オーストリア=ハンガリー帝国など様々な地域からやってきた移民たちは、安い工場労働力を提供し、まだ開発が進んでいなかった地域に多様な地域社会を形成しました。
貧窮や宗教あるいは政治的迫害によって母国から押し出された移民たちは、工場での労働や農工業に経済的機会を見出し、アメリカ合衆国でのより良い生活を求めました。自由と資産形成の願望が「アメリカン・ドリーム」という有名な言葉で表されました。 「アメリカ」などの名曲が彩るミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』も1950年代が舞台となっています。
西洋音楽とブラックミュージックの融合「ラグタイム」
タイトルにある「ラグタイム」は当時流行していた新しい音楽のこと。1890年頃、アメリカの中央に位置し多くの人が行き交うミズーリ州などの酒場で、西洋音楽として人気だった行進曲にブラックミュージックの独特のリズムが加わり、シンコペーションを強調したメロディーと、生じたズレから生まれるウキウキ感が魅力の音楽ジャンルです。
ズレを表す「ラグ」と、テンポを表す「タイム」が結合し、「ラグタイム」と呼ばれるようになったと言われています。1895年、アフリカ系アメリカ人のアーネスト・ホーガンが作曲した『La Pas Ma La』やベン・ハーニー『You’ve Been a Good Old Wagon But You Done Broke Down』がラグタイム普及に貢献しました。
1899年、ピアノ奏者のスコット・ジョプリンが作曲した『Maple Leaf Rag』が大ヒットを記録。スコット・ジョプリンは「ラグタイム王」と呼ばれ、1899年〜1917年にかけてラグタイム黄金期が訪れました。
アメリカの歴史と深い結びつきを持つ音楽「ラグタイム」と人種を超えた人々の交流を描いたミュージカル『ラグタイム』は、9月9日(土)〜9月30日(土)まで東京・日生劇場にて上演。10月には大阪・愛知公演が上演されます。公式HPはこちら。
それぞれの人種の違いが楽曲にも現れている本作。それぞれ違ったところから音楽面でも融合していく様子など、楽曲に注目して観劇してみるのも面白いですね!