1人の役者が5本のギターと共に人生を語るミュージカル『ライオン』。ベンジャミン・ショイヤーが自身の父との物語をミュージカル化したもので、ニューヨーク・ドラマ・デスク・アワード最優秀ソロパフォーマンス賞とロンドン・オフ・ウエストエンドの最優秀ニューミュージカル賞を受賞した作品です。本作の日本版での主演を務める成河さんが、SING&TALKイベントに登場しました。
ベンジャミン本人から届いたメールとは?
ミュージカル『ライオン』SING&TALKイベントが行われたのは、テイラー・ギターの専門店で、成河さんも本作のためにギターを購入した「Artist Lounge」。数々の貴重なギターに囲まれた秘密基地のような空間で、濃厚な時間が始まります。
まずは本作のオープニングナンバーである「おもちゃのバンジョー(Cookie-tin Banjo)」を披露。父との思い出を歌った楽曲で、柔らかく優しい歌声とギターの音色が会場を温かく包み込みます。緊張の1曲目を終えた成河さんが「皆さんは僕がこの曲を人前で弾いた初めてのお客様です」と言うと、観客から温かい拍手が。続いて主人公のベンが幼い頃に父が歌ってくれた楽曲「嵐の越え方(Weather the Storm)」を歌唱。“立ち向かう勇気胸に 嵐を超えてゆけ”。本作の温かい温度感が伝わる楽曲です。
そしてここからギター演奏指導・監修(日本版)のyas nakajimaさんと、ロンドンから翻訳・訳詞の宮野つくりさんが登場(宮野さんはリモート)。yas nakajimaさんは「僕は14歳からギターを弾いているんですけれど、僕ら(プロのギタリスト)からしても(『ライオン』の楽曲のギターは)難易度が高くて、最初にお話をいただいた時には、俳優さんがこれをやるんですか?というところから始まって。成河さんはクラシックギターをやられていたということなんですが、奏法が全く違うので、まず僕のスタジオに来てもらって、そこから半年経ちますね」と振り返ります。
さらに本作はシンガーソングライターのベンジャミン・ショイヤーさんが手がけた自伝的ミュージカルのために楽譜がなく、リバイバル公演でベン役を演じたマックス・アレクサンダー・テイラーさんもベンジャミンさんに2年間直に教わり、楽譜なしの状態で公演を行なったそう。そのため今回の上演にあたって、yas nakajimaさんが映像から楽譜を書き起こしてくれたのだそうです。
「本当に色々な人たちの強力な助けを得て、ここまで来ました」と成河さん。今回のイベントも、人前でギターを弾く機会を本番前に作りたい、という成河さんの強い希望があり実現したのだと言います。yas nakajimaさんは成河さんのもの凄い練習量に驚いたと言いますが、成河さんは「ギターの練習は100回やれば少しでも上手くなるのが嬉しくてたまらないんですよ。お芝居は何をやれば上手くなるというのがないので。だから普通に100回とか出来るし、(楽器の練習は)俳優さんはハマっちゃう人が多いんじゃないかな」とギターのやりがいを語りました。
そして本作では、宮野つくりさんと成河さんが翻訳・訳詞を行なっており、半年以上の時間をかけて、リモートで1曲ずつ訳詞を進めているそう。自身で作詞作曲も行う宮野さんは本作について「歌詞の巧みさがかっこいいです。詩的な言い回しをしたり、韻を踏んだりというのを、さらっとやっている。だからこそ訳詞が難しい」と語ります。成河さんは宮野さんについて「僕が感動しているのは、つくりさんは会議の仕方が上手なんですよ。絶対に否定をしない。僕とつくりさんで解釈が違った時も、お互いの良いものをどう持ち寄って、新しいものを作りましょうか、という作業ができていると思います」と素敵な関係性で訳詞が進んでいることを明かしました。
また成河さんはギター奏法について、手の大きさの問題と、1年間の限られた準備期間の中で完成度を高めるために、ご自身が今までやられていたクラシック技法を活用してサムピックを使っており、この方法で問題ないかをベンジャミン・ショイヤーさん本人に問い合わせたと言います。そこでベンジャミンさんから「この作品は、父親から教わったギターをいかに自分の弾き方で弾けるようになるかという作品です。だからこの作品を成河さんがやるのであれば、成河さんがいかに成河さんの弾き方で弾けるようになるかというテーマでやってください」というメールが届いたのだとか。「今でも困った時に読み返すくらい、本当に宝物のメールです」と噛み締めるように語られました。
クリエイターたちの熱い想いと丁寧な作業によって、緻密に創り上げられているミュージカル『ライオン』。2024年12月19日(木)から12月23日(月)まで、品川プリンスホテル クラブeXにて上演されます。公式HPはこちら
イベント開始前から成河さんが会場にいらっしゃり、来場した方々に話しかけるというなんともアットホームな空間!皆さん緊張しつつも贅沢な時間を楽しんでいました。