イギリスの一流演劇を日本のスクリーンで楽しめる「ナショナル・シアター・ライブ・ジャパン」シリーズ。2025年から2026年の上映作品である『インター・エイリア』『ウォレン夫人の職業』『ハムレット』そして『フィフス・ステップ』に加えて、新たに4作品が発表されました。

エリザベス2世を主役にした名作『オーディエンス』、アーサー・ミラーの傑作『みんな我が子』。そして『西の国のプレイボーイ』『危険な関係』など、今回のラインナップも観客の心を抉る逸品が揃っています。

『オーディエンス』

日本での上映:2026年5月1日(金)~
出演:ヘレン・ミレン、ポール・リッター、ヘイドン・グウィン 
演出:スティーブン・ダルドリー
脚本:ピーター・モーガン

Netflixの大ヒットシリーズ『ザ・クラウン』の原点となり、ローレンス・オリヴィエ賞にも輝いた伝説の作品が再びスクリーンへ。

1952年に25歳という若さでイギリス女王に即位し、その後2022年に逝去するまで70年にもわたる在位期間を務めたエリザベス2世。彼女が12人の歴代首相たちと重ねてきたプライベートな会談“オーディエンス(謁見)“が舞台になった作品です。

エリザベス2世はその在位中に、ウィンストン・チャーチル、マーガレット・サッチャー、デーヴィッド・キャメロンといった、イギリスの名だたる首相たちを相手に助言を与え続けました。

本作では、そんな女王の公私にまつわるさまざまな問題を丁寧に描き、ひとりの女性としてのエリザベス2世の姿を魅力的に表現しています。

エリザベス2世を演じるのは、イギリスの名優ヘレン・ミレンさん。彼女は2007年に日本でも公開された映画『クイーン』にて、同じくエリザベス2世の役を演じています。この映画は、1997年にダイアナ元皇太子妃が交通事故で急逝した直後のイギリス王室の内幕を描いた作品です。ダイアナとの不仲説が囁かれていたことから、辛い立場に追い込まれたエリザベス2世の葛藤を見事に演じ切ったミレンさんは、アカデミー賞をはじめとした多くの主演女優賞を受賞しました。

『みんな我が子』

日本の上映開始日:2026年6月19日(金)~
出演:ブライアン・クランストン、マリアンヌ・ジャン=バプティスト、パーパ・エッシードゥ、ヘイリー・スクワイアーズ、トム・グリン=カーニー
演出:イヴォ・ヴァン・ホーヴェ
脚本:アーサー・ミラー

アメリカン・ドリームを体現する、ある幸せな家族。戦時下、ジョーは軍需物資の製造で莫大な富を築くが、その成功には大きな代償が伴っていました。ビジネスパートナーが不良品の製造により罪に問われ、さらに、ジョーの長男は戦場で行方不明になっていたのです。

そんな一家のもとに、罪に問われたビジネスパートナーの娘・アンが訪ねてきたことから、物語の歯車が狂い始めます。

アーサー・ミラーは、アメリカ現代演劇の名手として知られる劇作家です。本作はミラーの代表的作品のひとつとして知られ、過去の日本公演では長塚京三さん、堤真一さんらがジョー・ケラー役を務めました。

優れた会話劇とジャーナリズムあふれる作風が魅力的なアーサー・ミラーの持ち味が、本作にも顕著に表れています。登場人物たちの何気ない会話に、彼らの負った傷や表面的に訪れた平穏、そして隠され続けた重大な真実が潜んでいるのです。

観客は謎解き感覚で上質な会話劇を楽しめる一方、あるひとつの真実が露見した瞬間に、それまで危うげなバランスで保たれ続けていた世界がひっくり返るような衝撃を受けることでしょう。

成功の裏に隠された犠牲と、愛の裏に隠された嘘。「人間とは何か?」という問いを激しく突きつけられる名作です。

『西の国のプレイボーイ』

日本の上映開始日:2026年8月21日(金)〜
出演:ニコラ・コフラン、エイナ・ハードウィック、シヴォーン・マクスウィーニー 
演出:カトリーナ・マクラフリン
脚本:ジョン・ミリントン・シング

アイルランド最大の劇作家と言われるジョン・ミリントン・シング。彼の作品の中でも特に名作として知られているのが、本作『西の国のプレイボーイ』です。

パブを営むペギーン・フラハティの日常は、ある若者の出現によって一変します。その男はパブに足を踏み入れるなり、「自分は父親を殺してきた」と告白したのです。殺人者であるはずの彼は忌み嫌われるどころか、村の英雄として祭り上げられ、人々の心を掴んでいって……。

アイルランドの西海岸を舞台に、どこからか流れ着いてきた謎の青年・クリスティと、アイルランドの若い女性ペギーンを中心とした、若さと自分探しのスリリングな物語です。

出演は、人気ドラマシリーズ『ブリジャートン家』のペネロペ役などで知られるニコラ・コフランさん。彼女をはじめとした個性的な実力派俳優たちが、この刺激的な物語を彩ります。

ちなみに、日本では『西国の伊達男』というタイトルで戯曲が刊行されています。ストーリーを予習したい方は、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

『危険な関係』

日本の上映開始日:2026年10月16日(金)〜
出演:レスリー・マンヴィル、エイダン・ターナー、モニカ・バルバロ
演出:マリアンヌ・エリオット
脚本:ピエール・ショデルロ・ド・ラクロ
脚色:クリストファー・ハンプトン

フランスの作家ピエール・ショデルロ・ド・ラクロによる恋愛心理小説を原作に、イギリスの劇作家クリストファー・ハンプトンが戯曲化した『危険な関係』。1985年にロイヤル・シェイクスピア・カンパニーが初演して以降、ウエストエンドとブロードウェイで上演され、大成功を収めた作品です。

18世紀末のパリ。
華麗なる社交界で、美しくて計算高いメルトゥイユ夫人と女遊びの天才ヴァルモン子爵は、他人を誘惑して破滅させる「恋愛ゲーム」を楽しんでいました。しかし、2人がお互いをライバル視し、意地の張り合いを始めたことで、ゲームは制御不能に。関わった人々を巻き込む地獄が始まって……。

あらすじを読んだだけでもぞくぞくするこの物語は、日本では2017年に玉木宏さん・鈴木京香さん主演で上演されました。

きらびやかな社交界に生きる人々の絶妙なバランスを、ぜひスクリーンで楽しんでみてください。

本記事でご紹介したナショナル・シアター・ライブ・ジャパン2026年公開作は、2026年5月1日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国の映画館で順次公開されます。作品情報・上映館情報については、公式ホームページ各映画館ホームページをご覧ください

糸崎 舞

ヘレン・ミレンさん主演の『オーディエンス』は、2014年にナショナル・シアター・ライブで公開された作品です。12年の時を経て、ふたたび日本で公開されることが嬉しいです。さらに『みんな我が子』については、2019年に異なるキャスト・演出版がナショナル・シアター・ライブで公開されているのも個人的な注目ポイントです。その頃と現在とは時代の様相が大きく変化しており、私たち観客としても物語から受ける印象が大きく変わるのではないでしょうか。