演劇では、登場人物が自分の内面を吐露したり、葛藤したりする場面がしばしば見られます。ひとりで語られるこれらの台詞は、「モノローグ」や「独白」と呼ばれています。
しかし、モノローグと独白は、厳密には少し違っていることをご存じでしょうか。本記事では、モノローグと独白について解説するとともに、演劇作品の中でも有名な独白についてご紹介します。
モノローグとは?独白との違いは何?
モノローグの語源は、単独の長い演説やひとりで話す劇の場面に由来するもので、ギリシャ語の「mono(ひとつ、単)」と「logos(話、談話)」が組み合わさった言葉です。一方、2人以上の人物による対話、会話は「ダイアローグ」と呼ばれます。
モノローグの中でも、聞き手がいない状態で、登場人物の内心を吐露する種類の台詞が「独白」に分類されます。
独白は「soliloquy(ソリロキー)」とも言われます。この言葉の語源は、ラテン語の「solus(ひとり)」と「loqui(話す)」が組み合わさったもの。このことからも、独白が完全な独り言、あるいは心の声が台詞として表れたものだとわかります。
また、「他の登場人物に聞こえないという設定の台詞」を傍白(ぼうはく)といいます。
傍白は、登場人物が観客にだけその心情や秘密を知らせるという役割を果たすものです。独白と比べると、より直接的に舞台上の出来事や人物の内面を観客に伝えるための手法として用いられています。
有名な独白は?シェイクスピアの美しいセリフを堪能しよう
演劇作品で特に有名な独白はどんなものでしょうか。ここからは、ウィリアム・シェイクスピア(1564-1616)の作品の中から最も有名な独白を紹介します。
『ハムレット』より「To be, or not to be, that is the question.」
デンマークの王子ハムレットは、父である前王の死の真相を知り、父を殺した犯人であるクローディアス(ハムレットの叔父)への復讐を誓います。狂気を装いながら真実を探ろうとするハムレット。その過程で恋人オフィーリアや周囲の人々を巻き込み、物語は悲劇へと突き進みます。
そんな『ハムレット』の中でも特に有名なのが、第3幕第1場のこちらの台詞です。
「このままでいいのか、いけないのか、それが問題だ。
どちらがりっぱな生き方か、このまま心のうちに暴虐な運命の矢弾をじっと耐えしのぶことか、それとも寄せくる怒涛の苦難に敢然(かんぜん)と立ちむかい、闘ってそれに終止符を打つことか。」(小田島雄志・訳『シェイクスピア全集Ⅲ』より)
原文では「To be, or not to be, that is the question.」で始まるこの有名な独白は、河合祥一郎さんによる「生きるべきか、死ぬべきか」という訳でも知られています。演劇に詳しくない人でも一度は聞いたことのあるフレーズではないでしょうか。
『ハムレット』は、シェイクスピア作品の中でも特に独白が多いと言われています。作中にはハムレットによる独白が7つもあり、最長のものは58行の長さにも及ぶのです。ハムレットを演じる俳優は、この独白をいかにものにし、観客を惹きつけるかが求められます。
『ロミオとジュリエット』より「O Romeo, Romeo, wherefore art thou Romeo?」
シェイクスピアが描く、世界一有名な恋愛劇『ロミオとジュリエット』。
モンタギュー家の息子・ロミオは、舞踏会でキャピュレット家の娘・ジュリエットと出会い、激しい恋に落ちます。しかし、モンタギュー家とキャピュレット家は互いに憎み合う敵同士でした。
許されない立場を嘆きながらも永遠の愛を誓うロミオとジュリエットでしたが、悲しみの別れがふたりを襲います。
本作では、第2幕第2場、ロミオへの恋心を語るジュリエットの独白が有名です。
「ああ、ロミオ、ロミオ、どうしてあなたはロミオなの?
お父さまをお父さまと思わず、名前を捨てて。それが無理なら、私を愛すると誓って。そうすれば私はもうキャピュレットではない。」(松岡和子・訳『ロミオとジュリエット シェイクスピア全集2』より)
実はこのセリフはロミオに立ち聞きされていますが、彼の存在に気付いていないジュリエットは、さらに独白を続けます。
「にくい敵は、あなたの名前だけ。モンタギューでなくてもあなたはあなた。
モンタギューってなに?手でも足でもない 腕でも顔でもない、人の体のどの部分でもない。ああ、何か別の名前にして!
名前に何があるの?バラと呼ばれる花を別の名で呼んでも、甘い香りに変わりはない。」(松岡和子・訳『ロミオとジュリエット シェイクスピア全集2』より)
ジュリエットは、まもなく14歳になろうとする少女です。まっすぐな恋心と、愛の前には肩書きや所属がいかに無意味であるかを表したこの名台詞は、現在も多くの人々に愛されています。
参考書籍:
『シェイクスピア全集Ⅲ』作:ウィリアム・シェイクスピア、訳:小田島雄志(白水社)
『ロミオとジュリエット シェイクスピア全集2』作:ウィリアム・シェイクスピア、訳:松岡和子(ちくま文庫)
台詞の種類を知ると、観劇はもっとおもしろくなります。 「これは独白かな、傍白かな」と考えながら観るだけで、同じ舞台が何倍も豊かに感じられるかもしれません。



















