1976年から連載され続けている細川智栄子 あんど芙〜みん原作の人気漫画『王家の紋章』。考古学を学ぶアメリカ人のキャロルが古代エジプトにタイムスリップし、ファラオ・メンフィスとの時を超えたラブロマンスを繰り広げる作品です。ミュージカル版は2016年に帝国劇場で初演を迎え、2021年で再々演となります。本作の魅力と2021年版の見どころをリポートします！（2021年8月・帝国劇場）

3,000年前の古代エジプトで「私のために争わないで！」

『王家の紋章』は“これぞ少女漫画ワールド！”と言いたくなるようなストーリー展開。考古学に夢中のアメリカ人キャロルが、エジプトでファラオの墓を発見し古代に想いを馳せていたところ、ファラオ・メンフィスの姉アイシスが愛する弟の墓を暴かれたことに怒り、キャロルを古代エジプトに連れ去ってしまいます。

見慣れない金髪に白い肌、知識があり未来を予言してしまうキャロルは古代エジプトの人々に“ナイル川が遣わした神の娘”として崇め立てられ、王であるメンフィスはキャロルに惹かれてしまいます。さらに彼女の存在をめぐって戦争まで起こってしまい…。まさに、「私のために争わないで！」の最上級版。歴史を動かしてしまうキャロルの存在は、少女漫画の主人公らしさたっぷりです。

神田沙也加＆新妻聖子のデュエットに酔いしれて

少女漫画的展開やキャラクターを実現するのは難しさもあると思いますが、そこで光ったのがキャロル役を務める神田沙也加さん。（木下晴香さんとのWキャスト）気品漂う華やかなオーラと透き通る歌声がまるで漫画からそのまま出てきたかのようです。シルヴヴェスター・リーヴァイ作曲の少々難解な楽曲たちを、キラッキラの笑顔で歌い上げます。その圧倒的な存在感によって、海宝直人さん演じるメンフィス（浦井健治さんとのWキャスト）がどんどん惹かれていく気持ちに共感させられます。

また、初演・再演ではキャロル役を務めた新妻聖子さんが今年は弟・メンフィスを愛するアイシスを演じます。弟のためなら3,000年の時をも超えてしまうアイシスの愛の深さと妖艶さが、新妻さんの美しく力強い歌声によって表現されます。メンフィスへの一途な愛を歌いあげる姿は圧巻。終始観客を惹きつけ、カーテンコールでは一際大きい拍手を浴びていました。

さらに、神田沙也加さんと新妻聖子さんのデュエットはうっとりとしてしまう美しさ。メンフィスへの愛に溢れた、劇場の空気が浄化されていくような歌声をぜひ堪能してください。