これまで宮﨑駿監督は、ジブリ作品についてハリウッドでの映画化や日本の劇団での舞台化のオファーはすべて断ってきました。その宮﨑監督がイギリスの新進劇団からのオファーに快諾、初舞台化された『Princess MONONOKE ~もののけ姫~』についてご紹介します。

初の舞台化が許されたイギリスの新進劇団ホール・ホグ・シアター

イギリスの若手劇団「Whole Hog Theatre(ホール・ホグ・シアター)」は、2011年に結成されたイングランド中部の州 ウオリックシャーのロイヤル・レミントン・スパに拠点をおく新鋭の劇団。再現が困難だろうと思える作品をパペットやダンスを用いて大胆に“翻案”し、斬新な舞台を意欲的に作り上げている劇団です。

この劇団の創設者でアートディレクターを務めるアレクサンドラ・ルターさんが『もののけ姫』をみて感銘を受け、舞台化を宮﨑監督に直接オファーしたことがきっかけとなり2013年に舞台化が実現しました。

宮﨑監督が5秒で舞台化を快諾した理由とは

ルターさんは、はじめて『もののけ姫』を見たときの美しい描写に感銘を受け、2回目に見たときに”タタリ神”のシーンを自分たちのパペットで表現したら面白いのではないかと舞台化を考えたそうです。そして、パペットを使ったテスト映像を宮﨑監督に直接送付。そのテスト映像があまりにも美しく、監督は5秒も経たずにOKするという結果になったのだとか。


劇団の実績や肩書きに関係なく、「イギリス人の目に『もののけ姫』はどのように映ったのかをそのまま表現してもらいたい」と新しい可能性にかけた宮﨑監督や鈴木プロデューサーはさすがですね。

『Princess MONONOKE ~もののけ姫~』は、ストーリーは原作をベースに置きながら、ホール・ホグ・シアターならではの表現や演出に工夫が見られます。例えば、衣裳はすべて古着を使用。ビニールやペットボトルなどの廃材を様々な自然や小道具に見立てることで、「森を守る」というメッセージにも繋がっています。そして、「タタリ神」は大量のビデオテープを活用することで、不気味さを演出。作品の世界観を再現するだけでなく、イギリス人として自分たちが捉えた『もののけ姫』の世界を、自分たちならではの演出で表現したい。そんな強い思いと作品へのリスペクトが、監督にも観客にも伝わったことでしょう。

Chizu

日本語字幕で上演された当時の映像を残念ながら現在は見ることはできませんが、『千と千尋の神隠し』に引き続き、今後ジブリ作品の舞台化が続くようであれば『Princess MONONOKE ~もののけ姫~』の再演も期待出来るかもしれませんね。