日生劇場で12月9日から幕を開けるミュージカル『ベートーヴェン』。ベートーヴェンの「運命」「悲愴」「エリーゼのために」「第九」などの楽曲を用い、ベートーヴェンの遺品の中から見つかった女性宛ての手紙「不滅の恋人」を基に、彼の秘められた愛を描いた作品です。ベートーヴェンを井上芳雄さん、彼が愛する女性アントニー・ブレンターノ(愛称トニ)を花總まりさんが演じます。初日前会見にはミヒャエル・クンツェさんとシルヴェスター・リーヴァイさんも登場し、本作に込めた想いが語られました。

“花ちゃん”“よしちゃん”と呼び合える仲に…?!

これまで『エリザベート』『モーツァルト!』で共演経験は長い井上さんと花總さんですが、恋人の役柄は初めて。井上さんは「『エリザベート』でももちろん相手役ではあるんですが死神なので、生々しいやり取りはなくて。濃ゆいラブストーリーをやらせてもらっているなというのはやっていて改めて思いますし、素晴らしい女優さんだというのはよく分かっているので、ご一緒するのは楽しいし光栄です」と共演の喜びをコメント。

さらに「花總さんご自身もやっている役によって普段が結構変わられる方みたいで、『エリザベート』をやっている時は近づき難い感じがプライベートでもあるんですけれど、今回は本当に親しみを込めて接していただいて、作品が終わるまでには“花ちゃん”と呼べるんじゃないかな」と言うと、花總さんは「遅いよ。本当は稽古場の期間で呼ぶんじゃなかった?(笑)」とツッコミ。井上さんは「花ちゃん」呼びを5回ほど試みたものの、「花總さん」に戻ってしまっているそうです。

花總さんも「やっと今回人間らしい、恋愛のやり取りができるので、今まで見たことない井上さんを独り占めできていて、やっていて楽しいです」と共演の喜びを語りましたが、これには井上さんが「全然距離縮まってないな…よっちゃんとか言ってくれるのかと(笑)」と残念そう。共演経験は長いものの、恋愛関係を演じるのは初めてと言うことで、照れくささもあるようですが、今後のお名前の呼び方の変化にも注目です。

ベートーヴェンが人生の中で遭う困難の瞬間と、そこで見つけた愛を描いた作品

そしてミュージカル『ベートーヴェン』を手がけたミヒャエル・クンツェさん(脚本/歌詞)とシルヴェスター・リーヴァイさん(音楽/編曲)のゴールデンコンビも来日。『エリザベート』『モーツァルト!』など日本でも高い人気を誇る作品を手がけ、2023年9月にはシアタークリエでミュージカルコンサート『M.クンツェ&S.リーヴァイの世界~3rd Season~』も開催されました。

『ベートーヴェン』はお二人が構想10年をかけて作り上げた最新作で、2023年1月に韓国で世界初演の幕を開けたばかり。日本が世界で2番目の上演国となります。

クンツェさんは作品のテーマについて、「ベートーヴェンの人生の長い道のりを語るのではなく、人生の中で遭う困難の瞬間、特に聴力を失うという音楽家としてこれ以上ない災難に直面する時に、人生の最大の愛・愛する相手を見つけたということを語っている」と言います。

また「非常にベートーヴェンの“個人”というものに焦点を当てた話になっていて、それがなぜかと言うと、彼は当時世界で最も成功を収めているピアニストであり、それは観客の拍手に依存していました。しかし聴力がなくなったことで拍手そのものが聞こえなくなったことから、ベートーヴェンそのもの、内面を作品として作り上げていかなければいけないと考えました。しかも信じるに足る内容のものとして舞台に乗せなければいけない。それに適した音をシルヴェスターが選び出してくれたことに感謝したいし、選び出した音がクンツェ&リーヴァイの音楽になったということが嬉しい」と語りました。

音楽についてリーヴァイさんは、「まずはベートーヴェンが作曲した全曲を聴いた上で、ミュージカルとして歌うことに適しているものを選び出しました。どういう部分をセレクトして、作品のどこに据えたかというのは、あくまで自分が持っているエモーション(感情)に基づいて決めさせていただきました。そこで選び出した1音1音というのは全てミヒャエルと打ち合わせて、ドラマ的に合うかどうかを確認しながら作品として仕上げていきました。今回選んだ曲には、1曲1曲に固有のストーリーがあってそれをお話ししてみたいですが、それをお話しすると2〜3週間はかかるので…(会場の笑いに「アリガトウゴザイマス」)」と膨大な作業の上で楽曲を創り上げていった製作過程を明かしました。

またリーヴァイさんから、「10年前にこの作品に取り掛かろうとした時、どういった点に焦点を当てるかを決めるのに時間がかかったのですが、私たちにとって大事なのは、お客様のためにミュージカルを創るということです。クラシック音楽を非常に身近に感じている方々には、モダンな音楽に近付いていただきたいと思ったし、クラシックが身近ではない方々にはクラシックに近付いていただけるような作品にしたいと思いました」と本作に込められた想いが語られました。

お二人のお話を聞いて井上さんは、「『モーツァルト!』はリーヴァイさんのオリジナルのメロディーなのに、『ベートヴェン』ではなぜベートーヴェンのメロディーを使おうと思ったのかは聞いてみたいな、不思議だなと思っていたんですけど、今のお話でクラシックとミュージカルの融合、どちらのファンにも楽しんでもらいたいということを聞いて、お二人は今なお進化されている、新しいチャレンジをされている中でこの作品が生まれるんだな」と納得の表情。

また「ベートーヴェンの不滅の精神の生涯を通して、彼の音楽はもちろんですし、彼の生き様や2人の愛から感じ取っていただけるものがあるのではないかと思います。あとやたら豪華なんですよ。『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』『チャーリーとチョコレート工場』にも負けないんじゃないのかなと思っていて、東宝今年大丈夫かな?と心配になるくらい美術費がかかっています(笑)。ぜひ新しいミュージカルを体験しにいらしていただけたら」と締めくくりました。

ミュージカル『ベートーヴェン』は12月9日(土)から29日(金)まで日生劇場にて上演。その後、福岡・愛知・兵庫公演が実施されます。チケットの詳細は公式HPをご確認ください。

Yurika

「初舞台が『エリザベート』なので、2人から生まれたと言っても過言ではない」とクンツェさんとリーヴァイさんの来日を喜んでいた井上芳雄さん。お二人のコメントを終始頷きながら聞いておられ、特に「観客の拍手に依存していたベートーヴェンが、聴力がなくなったことで拍手そのものが聞こえなくなったため、内面に向いていった」というお話を興味深そうに聞いていらっしゃいました。