ヨーロッパ企画の傑作戯曲を、演出:大歳倫弘さん、主演:鈴木大河さん(IMP.)によってIMM THEATERで上演される舞台『曲がれ!スプーン』。開幕を前に、公開ゲネプロと開幕前会見が行われました。
1シチュエーションで繰り広げられる“サイキックコメディ”

クリスマスイブ、町外れの喫茶店「カフェ・ド・念力」に集うエスパーたちを描いた舞台『曲がれ!スプーン』。マスターの早乙女(相島一之さん)の呼びかけの元、エスパーたちが続々と集まります。

透視能力を持つ筧(岡田義徳さん)、電子機器を操るエレキネシス能力を持つ井手(忍成修吾さん)、筧の後輩で人の心が読めるテレパシー能力者の椎名(時任勇気さん)、サイコキネシス能力者の河岡(鈴木大河さん)、そして新入りとしてやってきたテレポート能力を持つ小山(オラキオさん)。

彼らが普段は能力を隠して暮らしていますが、マスターの呼びかけによってひっそりと集まり、互いの能力を見せ合います。
マスターが買い物に出かけた隙に、店にやってきた神田(ひょうろくさん)。エスパーたちは仲間だと思い招き入れますが、エスパーではないことが判明。秘密を口外されないようエスパーたちが策を練っている隙に、超常現象番組「あすなろサイキック」のAD・桜井(松井愛莉さん)がやってきてしまって…。

店に集まってくるエスパーたちは確かに超能力の持ち主ですが、「電子機器は操れるけれど家電は苦手」「テレポートできるのは5秒間のうちに移動できる範囲のみ」など制約付き。世界を大きく変える力を持たないからこそ、“このくらいなら出来る人が世界のどこかにはいそう”というリアルさと、ヨーロッパ企画らしい演劇の温かみを醸し出します。
彼らはなぜ、堂々と能力を公表しないのか?そこには「最初は驚かれるけれど、段々とスルーされる」「見てはいけないものを見たような反応をされる」という、現代にも共通する人間の冷酷さを感じるような背景も。緻密なリアルさが織り込まれているからこそ、コメディ作品として絶妙なバランスを保っている作品です。

鈴木大河さん演じる河岡は、常連客の中では若手ながらもノリの良さで喫茶店の空気を作りながらも、感情的に能力を使ってしまうなど少し荒い一面も。しかし鈴木さんご自身の柔らかさ、真面目さがにじんでいるからか、不思議と愛嬌が垣間見えます。

エスパーたちの平和を乱す神田を演じるひょうろくさんは、登場から独特な出立ちで心を掴みます。「よりによってなんでこの男に秘密を知られてしまったのか」というエスパーたちの悲壮に心底共感できるような、信用に足らない男を可笑しく演じます。

相島一之さんは喫茶店の名前を「カフェ・ド・念力」にしてしまうほどのエスパー愛を節々から感じさせ、時に揉めそうになるエスパーたちを和やかに取り持ちます。
岡田義徳さん、忍成修吾さん、時任勇気さんの掛け合いから生まれる心地良さに、荒っぽい河岡、新入りながら強力な能力を持つ小山、能力がないのに自信たっぷりでいけすかない神田、何も知らずに彼らをかき乱してしまうADの桜井…と、キャラクターが加わることで、空気感・スピード感がどんどん変化。まさに王道コメディ演劇の魅力が詰まっています。

しかし脚本を手掛けたのは上田誠さんですから、それだけでは終わりません!伏線を聞き逃さぬよう、ぜひ何気ない一言一言にもご注目を。
コメディブームの一役を担える作品に
開幕前会見には、演出の大歳倫弘さん(ヨーロッパ企画)と、本作に出演する鈴木大河さん、岡田義徳さん、忍成修吾さん、時任勇気さん、オラキオさん、ひょうろくさん、松井愛莉さん、相島一之さんが登壇しました。

2000年に上田誠さんが作・演出を手がけ、ヨーロッパ企画で上演されて以降、再演・映画化と長く愛されてきた本作。今回演出を手がける大歳さんは「劇団の初期に出来た作品で、劇団自体がこれから頑張っていくぞという時期に、追い風になった作品だと聞いています」と語り、「初期の作品は特に劇団の空気感や人間関係を劇に投影することが多くて、この作品もそうなんですけれども、今回新たなキャストでやるにあたって、キャストの皆さんにフィットするように微調整をさせていただきました。また劇団の初期ゆえに無骨なところや荒々しいところ、あえて派手にしないかっこよさを突き詰めた作品でしたが、今の時代に合わせ、少しゴージャスに、華やかにすることを考えました」と演出のポイントを語ります。

ヨーロッパ企画の真髄とも言える本作の上演にあたり、「ここまでしっかりとした、純然なコメディ作品というのは最近なかなか多くない中、逆にそれが凄くメッセージになると思います。日本にまたコメディブームが来るといいなということを願いながら、その一役を担えればという思いで作りました。純粋に、コメディって良いなとお客さんに思ってもらえると嬉しい」と熱い思いが語られました。
そして鈴木大河さんは「初めての主演舞台ということで、とても緊張はしたんですけれども、稽古をやっていく段階から、本当に皆さんと和気藹々と楽しくやらせていただいて、本当に楽しい舞台になるだろうな、というのを確信していました。お客さんにも楽しい時間をお届けできたら」と意気込みます。

コメディ初挑戦にあたり、「この作品は凄く振りかぶって面白いことをしたり、ツッコミが綺麗にあったりする作品ではなく、喫茶店の中を覗いているかのような、会話の中での面白さ、楽屋トークのような面白さなので、言葉の一つ一つをお客さんに届けないといけないし、意味も伝わらないといけない。どこの言葉を立てるのが良いか、大事なワードがどこかというのはキャストの皆さんで話し合って、アドバイスし合ったりしました」と語られました。
岡田義徳さんからは「稽古場が凄く楽しくて、この楽しい空気をぜひ皆さんにも届けたいと思い、一生懸命稽古しました」と稽古場の和やかな様子が語られた一方で、「とにかく台本が巧妙である故に覚えづらい。会話劇なので、自分の番とかそういうことではなく、みんなで一緒にやらないとどうしても頭に入っていかない。そこは全員が苦労したことだと思います。大歳さんから言われた“サボらない”ということをテーマに、集中して約1時間50分を駆け抜けられるよう稽古をしてきた」と苦労が明かされました。
忍成修吾さんも「あぁ、とか、はぁ、とかの台詞が多いので」と台詞を覚える難しさが語られつつも、「でもそこがうまくいかないとやっぱり気持ち悪いので、結構集中力が必要です。1つのシチュエーションでやるコメディなので、やっているうちにあれ、今どこだっけ?と迷子になりやすくなるので、ずっと気を抜かずにやらなければ。本当に稽古ありきの作品」と語ります。
時任勇気さんは、「舞台経験が凄く少ない中で、稽古で皆さんに救われました」と振り返り、「僕も台詞を覚えるのが本当に大変で、稽古前半は頭を抱えて、皆さんに大丈夫?と凄く心配してもらいました(笑)。でも覚えてからはどんどん楽しくなってきて、今は体感30分くらいで終わるので!もう終わったんだ!と。(相島さん「よかったねぇぇ」)僕も自分で安心しています!」とコメント。

オラキオさんからは、「何と言ってもこの『曲がれ!スプーン』が鈴木大河くんの初主演作品ということは一生変わらないので、これはもう滑れない!外せない!なんとか全員で座長を盛り上げたい」と愛情深い言葉が。さらに「生っぽい芝居、アドリブやノリでやっていくことというのは普段芸人としてやっているんですけれど、ヨーロッパ企画の作品はそういう風に見えながらも、実は凄く中身が考えられている。ノリだけではできない難しさが凄くありました。得意なようで、得意じゃなかったことに挑戦させてもらっている感じがあります。でもお客さんからは全部がアドリブなんじゃないかと思われるくらい、本当はやりたい。頑張ります」と意気込みます。
ひょうろくさんは「クリスマスを感じていただけたら」という今の季節には不自然な意気込みで会見を和ませながら、「ゲネで盛大に言い間違えて、何を喋っているか分からなくなっちゃったんですけれど、その時の皆さんの頼れる感じがすごい。いつの間にか戻っているというのを実感できたので、頼もしい方達、すごいなぁと思いながら、本当に楽しくやらせていただいています」と裏話が。
松井愛莉さんは「皆さんが温まってきた中での登場ということもあり、女性が1人ということもあり、出てきた瞬間に空気を変えられたら良いなというのは意識してきました」と語り、「何も考えずに観て、楽しかったなぁ、明日も頑張ろうと思っていただけたら」とコメント。

相島一之さんは「ヨーロッパ企画さんの名作に参加させてもらえるのが光栄です。この作品は、登場人物、役者たちの熱量とグルーヴで見せていくお芝居です。今回のメンバーがとても良く、稽古場も本当に楽しくて、みんなの熱量があるので、初日を迎えて、どんどん面白くなっていくと思います」「世知辛い、暗いニュースばかりの今だからこそ、僕らは馬鹿馬鹿しいコメディを一生懸命やっている。それを劇場に観に来てくださったら嬉しいです」と思いを語りました。
最後に鈴木さんから「6月という、ジメジメしていて、外に出るのも億劫になるようなこの季節に、足を運んできていただけるお客様の心を晴れやかにできるようなコメディをお届けしたいと思います。20公演、キャスト・スタッフ一同、怪我なく、誰一人欠けることなく、走りきることができるよう頑張りたいと思います。応援よろしくお願いします」とメッセージが送られ、会見が締めくくられました。

舞台『曲がれ!スプーン』は2026年6月4日(木)から6月14日(日)までIMM THEATER、6月17日(水)から6月19日(金)まで京都劇場にて上演が行われます。また大千穐楽公演の配信が決定。公式HPはこちら
キャラクターそれぞれが個性的で、愛おしくなるコメディ作品。1度だけでも思いきり笑って楽しめる作品ですが、2度目は新たな発見がありそうです…!



















