舞台『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』が4月1日より日本青年館ホールにて上演。不思議なタイトルの今作は、絵本の世界に入ったような比喩で溢れた物語が原作です。今回は花總まりさん、谷原章介さん主演の舞台『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』の魅力について紹介します。

母親が98人に分裂、タトゥーのライオンが抜け出す!?

『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』は、カナダで2010年、日本で2013年に発売されたアンドリュー・カウフマンのファンタジー小説が原作。現代社会で起こりがちな問題が比喩で表現されており、伝えようとしていることを読み取るおもしろさと問題に向き合うことの大切さに気付かされる作品です。

ある日銀行で人質となった13名の人々。ステイシーもその中の1人でした。紫色の帽子を被った強盗が要求したのはお金ではなく、「今持っている物の中で最も思い入れのある物」を差し出すこと。それぞれが大切な物を渡すと強盗は、「私はあなたたちの魂の51%を手にした。それによりあなたたちの身に不思議な出来事が起こる。自ら魂の51%を回復しない限り、命を落とすことになるだろう」と告げて去って行きます。翌日から13人の被害者たちの周辺で不可解な出来事が起こり始めるのでした。

隣で寝ていた夫が雪だるまになって溶け始める、母親が98人に分裂、自分の体がキャンディになってしまう、足に彫ったタトゥーのライオンが抜け出し追いかけられるなど、現実ではありえないことばかり。そんな中で身長が少しずつ縮み始め、いずれ自分が消えてしまうことを悟ったステイシー。夫も妻ステイシーを救うため以前よりも妻に向き合うようになり、すれ違いの多かった夫婦に変化が現れます。

絵本の世界に入ったようなファンタジー感がありながら、文章で読むと少しホラー感もあるストーリー。翻訳者である田内志文さんのあとがきで比喩の意味に気付き、何度も読み返したくなる作品です。

花總まりと谷原章介が夫婦役!ドラマや舞台で活躍する俳優やダンサーが集結

舞台『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』の主演を務めるのは、『エリザベート』や『マリーアントワネット』など気品の溢れるヒロインを演じてきた花總まりさん。夫役に舞台やドラマだけでなく司会業を務めることも多い谷原章介さん。

銀行強盗役に『劇場版コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-』、ドラマ『インビジブル』に出演、舞台でも活躍する平埜生成さん。体から抜け出したライオンのタトゥーに追いかけられるドーン役に、舞台『僕の妻と結婚してください。』やドラマ『院内警察』に出演の入山法子さん。銀行に居合わせて自身も被害者となった刑事役に、劇団四季出身で退団後も舞台やドラマで活躍、2月上演の舞台『エウリディケ』にも出演する栗原英雄さん。他にも舞台で活躍する俳優やダンサーの方々が出演します。

お互いを気遣いながら再び向き合っていく夫婦を演じる花總さんと谷原さん。優しく柔らかい雰囲気を持った素敵なお2人が舞台上で並ぶ姿は必見です!

舞台化が難しいと言われた作品をG2が脚本・演出

舞台『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』の脚本と演出を手がけるのはG2さん。最近の代表的な作品には『月とシネマ』、ミュージカル『SPY×FAMILY』などがあります。G2さんの舞台演出家デビューは1987年、演劇ユニット『売名行為』の作品でした。1991年~2002年まで升毅さんと劇団MOTHERで活動後、1995年に演劇ユニットG2プロデュースを主催。2013年の解散後は、劇作家・演出家に専念し多くのミュージカル・演劇作品を手がけています。(関連記事:G2×板尾創路×瀧澤翼、初鼎談で3人が語った、それぞれの出会いと演劇の未来

入山さんは、G2さんの作品について「観劇後にポジティブな気持ちになって劇場を出ることが多い」と話しており、谷原さんも「少し不可思議な世界を舞台化するのに長けた方」とコメント。今作は実写が難しいと言われており、筆者も小説を読み終えた時に「どうやって舞台化するのだろう?」と感じました。縮んでいくステイシーや体から抜け出したライオンのタトゥーなどをG2さんがどのように描くのか、期待が膨らみます。

舞台『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』は2024年4月1日(月)~14日(日)まで東京の日本青年館ホールにて上演。その後20日(土)・21日(日)に大阪COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール、26日(金)~28日(日)に名古屋の御園座にて上演されます。一般発売は2月17日。公演の詳細については公式サイトをご覧ください。

かずちぃ

原作の小説を読み終えたあとで4色の舞台フライヤーに隠された遊び心に気付くと、少しだけ切なく温かい気持ちになります。原作の比喩が使われていた部分が舞台ではどのように表現されているのか、比べてみるのも楽しいかもしれません。