PARCO STAGEや彩の国さいたま芸術劇場で上演が発表されるなど、今年、日本の舞台界隈で注目の作品となっているシェイクスピアの四大悲劇の一つ『ハムレット』。一度は聞いたことがある演目かと思いますが、このタイミングで改めて『ハムレット』のあらすじと名台詞をおさらい!

シェイクスピアの四大悲劇の一つ、悲しき運命に翻弄される王家の人々

イギリスの作家、ウィリアム・シェイクスピアにより、1601年頃に執筆された、『リア王』『マクベス』『オセロ』と並ぶ、シェイクスピアの四大悲劇の一つです。

舞台は、2ヶ月前に王が急死したデンマーク王国。このことで先代の王の弟クローディアスが王に即位し、先代の王妃ガートルードはクローディアスと再婚します。王子ハムレットは、父である先代の王が亡くなったことに加え、悲しみも冷めない間に母が叔父を再婚したことに憂いていました。

そんな時、従臣から「亡き王の亡霊が夜な夜なエルシノアの城壁に現れる」という話を聞き、ハムレット自身も確かめに行きます。そこで父の亡霊に会ったハムレットは、父の死は叔父・クローディアスによる毒殺であったと告げられます。

復讐を誓ったハムレットは自らを狂気で装い、周りの人々はその変貌ぶりに驚きますが、侍従長・ポローニアスは娘であり、ハムレットの恋人であるオフィーリアへの実らぬ恋が原因と思い、オフィーリアに探りを入れさせます。しかし、ハムレットはそんなオフィーリアを無下に扱います。

やがて、ハムレットは叔父・クローディアスが父である王を暗殺した確かな証拠を掴みますが、王妃・ガートルードとの会話を盗み聞きしていた侍従長・ポローニアスを、クローディアスと誤って刺殺してしまいます。娘であるオフィーリアはハムレットからの無下な扱いや、父の死という度重なる悲しみにより正気を失い、川で溺死してしまいます。

ポローニアスの息子であったレアティーズは、父と妹の仇をとろうと怒りを募らせます。ハムレットの存在を恐れたクローディアスは、レアティーズと結託し、ハムレットを剣術試合に招きます。しかし、その試合は毒剣と毒入りの酒を使って殺そうと画策されていたものでした。

To be, or not to be, that is the question.-『ハムレット』は日々の生活に現れる困難を乗り越えるためのヒントを教えてくれる

『ハムレット』は劇中の名台詞が多いことでも知られています。特に有名なのは、「To be, or not to be, that is the question.」 日本語訳としては、河合祥一郎さんの「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」がポピュラーかと思います。

この台詞はハムレットを観たことがない方でも一度は聞いたことがあるという人も多いのではないでしょうか?実はこの台詞、場面は第三幕第一場、復讐に対するハムレット自身の長い長い独白の最初の一文なのです。また翻訳者によって様々なバリエーションがあり、なかなか奥が深いこの台詞。

より直訳に近いといわれている小田島雄志さん訳で聞いてみると…。「このままでいいのか、いけないのか、それが問題だ。」ぐっと身近な台詞になった気がします。

この一文以降も含めたハムレットの独白は以下の通り。
「このままでいいのか、いけないのか、それが問題だ。どちらが立派な生き方か、このまま心のうちに暴虐な運命の矢弾をじっと耐えしのぶことか、それとも寄せくる怒涛の苦難に敢然と立ちむかい、闘ってそれに終止符をうつことか。」(引用:小田島雄志訳, 白水Uブックス『ハムレット』)

この台詞、今を悩みながら生きる私たちも共感できる言葉にも聞こえ、一体どのように苦難を乗り越えるのか勇気づけられるような内容にも思います。

ハムレット自体は悲劇ではありますが、登場人物がみな迫りくる運命とどう対峙するのか。このように心の内を台詞で話している場面も多くありますので、ぜひ言葉にも注目して観劇すると、より身近に演目を感じられるかもしれません!

彩の国さいたま芸術劇場で行われていた、シェイクスピアの全37戯曲を完全上演する彩の国シェイクスピア・シリーズ。故・蜷川幸雄さんから吉田鋼太郎さんが芸術監督のバトンを引き継ぎ、2023年に完結しましたが、そのシリーズ2ndが始動。その一作目として『ハムレット』が5月7日(火)より上演されます。主人公は柿澤勇人さんが演じ、引き続き吉田鋼太郎さんが演出を務めます。公式HPはこちら

またPARCO STAGEでは、戯曲の原型と言われているQ1版を上演する『ハムレットQ1』が5月11日(土)東京・PARCO劇場を皮切りに、大阪・愛知・福岡と巡演します。主人公のハムレットを演じるのは、2021年に今回も演出を手掛ける森新太郎さんの作品で、紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞した、吉田羊さん。公式HPはこちら

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おむ

シェイクスピアの作品は台詞が難解な部分も多々あるので、鑑賞される際はあえてあらすじを把握した上で鑑賞すると、それぞれの登場人物たちの目線や感情を細かく感じることができるかもしれません。(筆者的には各公演で販売されるパンフレットを開場時間中に読むのも、作品により没入できるのでおすすめです!)