『アダムス・ファミリー』『ビッグ・フィッシュ』『ワイルド・パーティ』など、オン・オフブロードウェイで多くの話題作に携わったアンドリュー・リッパさん。そんなリッパさんが、歌詞・脚本を手がけたトム・グリーンウォルドさんと共に生み出したのが、たった2人の登場人物と25曲の美しいナンバーで彩る『ジョン&ジェン』です。

2023年に日本初演された本作が、2026年12月に東京・大阪の二都市で再演されます。

一新されたキャストで贈る、2人芝居のミュージカル

2023年の初演に引き続き、本作の演出・翻訳・訳詞・ムーブメントを担うのは、音楽座や劇団四季など数々の劇団をはじめ、ロンドンやNYなど国際的に活動する市川洋二郎さんです。

キャストは2023年から一新され、太田基裕さんと高野洸さんがジョン役を、彩風咲奈さんと平野綾さんがジェン役を、それぞれWキャストで演じます。

ジェンの弟、そして息子の「ジョン」役をWキャストで演じるのは、太田基裕さんと高野洸さんです。

太田さんは2009年にミュージカル『テニスの王子様』で舞台デビューして以来、2.5次元ミュージカルの人気シリーズに次々と出演しました。2026年には朗読劇『汝、星のごとく』やミュージカル『十二国記-月の影 影の海-』『ゴースト』といった幅広い作品で活躍しています。

一方、高野さんは2023年と2026年に上演された舞台『キングダム』シリーズにて、主人公である信を演じています。その他にも2016年に『ROCK MUSICAL BLEACH』で主演を務めるなど、さまざまな舞台・ミュージカルで存在感を発揮しました。

そして、同一人物でありながら姉と母という異なる顔を見せるジェン役には、彩風咲奈さんと平野綾さんが同じくWキャストとして名を連ねます。

彩風さんは、2007年に宝塚歌劇団93期生として首席で入団し、2021年には雪組トップスターに就任しました。2024年に退団後は、舞台を中心とした話題作に出演しています。2026年3月から上演されたミュージカル『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』では、主役のデロリス・ヴァン・カルティエ役に抜擢され、パワフルな役柄を演じました。

もうひとりのジェン役は、ミュージカル『レ・ミゼラブル』のエポニーヌ役や『モーツァルト!』のコンスタンツェ役など、歌唱力とともに高い演技力も求められる役を演じてきた平野綾さん。2026年4月に上演されたミュージカル『シルヴィア、生きる』では、アメリカの女性作家シルヴィア・プラス役を演じ、シルヴィアの短い人生を駆け抜けました。

2023年の日本初演では、ジョン役を森崎ウィンさんと田代万里生さん、そしてジェン役を新妻聖子さんと濱田めぐみさんが務めました。

今回一新された再演キャストの方々は、異なるバックグラウンドを持ちながらも、大作舞台でそれぞれに実力を磨いてきた4名です。姉と弟、そして母と息子が描き出す家族の絆や葛藤を、それぞれがどのように表現するのか、非常に楽しみです。

『ジョン&ジェン』の舞台は、1985年から現代にかけてのアメリカ。

1幕では、姉のジェンと弟のジョンが強い絆で結ばれながら、青春時代を共に過ごす場面が描かれます。そして、2幕では母親になったジェンと、その息子・ジョンの親子関係が展開されます。

<ストーリー>
[第一幕]
1985年、6歳の少女ジェンの家に、ジョンが生まれる。
弟を温かく歓迎するジェンは、暴力を振るう父親から守り抜くことを誓い、ふたりは支え合いながら成長する。
やがて10代になったふたりの関係は少しギクシャクし始めるが、ジェンが大学進学のため家を出る時になると、ジョンは姉を引き留めようとする。しかし、自由を望むジェンは、振り払うように出ていってしまう。
NYに出てきたジェンは、刺激的な環境で生活を始める。一方で、ジョンは父親の影響を受け始める。
やがて、アメリカ同時多発テロ事件が発生。それは、イラク戦争勃発の引き金となり、ふたりの人生をも大きく変えてしまうことになるのだった。

[第二幕]
時は流れ、2005年、ジェンは恋人ジェイソンとの間に息子を授かり、弟にちなんでジョンと名付ける。
弟の面影を重ねながら、手塩にかけて息子の世話をするジェンだが、当の本人は過保護な母親を少し疎ましく思うのだった。
ジェイソンとの別れや父親との確執など、様々な問題を抱えながらも母親として必死に頑張るジェン。
一方で、母の期待とは裏腹に叔父のジョンとはまるで違った人間へと成長していく少年ジョン。
やがてジョンが大学への進学のために家を出ると決めた時、母子それぞれが、自らが抱える人生の問題と直面することになる。

ふたりの「ジョン」とひとりの「ジェン」、その配役が意味するのは?

ここからは、筆者の個人的な注目ポイントを紹介したいと思います。

『ジョン&ジェン』の大きな見どころは、配役の構造にあると感じています。それは「弟」と「息子」という違う人物を同じ俳優が演じること。そして、同じ人物の「姉」と「母」という異なる面が描かれていることです。

劇中では、ジェン自身が弟と同じ名前を息子に名付けました。ジェンは一体どんな思いから、息子に弟と同じ名前を与えたのでしょうか。そこには、姉弟の運命を大きく変えてしまった「アメリカ同時多発テロ事件」と「イラク戦争勃発」といった歴史的大事件も関係しているのでしょう。

そしてその事実が、成長した息子と、愛ゆえに息子を支配しようとしてしまう母親との関係にどう影響を及ぼすのでしょうか。同じ俳優が異なる人物と異なる時代を演じ切ることで、このような人間ドラマにより深みが出るのでは、と考えました。これは演劇やミュージカルだからこそできる選択だと思います。

PARCO PRODUCE 2026ミュージカル『ジョン&ジェン』は、2026年12月4日(金)から12月20日(日)まで、東京・よみうり大手町ホールにて上演されます。その後、2026年12月24日(木)から12月27日(日)まで、大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて上演されます。公式HPはこちら

糸崎 舞

私は母でも姉でもあるので、ジェンの立場には否応なく感情移入してしまいそうです。 本作はピアノ、チェロ、ドラムとパーカッションによる生演奏。美しい楽曲によって家族の歴史がどう紡がれるのか、とても楽しみな作品です。