9月6日から紀伊國屋ホールにて開幕する新作ミュージカル『ニコラ・テスラ ~エジソンが恐れた孤高の天才~』。音楽・歌詞をローレンス・オリヴィエ賞にノミネートされた英国注目のクリエイターであるニック・ブッチャーさん、脚本をウエストエンドで活躍するロジャー・ディッパーさん、演出・翻訳を下平慶祐さんが手がけ、海宝直人さん、成河さん、濱田めぐみさん、昆 夏美さんと超実力派キャストが集結します。作品の開幕に先駆け、初の歌唱披露と会見が行われました。

価値観が均質化される資本主義社会に、狼煙をあげる人生讃歌

公開稽古にあたり、ホリプログループ会長の堀義貴さんは「原作は何もなく、プロデューサーの井川が発想をし、ニック・ブッチャーさん、ロジャー・ディッパーさんとロンドンでのワークショップで創り上げた全くのオリジナルミュージカルです。まさしく今ロンドンでは『DEATH NOTE: The Musical』が上演中で、『デスノート』を創った時は30年かかってでもドーバー海峡を渡ると言いましたけれども、ここからはホリプロが創ったオリジナルミュージカルで、イギリスのオリヴィエ賞か、アメリカのトニー賞で最優秀ミュージカル作品賞を獲ることを目標としたいと思っております。この作品は出演者の少ないミュージカルではありますけれども、これが海を渡るということも夢とは思っておりません。世界中で上演されるということを目標にしたい」と作品に強い期待を寄せました。

プロデューサーの井川さんは「ある日の夕食で、友人からニコラ・テスラとエジソンの話を聞いたところからアイデアが生まれ、それをまずニックさんに共有した後、ロジャーさんとも共有して創作の旅路がスタートしました」と振り返ります。

音楽を手がけるニック・ブッチャーさんは「音楽面では2つのことを実現したいと考えていました。まず、全てのミュージカルに言えることですが、印象に残る曲があり、観客がそのメロディーを口ずさみながら劇場を後にできること。そして2つ目は、ニコラ・テスラの先見性が高まり、そのアイデアがより電撃的になっていくにつれて、音楽もそれに合わせて変化していくようなスコアにすることです。電気の要素をより強く感じられるような音楽にしたいと考え、シンセサイザーやエレキギターなど電子的な音楽を取り入れました。観客が単にステージを眺めるだけでなく、電気のエネルギーを肌で感じられるような体験を作り出したかったのです」とコメント。

脚本を手がけるロジャー・ディッパーさんは「まずニコラ・テスラの史実として描かれている部分をピックアップしていき、史実以外の部分は想像力を働かせて書き込んでいきました。彼は普通の人より何歩も先に進んだ、先見の明がある人物です。それを“速いペース”で表現したいと考えました。このペースに素晴らしい俳優の皆さんが付いてきてくださっています。ただ彼の人生は後半に差し掛かるにつれて、ペースが落ちていき、自分の人生を振り返るような構成になっています。歴史的事実を基に物語を構築しておりますが、プロデューサーの井川さんや演出家の下平さんと話し合って、生身の人間としてのニコラを描きたいと思いました。彼の功績ではなく、生身の人物としての人生を描くことで、観にきた方が自分にもこういう一面があると共感できるようなストーリーにしていきました」と語りました。

そして演出・翻訳を手がけるのは下平慶祐さん。下平さんもロンドンのワークショップに参加し、長い期間をかけて作品の創作に携わっています。

下平さんは「この物語は、ニコラ・テスラという、エジソンのライバルと呼ばれている人物の物語です。たった4人のキャストで、ニコラ・テスラの生涯と、彼を取り巻く人々を描きます。ニコラ・テスラは3という数字を凄く大事にしていた人間なんですけれども、ロンドンのワークショップの中で、4人で3という数字をどう大事にするかというのはかなり議論をしました。その結果、僕たちはニコラ・テスラと3つの人物というのを大事に構成していて、3人はそれぞれ違う何かを象徴します。そちらはぜひ観ながら感じていただければと思います。
舞台全体のテーマとしては、1人の人生の話でありますので、色々な内容があると思うんですけれども、個人的に思うのは、資本主義社会というのが年々年大きくなっていく中で、色々な価値観が均質化、統一化されているように僕は感じております。それに対して狼煙を上げるような、人生讃歌のような作品になっていると思います」と語りました。

本作では海宝直人さんがニコラ・テスラ役(トラック1)、成河さんが父や教授など13役(トラック3)、濱田めぐみさんがキャサリンや母など5役(トラック2)、昆夏美さんがナースやダネなど12役(トラック4)を演じます。

今回披露されたのは、「あなたの物語」「特許を取得」「稲妻走る頭脳」の3曲。

「あなたの物語」は、大学を退学になり失意の底に落ちたニコラに対し、キャサリンが「あなたが自分の物語を書くのよ」と力強く背中を押すナンバーです。濱田めぐみさん演じるキャサリンがパワフルに、温かに、海宝直人さん演じるニコラを明るい方へ導きます。

続いて披露された「特許を取得」では、弁護士のペック(成河さん)とエンジニアのブラウン(昆夏美さん)が、発明を守り、お金に変える方法をニコラに指南していきます。コミカルかつリズミカルに、ニコラ・テスラの人生を押し上げていく楽しいナンバーです。

最後に披露された「稲妻走る頭脳」ではニコラの頭の中に新しいモーターの仕組みや幾何学的なビジョンが駆け巡るナンバー。溢れるアイデアへの高揚感と、夢を現実に変えようという希望が、海宝直人さんの伸びやかな歌声でエネルギッシュに表現されます。専門用語が何度も高速に繰り広げられるのも圧巻!複雑で高音なコーラスが重なり、4人の実力なくしては成り立たない超高難易度楽曲です。

歌唱披露を終え、海宝直人さんは「才能のある皆さんが集まって、良い意味で意見をぶつけ合いながら稽古ができています。これは新作を創る上でとても必要なこと。先日通した時にも大きな変更をしたいという話になり、この後そこを稽古するわけですけれども、本当に妥協なく良いものを作ろうと戦っています。下平さんの演出ビジョンが見事に実現できれば、誰も観たことのない新しいミュージカル作品が誕生するのではないかと感じて、みんなで頑張っています。期待していただいたらと思っております」とコメント。

成河さんは「生みの苦しみとよく言いますけれども、本当に苦しんでいる真っ最中です。一昨日の稽古で根本からメスを入れたいという話があって、クリエイターチーム3人が昨日打ち合わせをして、新しく台本を作ってきました。それをまだ見ていないのでドキドキしているんですけれども、とにかく3人の絆が凄く良いので僕たちも色々言うことができています。稽古、頑張ります」とまさに新作が生まれる最中の様子を明かします。

濱田めぐみさんは「全てがものすごく速いので、付いていくのが精一杯です。変わったことを体に取り入れたと思ったら、また変わっていく…それはまさにオリジナル作品ならではのことだと思います。でも客観的に見ていて、演出のしもちゃんのビジョンに確実に近づいていると感じます。最初は手が届かなくて、よく分からなくて、“どういうことですか?”と何度も聞いたんですけれども、彼が凄く細やかに、深く、たくさんの情報量を持ってしっかりブレずに立っていてくれるので、みんなその頂上に向かって上がっていっています。展開も速いし、稽古のスピードも速いし、物語の進みもめちゃくちゃ速いので、我々がそこをこぼさずに、いかに皆様に全部丁寧に、どれだけお伝えできるのかがキーだなと思いますし、出来上がった時には今までにないようなミュージカルになると思っています」と語ります。

昆夏美さんは「初日まで約2週間に迫ってきて、この夏はずっと『ニコラ・テスラ』にみんなで向き合ってきたなという感覚があります。作っては壊し、作っては壊しという刺激的な創作期間を我々は過ごしていまして、世の中の素晴らしい作品の数々もこうやって作っては壊しをずっと続けて出来上がっていると思うので、きっと初日には、皆さんに観てよかったと思ってもらえる作品になると思います。演出の下平さんが突き進んでくださるのが、我々キャスト陣としては本当にありがたくて、そのまま一緒に突き進んで、初日を迎えたいと思います」と意気込みます。

本作を現代の日本で上演するにあたり意識したことを伺ってみると、下平さんは「自分が作る作品は必ずユニバーサルな感情があるかどうかを凄く大事にしています。今回UKの2人が作った作品を日本で上演するわけではなく、僕もアメリカ生まれというのもありますし、どこの国でもわかる感情をみんなでしっかりと見つけた上で、全員が良いと思ったテーマがユニバーサルなものになると思っています。特に先ほどもお話ししたように、資本主義社会のことを気にしていて、人の価値というものは、他人が決めるものではなく、己が決めるものであるべきだと僕は思っているので、そういう意味では、まさに日本人にとってはかなり大きな感情を得られる作品になっているのではないかなと思っています」と語りました。

現代にリンクしたと感じた瞬間についてキャスト陣に伺うと、成河さんは「本編でも出てきますけれど、ニコラ・テスラの偉業というものは一言で言うのはなかなか難しくて、専門的な言葉でしか表現できないんだけれども、実際の生活にはかなり中枢にある。そういうところに光を当てるということだと思います。そういうことは僕らの生活にはいくらでもあるのに、どんどん見えづらくなるし、見なくなっていくし、見るのが面倒くさくなっていく。時間もない中で、パッと理解できるものに飛びつく病気に僕たちはかかっていると思うので、そういう時に分からないものも日常の中に染み込んでいるんだなと気づくきっかけに、僕は日々なっているので、お客様もそんな感情になっていただけたら」とコメント。

海宝さんは「この作品ではエモーションを表現したいということを毎回下平さんがおっしゃっていて、ニコラ・テスラの伝記、人生を説明する作品ではなくて、感情の旅路−誰もが生きていて感じる感覚、コミュニケーションの齟齬だったり、思いが伝わらないもどかしさだったり、決して戻れないポイントが人生の中であったり、というのは全ての人にあるんじゃないかと演じていて思います。そこに共感していただける、寄り添ってもらったなと感じてもらえる作品に仕上がっているんじゃないかと思います」と語ります。

昆さんは「テスラを抱きしめたくなる瞬間がいくつもあって、世の中では上手くいってそうに見えても実は上手くいっていない人や、上手く回っていかないことを抱えている人もいると思います。成功してそのまま行く人もいるし。その中で、テスラは凄くもがいていて、お芝居を見ていると根底に彼の信念を感じる瞬間がたくさんあります。今生きている皆さんの中でも、上手くいきたい、前に進みたいけれど、上手くいかないもどかしさの中で生きていらっしゃる方々がたくさんいらっしゃると思います。そういう方に響く、共感できる彼の生き様を届けられたら」と思いをコメント。

濱田さんは「別の角度から」と、「テスラについて私が知っていたのは、電気よりも周波数の研究でした。周波数って、簡単に言うと同類を呼ぶような、ネガティブでいるとネガティブが集まってくるし、ハッピーな気持ちでいるとハッピーが近づいてくるというようなことなんです。『ニコラ・テスラ』を観ることによって、ご覧になっている方々が、自分の周波数は変えられるんだという思いに辿り着けると良いなと思いました。ニコラ・テスラは良いアイデアを取得するために毎日夜中3時に起きて、夢うつつの中でインスピレーションを受け取っていたという事実もあるらしいんです。この作品を通して、元気がない考えに行きそうになった時、自分はそういう方向性じゃなく、プラスに、ポジティブな感覚の方が向いているんだと思えるようなきっかけを、見つけていただけると良いなと思います」と語りました。

撮影:蓮見徹

新作ミュージカル『ニコラ・テスラ ~エジソンが恐れた孤高の天才~』は2026年9月6日(日)から9月29日(火)まで紀伊國屋ホール、10月3日(土)から4日(日)まで梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて上演されます。公式HPはこちら

Yurika

謎に満ちていた注目作の片鱗が少しずつ見えてきた会見になったのではないかと思います。楽曲はとにかくスピーディでハーモニーも難解で、この4人がキャスティングされた理由がよく分かりました…!約100分の中で4人の歌唱力をたっぷり堪能できる、密度の濃い公演になりそうです!