丸山隆平さん主演の舞台『water』が、2026年9月から11月にかけて東京と京都で上演されます。藤田貴大さんの作・演出により、丸山さんの半自伝的な物語が描き出されます。

京都での記憶と虚構の世界を織り交ぜて描く

舞台『water』の企画は、いくつもの偶然が同時多発的に交差する中で動き始めました。ひとつは、丸山隆平さんが友人の勧めで演劇団体「マームとジプシー」の公演を観たのをきっかけに、主宰者である藤田貴大さんの作品に興味を持ったこと。

その後、京都で上演された舞台『cocoon』の観劇を通じて、丸山さんと藤田さんが出会ったこと。

時を同じくして、藤田さんも京都でリサーチを進めていたこと。さらに、丸山さん自身が京都出身であることも結びつき、作品の構想が一気に立ち上がっていったといいます。

本作の創作にあたり、2人は対話を重ねるだけでなく、実際に一緒に京都を訪問。当時の風景や記憶を辿りながら、丸山さんが幼少期から親しんできた場所を巡り、取材も実施。そこで語られたのは、特別な出来事ではなく、誰しも覚えのあるような幼い頃の記憶や地元で過ごした日常でした。

そんな丸山さんの記憶の断片をちりばめ、藤田さんならではの視点で捉えた京都という土地、そして虚構の世界を織り交ぜて描いた半自伝的作品が『water』です。

“水”の始まりと行く先、その流れを想像すると、遠い時間や土地、誰かの暮らしとのつながりをより身近に感じられます。本作を通じて見えない循環に思考を浸らせるうちに、観客一人ひとりが自身の記憶や体験を登場人物と重ね合わせていくことになるでしょう。

<あらすじ>
わたしは、どこかの、だれかと、つながっている。聴こえる音は、声は、やがて―――
わたし(丸山隆平)は、マネージャーを連れて、1日だけ地元に戻った。懐かしい友人、アルバイト時代の先輩と再会して、思い出したこと。改めて意識する、この土地の“水”の存在。水は、どこで生まれて、どこへ行くのだろう。夕暮れから真夜中、そして夜明けまでの時間。現実と虚構の淡いを行き来する。

作・演出は「マームとジプシー」主宰の藤田貴大

本作では、劇作家・演出家の藤田貴大(ふじたたかひろ)さんが作・演出を務めます。

2007年に旗揚げした演劇団体「マームとジプシー」では、全作品の脚本と演出を担当。日常の記憶や感情、人と人との関係性を繊細な言葉と身体表現に落とし込む作風が持ち味です。また、作品を象徴するシーンを幾度も繰り返す“リフレイン”の手法でも注目されています。

2011年に発表した3連作『かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと、しおふる世界。』で、26歳にして第56回岸田國士戯曲賞を受賞。以降、さまざまな分野の作家と積極的に共作すると同時に、演劇経験を問わず幅広い年代との創作にも意欲的に取り組んでいます。2013年には、今日マチ子さんが太平洋戦争末期の沖縄戦に動員された少女たちに着想を得て描いた漫画『cocoon』を舞台化。2015年、2022年と繰り返し上演され、2016年の第23回読売演劇大賞で優秀演出家賞に選ばれました。

近年の実績として、小説家・詩人の川上未映子さんの作品をもとにした2025年の舞台『ウィステリアと三人の女たち』や2024年の舞台『equal』などで作、上演台本、演出を手掛けています。さらに藤田さんの活動範囲は海を越え、2024年にイタリアの劇場やフェスティバルと連携した国際共同作品『Chair/IL POSTO』を製作。同作はイタリア4都市でツアー公演を実施し、続く2025年には韓国・釜山の国際舞台芸術フェスティバルで上演されました。

加えて演劇作品にとどまらず、児童向け作品からエッセイ、文学館や美術館とのコラボレーションに至るまで、多岐にわたって創作活動を展開しています。

今回、藤田さんは丸山さんと何度も会い、時間を共有して信頼関係を築いてきました。初めてタッグを組む2人がお互いの視点を掛け合わせたとき、どんな物語があふれ出てくるのか、興味を引かれてやみません。

独自の感性と実力を兼ね備えた俳優たちが集結

主人公の「わたし」を演じるのは、男性アイドルグループ「SUPER EIGHT」のメンバーである丸山隆平さんです。音楽活動に注力するのはもちろん、バラエティやラジオ、情報番組の司会などで活躍。さらに俳優としても存在感を高めており、近年は映画『金子差入店』や舞台『浪人街』『oasis』といった話題作への出演が続いています。孤独や葛藤など、人間の複雑な内面を温度感を持って表現する丸山さんの演技は、多くの人の心を掴んでいます。

本作では、藤田さんの創る世界に等身大の丸山さん自身が登場することで、現実と虚構の狭間が舞台上に現れます。その淡いで丸山さんが何を想い、語るのか。気付けば観客の意識も「わたし」と流れる水のようにつながっていくのではないでしょうか。

共演には、青柳いづみさん、伊藤万理華さん、植木祥平さん、植木祥平さん、内田健司さん、平井まさあきさん(男性ブランコ)、山本直寛さん、持田将史さん(s**t kingz)と、個性豊かな面々が名を連ねています。

青柳いづみさんは、大学の1年先輩だった藤田さん率いる「マームとジプシー」の旗揚げに参加。2013年に主演した『cocoon』をはじめ、劇団の作品に数多く出演しています。2008年からは、劇作家・小説家の岡田利規さんが主催する演劇カンパニー「チェルフィッチュ」の一員に。両劇団を中心に、国内外で活躍しています。また、漫画家やミュージシャンとの共創、ナレーション、文筆活動など、演劇以外での多才ぶりも光ります。

伊藤万理華さんは乃木坂46を卒業後、俳優として舞台や映像作品への出演を重ねながら、独自の感性を武器にクリエイターとしても活動しています。2021年公開の映画『サマーフィルムにのって』で初主演を果たすと、第13回TAMA映画賞の最優秀新進女優賞と日本映画批評家大賞の新人女優賞を獲得。直近の2026年6月には、劇団「ヨーロッパ企画」を主宰する上田誠さんの監督・脚本による映画『君は映画』でW主演を務めました。

植木祥平さんは、確かな演技力を強みとする実力派俳優。映画『箱の中の羊』やドラマ『アイシー〜瞬間記憶捜査・柊班〜』、Netflixシリーズ『イクサガミ』、NHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』など、これまで出演した作品のジャンルは実に多彩です。

内田健司さんは、蜷川幸雄さん率いる若手俳優集団「さいたまネクスト・シアター」の2期生として研鑽を積み、数々の舞台や映像作品で実力を発揮。2019年の舞台『CITY』や2022年『cocoon』など、藤田さんが手掛けた「マームとジプシー」の作品にも出演した経験があります。

舞台に映画、ドラマと活躍の場を広げている山本直寛さんもまた「マームとジプシー」の作品に何度も出演しており、藤田さんと縁があるひとり。近年の主な出演作に、2024年の映画『ミッシング』や2025年の彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd Vol.1『ハムレット』、舞台『シッダールタ』などが挙げられます。

また、人気お笑いコンビ「男性ブランコ」の平井まさあきさんがキャスティング。コントや漫才で独創的な世界観を創り出す才能を活かし、近年はドラマやCMなどの映像作品で目にする機会も増えています。

さらに、世界的ダンスパフォーマンスグループ「s**t kingz(シットキングス)」のリーダー兼振付師であるshojiさんが、俳優の持田将史として出演。国内外における著名アーティストの振付から演出まで手掛ける一方で、2020年のドラマ『半沢直樹』やNHK連続テレビ小説『エール』、2024年のドラマ『3000万』などに登場し、演技面での力を磨いています。

舞台『water』は、2026年9月27日(日)から10月25日(日)まで東京グローブ座、11月7日(土)から10日(火)まで京都劇場にて上演されます。チケットの詳細は公式HPをご確認ください。

もこ

京都出身の筆者としては、あらすじを読んだだけでもとても気になる作品。メインビジュアルの川と飛び石と思しき風景にも見覚えがあり、この共鳴するような感覚が本作のあちこちにちらばっているのかなと感じています。