皆さんは、大衆演劇を見たことがありますか?実は今、大衆演劇が演劇好きの心を刺激する娯楽として注目されているんです。初心者でも思わず見たくなってしまう大衆演劇について、特徴やおすすめの劇団を踏まえて紹介します。

昔ながらと真新しさの娯楽!大衆演劇の特徴

大衆演劇とは、一般大衆を観客として娯楽性のある舞台を上演する演劇のこと。舞台のジャンルはお芝居からレビュー、ミュージカルまでさまざまで、大衆の好みは移ろいやすいことから、内容の明確な基準は決まっていません。

大衆演劇のルーツは江戸時代まで遡り、歌舞伎や人形浄瑠璃などの伝統芸能はもともと大衆演劇から誕生したと言われています。江戸時代というと、古めかしい印象を抱くかもしれません。しかし最近では、大衆演劇は真新しさを感じさせる日本らしいエンターテイメントとして注目を集めています。

現在の大衆演劇は、お芝居とショーの2部または3部構成がほとんどです。お芝居は勧善懲悪な時代劇芝居が多くわかりやすいため、歴史の知識が浅くても楽しめます。男性の役者が女性役に扮する女形も見どころの一つで、その艶かしい美しさは女性顔負けです。

音楽や演出にも自由さがあり、ショーではトレンドのK-POPに乗せて華やかな群舞が披露されることも!「ケレン味」と呼ばれる派手で奇をてらう演出は、大衆演劇の醍醐味です。

公演は、劇場はもちろん温泉施設や健康センターでも催されています。旅役者たちは全国各地を転々とし、一座のほとんどが家族経営です。兄弟や親戚によって代々受け継がれ、劇団員のお子様が子役として出演することもあります。

ほぼ1年中上演される演目は、なんと日変わり!チケットの価格も相場が2,000円と、かなりお手頃です。きらびやかで何度見ても面白い大衆演劇は、年配の方だけではなく若い世代のファンにも愛されています。

オタクの現場欲が満たされる!役者との距離の近さ

大衆演劇は、「会いに行けるアイドルの元祖」とも言われています。その理由は、役者との距離の近さ!ステージと客席の距離は、通路側だと手が触れ合えそうなほどです。

歌謡ショーでは、観客がうちわやペンライトを振って役者を応援する場面もあります。千秋楽や役者の誕生日公演に、観客がクラッカーを鳴らして祝うこともあるそうです。

さらに大衆演劇には上演中にお気に入りの役者にプレゼントを渡せる「お花」、決め台詞に対して役者名や役名を呼ぶ「ハンチョウ」といった独特の推し活文化が存在します。舞台の写真撮影とSNS投稿もOKなので、観劇日には撮影、観劇しない日には観劇した人のSNS投稿をチェックして毎日でも楽しめるのです。

観劇が大好きな読者の皆様なら、大衆演劇がいかにオタクの現場欲を満たしてくれるものか、おわかりいただけるのではないでしょうか?

初心者にもおすすめの劇団&劇場を紹介

大衆演劇の劇団は全国各地に150ほどあり、初心者はまず劇団選びから迷うことでしょう。そこで数ある中からおすすめの劇団を3つ、参考までにご紹介します。

1つ目は、劇団朱雀(げきだんすじゃく)。座長は「 100年に1人の天才女形」として知られる早乙女太一さんです。早乙女さんは劇団朱雀の2代目で、2015年にお父様の葵陽之介さんの代で1度解散したものの、2019年に復活しました。

公演では、もちろん早乙女さんの艶やかな女形が披露される演目もあります。弟であり、劇団☆新感線『薔薇とサムライ2 ー海賊女王の帰還ー』やミュージカル『キングダム』などに出演していた早乙女友貴さんとの共演も見られるので、演劇ファンには馴染み深いかもしれません。

2つ目は、大衆演劇ファンの間でも人気の高いたつみ演劇BOX。「綺麗に品良く」をモットーとした実力派の劇団で、歌舞伎や浪曲の名演目をわかりやすく観客に語りかけながら披露してくれるため、初心者でもスッと世界観に入れます。

座長は、小泉たつみさんと小泉ダイヤさんの兄弟です。兄のたつみさんは溌溂としたエネルギーで観客を引き込み、弟のダイヤさんはしなやかな女形で魅了します。お二人が揃う場面は、劇団の中でも随一の美しさです。

3つ目は、2005年に旗揚げした宝海劇団(たかみげきだん)です。座長の宝海大空(たかみおおぞら)さんは幼い頃から子役として舞台に立ち、大衆演劇の若手スターによるユニットグループ「美3BOYS」のメンバーでもあります。

座長の美しい刀さばきや女形に、ハマってしまう人が多いのだとか。子役達も活躍していて、旅一座ならではのアットホームさを感じられる劇団です。

大衆演劇はどこで観られる?

大衆演劇は全国各地で見られますが、ビギナーの方にもおすすめしたい劇場が、2023年10月1日に東京・新宿にオープンした歌舞伎町劇場です。歌舞伎町劇場は、山手線圏内にある唯一の大衆劇場で、新宿区役所本庁の目の前にあります。

アクセスが良いことから、関東圏に住む人はもちろん地方や海外に住む方でも足を運びやすい劇場です。劇場内には大型のLEDビジョンが設置され、ここでしか味わえないケレン味のある演出が堪能できそう。

出演劇団は毎月変わるので、定期的に通って推しの劇団を見つけるのにもピッタリですよ。11月は、28日まで宝海劇団が公演しています。詳しくは劇場の公式サイトをご覧ください。

さきこ

役者に声掛けするハンチョウはタイミングが難しいそうで、通な方の舞台を盛り上げるハンチョウを生で聞いてみたいなと興味をそそられます。