1964年にウォルト・ディズニーによって製作された映画『メリー・ポピンズ』。「チム・チム・チェリー」や「お砂糖ひとさじで」など、一度は聴いたことのある名ナンバー揃いの傑作です。

メリー・ポピンズは風に乗って、ロンドンに住むバンクス一家の元へとやってきます。“厳しい乳母”を求めていた父親のバンクス氏の考えとは裏腹に、メリー・ポピンズと一緒に美しい絵の国で遊んだり、空中に浮いたままのお茶会を楽しんだりする子どもたち。しかし、バンクス氏はメリー・ポピンズのことをよく思っていないようで……。

映画『メリー・ポピンズ』の原作は、パメラ・L・トラヴァースによる同名の小説です。この小説が映画化されるまでに、原作者であるパメラとウォルト・ディズニーの間で長年にわたる交渉が行われていたことをご存じでしょうか。

この歴史的事実をベースとして2013年に公開されたのが、映画『ウォルト・ディズニーの約束』です。

映画化までの舞台裏に思いを馳せられる作品 

20年間にわたり『メリー・ポピンズ』の映画化を目指していたウォルト・ディズニー。

ついに、原作者であるパメラ・L・トラヴァースとともに映画製作に取りかかることとなります。しかし、彼女はディズニー側が提案する脚本やアイディアをことごとく否定し続けました。

ウォルトをはじめ、脚本家のドン・ダグラディや音楽を担当するシャーマン兄弟は、パメラの厳しい要求に困惑を隠せなくなります。しかし、彼女が頑なに映画化を拒む背景には、パメラ自身の悲しい過去が関係していました。

まずこの映画の興味深い点として挙げたいのが、当時の制作風景が詳しく描かれているところです。作中では、『メリー・ポピンズ』の楽曲が誕生した瞬間や、キャラクターたちがどう作られてきたのかが丁寧に描写されています。

そのため、人間ドラマとして映画を楽しみつつ、ドキュメンタリー作品を観ているような面白さも感じられるかもしれません。

エマ・トンプソンとトム・ハンクスの熱い共演

原作者パメラを演じたのは、エマ・トンプソンさん。
日本では映画『ハリー・ポッター』シリーズのトレローニー先生役としてよく知られています。過去にはゴールデングローブ賞やアカデミー賞で主演女優賞を受賞するなど、さまざまな作品で活躍する名優のひとりです。ほかのディズニー作品では実写版『美女と野獣』ポット夫人役を演じています。

ウォルト・ディズニー役を演じたのは映画『ハドソン川の奇跡』や『フォレスト・ガンプ/一期一会』などで世界的に知られる名優トム・ハンクスさんです。ハンクスさんはピクサーの『トイ・ストーリー』シリーズで主人公ウッディの吹き替えを長年にわたり担当しており、本作ではウォルト・ディズニーという重要かつ難しい役を見事に演じ切っていました。

作中では、頑なに映画化を否定し続けるパメラと、翻弄されつつも彼女の心を溶かそうとするウォルトの姿が印象的です。観客はパメラの態度の裏に隠された真実を知ることで、『メリー・ポピンズ』という物語が生まれた本当の理由を知ることになります。

決して派手な映画ではありませんが、作中を通して登場人物たちの心情を丁寧にすくい上げ、彼らの心の交流が静かに描かれています。特にトンプソンさん、ハンクスさんの名優同士の共演は、本作の魅力をさらに深めていると言えるでしょう。

メリー・ポピンズとは何者だったのか?そしてバンクス氏は?

境遇は違えど、「物語」を生み出してきた創作者であるパメラとウォルト。彼らはそれぞれに、どんな痛みを抱えながら作品を生み出し続けてきたのでしょうか。

本作『ウォルト・ディズニーの約束』の原題は『Saving Mr.Banks』です。“Mr.Banks”とは、一家の大黒柱であるバンクス氏を意味しています。なぜこのタイトルがつけられたのか。そして、パメラにとってメリー・ポピンズとは何者だったのか。その秘密を、ぜひ本編で確かめてみてはいかがでしょうか。

映画『ウォルト・ディズニーの約束』はDisney+、Prime Video等にて配信中です。Disney+ 視聴はこちら、Prime Video視聴はこちら

糸崎 舞

映画を観終わってから原題の意味を改めて考えてみると、非常に感動的でした。この作品は、かつて子どもだった大人たちのための映画でもあり、これから大人になっていく子どもたちへのメッセージも込められた映画だと思います。